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自粛期間中の今こそ、サッカーファンが見るべき11の映画

2020.05.01

 タイトルでQolyだと思った!? ごめんね、footballistaなんだ!

 さて、みなさまサッカーのない自粛期間をいかがお過ごしですか。東日本大震災でJリーグが中断されたことはありますが、全世界でサッカーが中止されたのは今世紀初ではないでしょうか。サッカーが恋しい! どんなにつまらなくてもいい、02-03シーズンのCL決勝ユベントス対ミランみたいな試合でもいいから見たい! と身もだえしていることでしょう。

 そんなサッカー不足の時代なので、私は「ストーミングの源流は古代ギリシャにあった――ファランクスの長槍戦術との類似性」という記事をここで書きません。そんな戦術記事のオファーは私には来ないのです。というわけで、サッカー不足はもうどうしようもないので、暇で仕方ない自粛期間に見るべき映画を紹介します。その数は11本、近年公開されたものを中心に配信・オンデマンドで見れるものばかりです。ちなみにサッカーと全然関係ない映画ばかりですが、やることなくてひたすらベストイレブンを発表している他メディアにならい、ポジションごとに紹介してせめてサッカーっぽさを出してみようと頑張りました。

GK:『エクストリーム・ジョブ』

 GK(ゴールキーパー)に求めるもの、それはエンターテインメントです。イチかバチかのエリア外への飛び出し、退院2日目のようなふらふらした足下の技術……GKのエンタメ性が高ければ高いほど、試合の熱狂は増します。そんなエンタメ性の高い爆笑映画は『エクストリーム・ジョブ』です。

 犯罪組織の張り込みのために警察が向かいのチキン屋を買収したらむちゃくちゃ流行ってしまうという韓国コメディ。ベタだがツボを押さえたギャグに視聴中は常に笑い続けること間違いなしで、自粛期間で緩んだ腹筋の訓練にもなります。笑いだけでなく最後にはスカッとするかっこいいシーンもあり、まさにエンタメの王道。韓国では『パラサイト』を超えて、歴代興行収入1位。今年1月公開ですが、もう配信で見れます。

<配信サイト>

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右SB:『ベイビー・ドライバー』

 SB(サイドバック)に必要な能力とは何かと言えば、まずは上下動。そう思いがちですが、昨今ではやはり前線にぴしゃっと縦パスを出したりだとか、偽サイドバックをやったりするオシャレさが必要だと思うのです。そんなオシャレな映画がこちらの『ベイビー・ドライバー』。

 銀行強盗のドライバーを務める通称「ベイビー」が主人公なのですが、彼の操る赤のスバル車でのスーパーカーアクションもさることながら、音楽と映像の融合がとてつもなくオシャレな仕上がりになっています。もともとエドガー・ライト監督は音楽のチョイスがめちゃくちゃセンスいいですが、今回はそれをフルで発揮。必見はオープニングの約6分間。

 ここ数年見たオープニングでぶっちぎりのかっこよさなので、ここだけでも見てください。

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CB:『わたしは、ダニエル・ブレイク』

 まずは相手を潰してほしい、それこそ我われがCB(センターバック)に望む第一の能力でしょう。そんなCBには『わたしは、ダニエル・ブレイク』がぴったりです。

  「サッチャー絶対殺すマン」として名高い監督のケン・ローチは、今作品でも世界を席巻する新自由主義を叩き潰すためにハードタックルを繰り出しています。日本でも散々叫ばれてきた自己責任論がいかに欺瞞(ぎまん)に満ちたものであるかは昨今明らかになっていますが、この映画を見て自己責任論で誰が一番得をしているのか考えてみてもいいのではないでしょうか。ちなみにケン・ローチ監督の映画には高確率でサッカーシーンがあるのですが、この映画でも登場。「プレミアリーグで好きな選手は?」と聞かれた中国人ブローカーの答えとは。爆笑必至のシーンをお見逃しなく。

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CB:『6アンダーグラウンド』

 屈強なだけでなく、スピードもなくてはCBは務まりません。そんなハイスピードを期待する人にぴったりの映画はこちらの『6アンダーグラウンド』。

 「脳みその代わりに火薬が詰まっている」「人の命がもやしより安い」ともっぱらの噂のマイケル・ベイ監督のハイスピードノンストップ人類虐殺火薬アクションです。説明なしのフルスピードで爆発とアクションが息継ぎなしで連発し(その間にめっちゃ人が死ぬ)、脳の処理が追い付かなくなったところで「ドゥーーーーーン」とか音が鳴ってスローモーションになるのですが、それはベイ監督の「今のうちに状況を整理してください」という粋な計らいなので従うといいです。ストーリーはほぼありませんので、火薬の歌を聞いてください。

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左SB:『勝手にふるえてろ』

 海外に行った日本人選手がいつの間にかSBをやらされてる――そんな光景をよく見るので左SBは邦画にします。『勝手にふるえてろ』はいかがでしょうか。

 主人公は妄想癖が強くて友達がいないちょっとイタいこじらせ系女子……という設定だけだと、あー、なんかよくある邦画のパターンかなあと思うのですが、これがまた一味違う面白さ。セリフのセンスとスピード感のある構成、そしてなによりもこじらせ女子の妄想を音速に近いスピードまで暴走させた松岡茉優が素晴らしい演技。全盛期のサミュエル・L・ジャクソン並みに「ファック」を連呼していて、このコメディ映画で新しい境地を開いたのではないでしょうか。どの境地だかは知りませんが。2時間濃厚松岡茉優。すべてのこじらせていた女子と男子に。

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セントラルMF:『6才のボクが、大人になるまで。』

 チームの中心となる中盤の中央はしっかりと自前で育てたい。そう思うのは自然なことかもしれません。では、育てましょう、というのがこちらの『6才のボクが、大人になるまで。』です。

 この映画は6歳だった主人公が18歳で家を出るまでの成長を、ガチで12年間かかけて撮っているという凄い映画です。着々と成長する主人公の姿も、次第に老けていく父親と母親の姿も見れるわけです。ただ、そのめちゃくちゃ手間がかかる撮影方法だけではなく、まるでそこに家族たちが本当に暮らしているかのように細部まで作り込まれた物語は絶品。165分と長いですが、この長い自粛期間にリチャード・リンクレイター監督渾身の一作を楽しんではどうでしょうか。

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セントラルMF:『レヴェナント: 蘇えりし者』

 中盤の中央には運動量豊富でタフな選手を置きたい。レオナルド・ディカプリオ演じる『レヴェナント』の主人公のタフさは凄いです。

 未開拓の冬の北米が舞台なのですが、クマと戦うわ、土に埋められるわ、酷寒の川に流されるわ、崖から落ちるわ、かっさばいた馬の腹の中で暖を取るわ、不幸のキックアンドラッシュで厄年ハットトリックです。このディカプリオに比べたらサンダーランドとかジェフユナイテッド千葉とかの方が、まだもうちょいマシな運命な気がします。そんな体を張った演技でディカプリオはアカデミー主演男優賞をゲット。北米の美しい大自然と彼のタフで運動量豊富な演技を堪能してください。

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右MF:『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

 サイドにはドリブラーを置きたい。ドリブラーは育ちが悪いほどいいドリブルをするという統計があるそうです(当社調べ)。そんな極限まで育ちが悪い母親が主人公なのが、この『フロリダ・プロジェクト』です。

 ディズニー・ワールドの近くのモーテルでその日暮らしをする母と娘。母は日銭を稼ぐために物を盗むわ、体を売るわでとにかく際立つ育ちの悪さです。こんなに中指立てまくる人間を、海外サッカーの観客席以外で初めて見ました。どうです、抜群にいいドリブルしそうじゃないですか。ただ、こんな状況でも、いや、こんな状況だからこそ母と娘の絆は強い。「低所得版『よつばと!』 in U.S.A.」の胸がしめつけられるようなラストシーンは必見です。

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左MF:『プリデスティネーション』

 「ピッチの左サイドに1人はSFっぽい選手を置く」というポジショナルプレーの原則に従い、左MFにはロバート・A・ハインライン原作のSF『プリデスティネーション』を配置します。

 イーサン・ホーク主演のタイムスリップものなのですが、始めはどこぞのチームのDFラインのように散らかっていたパズルのピースがタイムスリップをするごとにハマっていく快感。詳しいことを言うと台無しになるタイプの映画なのでこれ以上は言いませんが、原作のタイトル『輪廻の蛇』の意味が最後にはっきりわかるという美しい作りとなっています。鶏が先か、卵が先か。伏線と回収が大好きなボリスタ戦術ボーイたちにオススメの一作です。

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トップ下:『お嬢さん』

 やはりトップ下には変幻自在、超絶技巧の意外性のある選手を置きたいです。というわけで、韓国映画『お嬢さん』はいかがでしょうか。

 戦時中に日本の占領下にあった韓国での話ですが、ジャンルが何かと定義づけるのさえ難しい。官能小説を日本軍人に音読で披露する韓国のお嬢さんという設定だけでもトリッキーなのですが、そこにレズとエロスとサスペンス、そして韓国人俳優が喋るカタコト日本語という多重要素が飽和状態を起こして、極上のエンターテイメントに消化されているという、まさに理解不能のファンタジスタ仕事です。必見は風呂で主人公の女の子がお嬢さんの歯を研ぐ極エロシーン。あまりに官能的で湯に当たったかのようにフラフラになること間違いなしでしょう。

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CF:『ウォーリアー』

 最前線には四の五の言わずにゴールを叩き込む男の中の男が欲しい。そんなCF(センターフォワード)にはほぼ女っ気ゼロの肉体派映画『ウォーリアー』をオススメします。

 総合格闘技の大会に出場する兄弟、そしてその父親の姿を捉えた物語です。家族のために戦う兄、戦争帰りの無敵のワンパンマンである弟、そして2人に格闘技を教えたアル中の父。それぞれに戦う理由があり、そしてすれ違う理由もある。兄役のジョエル・エドガートンも弟役のトム・ハーディもしっかりと鍛え上げていて、リングの中での寡黙な演技も素晴らしい。日本では公開されなかったので知名度は低いのですが、シンプルに熱くカッコいい映画。つべこべ言わずにまずは見て、男も女も関係なく涙を流しましょう。

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 どうでしょう、何か気になる映画はあったでしょうか。もしあったなら、自粛期間で持て余す時間を鹿島って浪費するのではなく、11本のうち1本でもいいから強い気持ちでチャレンジしてほしいです。もし自粛期間がさらに伸びた場合には、「自粛期間中の今こそ、サッカーファンが読むべき11の官能小説」という記事も書く予定なので、ご期待ください。それでは、ボリスタキッズたちよ、引き籠もれ! Stay home!


Photo: Getty Images

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tkq

世界ロングボール学会(WLBS)日本支部正会員。Jリーグの始まりとともに自我が芽生え、カントナキックとファウラーの薬物吸引パフォーマンスに魅了されて海外サッカーも見るように。たぶん前世でものすごく悪いことをしたので(魔女を10人くらい教会に引き渡したとか)、応援しているチームがJ2に約10年間幽閉されています。一晩パブで飲み明かした酔っ払いが明け方にレシートの裏に書いた詩のような文章を生み出そうと日々努力中です。【note】https://note.mu/tkq

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