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分離は「建前」。RBライプツィヒと レッドブル帝国の領土拡大は続く

2019.05.09

レッドブル・グループのネットワークを活用し目覚ましい進歩を遂げるRBライプツィヒ。そんな彼らの前に、規則の壁が立ちはだかった。だが、表向きには規則に従いつつも、裏ではあの手この手を駆使した拡大戦略を進めている。

 今季のELでは歴史的なダービーが行われた。その名は「缶ダービー」(Dosen-Derby)。飲料メーカー「レッドブル」社が創立した2クラブ、レッドブル・ザルツブルクとRBライプツィヒがGSで同組になったのだ。前者は2005年にレッドブルがオーストリアの名門ザルツブルクを買収して生まれ、後者は2009年、同社がドイツ5部のクラブの経営権を手にして創り出された兄弟クラブ。昨年9月、ついに公式戦での初対決が実現した(壮絶な打ち合いの末にザルツブルクが2-3で勝利)。

 ただ皮肉なことに、その対決実現のために、彼らは1度袂を分かたなければならなかった。UEFAが主催する大会では、同一会社が所有するクラブは1つしか出られない、という規定があるからだ。

 ラングニックは両クラブのSDを兼任していたが、2015年にRBライプツィヒに専念することを発表。一方で、ザルツブルクの役員からレッドブルの人間が総退任。同社はザルツブルクのスポンサーの一つという立場に変更された。つまりRBライプツィヒの親会社はレッドブルのままだが、ザルツブルクでは広告主になっているのだ。

今季は監督を兼務しているが来季から再びSDに戻るラングニック(左)とミンツラフCEO

 また、レッドブルは保有する4クラブ(RBライプツィヒ、ザルツブルク、NYレッドブルズ、レッドブル・ブラジル)を統括するために、社内に「Head of Global Soccer」という役職を設けていた。過去にはディトマール・バイアースドルファー、ジェラール・ウリエが務め、2017年までRBライプツィヒのオリバー・ミンツラフCEOが兼任していた。だが、これもUEFAのルールで問題になる可能性があったため、2017年4月、ミンツラフはRBライプツィヒに専念することを発表。同年にはUEFAの指示により、ザルツブルクの胸ワッペンの牛が2頭から1頭に変更になった(欧州カップ戦のみ)。とにかく両クラブの独立性を高めるために、とことん分離が図られたのだ。

上のツイートは、現地5日の試合で6連覇を決めたリーグ戦でのザルツブルクの歓喜の様子。ユニフォームの牛は2頭いる。一方、下の写真が昨年実現した“缶ダービー”でのRBライプツィヒとザルツブルクのユニフォーム。右のザルツブルクの牡牛はご覧の通り1頭だ

「グループの長」復活の動きも

 しかし、あくまでこれは建前の話だ。“裏”では関係が続いている。両クラブで指導者と選手の育成で協力し合う契約が結ばれ、UEFAもそれを承認。法的には独立関係にあるが、依然として兄弟なのである。

 例えば、RBライプツィヒの大口スポンサーであるジュース会社「ラウヒ」の社長はザルツブルクの役員を務めている。そして何より移籍は相変わらず活発で、この冬、ハイダラとボルフ(加入は来季)がザルツブルクからRBライプツィヒへ。両者間の移籍はこれで27例目になった。

 レッドブルの4つのクラブで戦術が共有されており、選手の適応はスムーズだ。DFベルナルドはレッドブル・ブラジル→ザルツブルク→RBライプツィヒという道筋をたどり、昨夏、移籍金900万ポンド(12億6000万円)でブライトンへの移籍を果たした。

 ザビツァーの獲得時には、グループのメリットを生かした。2014年当時、このMFはラピド・ウィーンに所属し、国内間には高額の移籍金が設定されていたが、国外への移籍には200万ユーロ(2億5000万円)しかかからなかった。そこでまずRBライプツィヒが安価に獲得し、すぐさまザルツブルクへレンタルするという“トリック”を使った。RBライプツィヒへの移籍の確約を、ザルツブルク加入の条件にする代理人も出始めているという。

 現在、RBライプツィヒのスカウト責任者は、サウサンプトンやトッテナムでスカウトとして活躍したポール・ミッチェルだ(デレ・アリやトリッピアーを発掘)。空位になっている「Head of Global Soccer」に彼を抜擢し、再びグループ内の情報共有を強める計画がある。

 選手発掘の競争が熾烈になっており、情報がますます価値を持つ時代になった。 本音と建前を使い分け、レッドブル帝国の領土拡大は続きそうだ。

ピッチ上に目を向ければ、ブンデスでラングニックが「ノルマ」に掲げていた来季CL出場権を確保し、DFBポカールでは初の決勝進出。5月25日、主要タイトル初制覇を懸け盟主バイエルンに挑む

Photos: Bongarts/Getty Images, Getty Images

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RBライプツィヒビジネス移籍

Profile

木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。