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女子高生でもわかる10.28クラシコの戦術的見どころ_後編

2018.10.20

2018–19 WOWOWリーガール 鈴木美羽の先生、わかりません!


2018–19 WOWOWリーガールに選ばれた現役女子高生の鈴木美羽さん。現在、日々リーガについて勉強中で「チームの戦い方や特徴がわかったら、もっと試合を楽しめると思う」と意気込む彼女に、『footballista』執筆陣が奥深いリーガの魅力を“本気で”レクチャー。

今回は、現地10月28日(日)に開催されWOWOWで生中継される伝統の一戦クラシコの戦術的見どころを、戦術分析と言えばこの人、西部謙司先生に講義してもらった後編。

今回の講師
西部謙司先生
(サッカージャーナリスト)


前編はこちら

● ● ●


鈴木
「問題ですか? うーん……真ん中(MF)に4人いないので、メッシのためにまたみんなが頑張らないといけないってことですか?」


西部
「今までと同じようにやろうとするとそうなりますよね。でも、今年のバルセロナはちょっと違っていて、メッシのために周りが頑張る、ということをあまりしていません。SBが上って来たら今まで通り中には入ります。ただ、それは(左ウイングの)デンベレも同じです。今まではメッシにボールが集まっていたのが、今年はそうでもなくっています」


鈴木
「なんでそうしたんですか? デンベレ選手がすごいからですか?」


西部
「それもあると思います。ただ一番大きいのは、今までメッシ中心に、彼が活躍できるように周囲の選手がやっていた結果、1年ぐらいするとまた違う方法を考えないといけなくなるってことです」


鈴木
「みんなわかっているので、メッシにつこうってなっちゃうってことですか?」


西部
「それもありますし、余分な仕事をする周囲の選手が疲れちゃうっていうのもあります。こういう表現の仕方をすると怒られてしまうかもしれませんが、めんどくさくなっちゃったんだと思います(笑)」


鈴木
「急にそんな(笑)」


西部
「まぁ今の言い方は半分冗談としても、メッシが活躍すれば点を取ってくれるし勝てるけれど、いつまでも頼っていてはいけない、ということかもしれません。彼も年齢を重ねてきましたし“メッシにおまかせ”ではなくみんなでやろうよって」


鈴木
「その方がいいんですよね?」


西部
「その方がいい……と思いますか?」


鈴木
「チームですから!」


西部
「シーズン序盤はうまくいっていました。ただ、厳しい相手と当たった時、本当にそれで点が取れるの?という疑問は残ります。今まで、それが難しかったからメッシに頼っていたんじゃないの? 強みを出しやすいようにすることで勝ってきたけれど、レアル・マドリード相手にそれで大丈夫なの?って先生は思っています」


鈴木
「この形(フォーメーション)とかやり方っていうのは試合ごとに変えられるんですよね? だったら、クラシコの時だけ『メッシお願い!』に戻すかもしれないですね」


西部
「はい。ただ、それだと今までと同じですからね。なるべくメッシの負担を増やさず、かつ全員で戦って勝てれば一番いいですが、果たしてできるかどうか。それが問われていると思います」


鈴木
「課題なんですね」


西部
「そうです。そのためには、いかにメッシに守備をさせないかが大事になります。せっかくなので、メッシを疲れさせないためにバルセロナがどんなことをやっているかを説明したいと思います。ここの位置(ウイング)の選手というのは普通、相手のSBが上がって来たらそれに合わせて上がったり下がったりしないといけません。メッシの場合、やらせればできます。けど、それをやらせてもチームにとって得なことがありません。肝心の、シュートをしてほしい時に先ほどお話したゴール前のハーフスペースに守備に戻っているのでできません、というのはなるべく避けたいんです」

じゃあどうしているのかというと、守備時にメッシが立つ位置を普通とは変えているんです。普通のチームの場合、ウイングは一度MFと同じラインまで下がります。ただ、メッシの場合は下がらず、3人いるMFの選手だけではカバーし切れないサイドのエリアへのパスコースを遮断する場所に立ちます。それによって、このエリアにだけはボールを入れさせないようにするんです」

メッシが守るエリアの図。インサイドMFがつり出される中途半端なポジションへのパスコースを遮断。敵陣深いエリアのSBに横パスが出た場合は自らチェックに行き、ロングボールを蹴られた場合にはSBが対応する


鈴木
「すごい、絶対に(パスコースを)切っているんですね」


西部
「これが普通のチームの場合だと、中(へのパスコース)を切ります」


鈴木
「外には行ってもいいよってことなんですね」


西部
「外の方がゴールから遠いですからね。ただバルセロナがそうすると、メッシが戻らないといけなくなるんです。だけど、おそらく彼は戻りません(笑)」


鈴木
「(笑)」


西部
「それでフリーの選手ができてしまいます。あるいは、MFの選手たちがスライドして対応することになりますが、そうしたら逆サイドのデンベレが下がらないといけなくなります。バルセロナとしては、メッシとデンベレをあまり下げたくないんです。なのでこういう守り方にトライしています。ただ、レアル・マドリード相手の場合、外を切ると中に通されてしまいますよね」


鈴木
「わかった!(バルセロナは) いつもは自信があるから中にパスを出されてもいいよ、どうせ入らないでしょって守ってるけど、レアルは強いから、中にパスされると危ないってことですね」


西部
「それほど手ごわくない相手であれば、(中央にパスを通されても)ラキティッチがカットすればそれで終わりです。ただ、受け手がクロースやモドリッチだったら、ボールを奪えないかもしれません。それで大丈夫なのかというのが2つ目(のポイント)です。整理すると、1つ目はメッシに頼らなくて大丈夫なのか。2つ目は、メッシとデンベレの負担を減らすための守り方が機能するのか。この2点がクラシコでのバルセロナの見どころになります」


鈴木
「この、(サイドレーンの)前と後ろには通されてもいいのに真ん中はダメっていうのはすごくおもしろいなって思いました。フォーメーションとか戦術ってこんなに頭を使わないといけないんですね!」


西部
「ただ、選手はここまでしっかり理解していなくても大丈夫なんですよ」


鈴木
「そういうものなんですか?」


西部
「はい。相手が(ボールを)持った時に『だいたいこのあたりに立っておいて』で伝わります。加えて『どのエリアが一番使われたくないか意識しておいて』と言っておけば十分です」


鈴木
「ここ(のエリア)が重要なんですね、覚えておきます!」

バルサとレアルを◯◯にたとえると…


西部
「熱心に聞いてくれるので、ついいろいろと説明していたらバルセロナの話が長くなり過ぎました(笑)。レアル・マドリードの話はもうちょっと簡単なので簡潔にいきましょう」


鈴木
「お願いします!」


西部
「バルセロナは右のウイングにメッシがいますが、昨シーズンまでのレアル・マドリードには左ウイングにロナウドがいました。(バルセロナと)一緒です。メッシとは少しタイプが違いますが、ロナウドにゴール前に入ってもらって、シュートしてもらうというのがチームにとっていいこと、一番勝てる方法だったんですね。ロナウドを立てる、主演俳優だったわけです。今シーズン、そのロナウドがいなくなりました。するとどうなるか。今まで、周りの選手たちは極端に言えば、自分がシュートを撃ててもロナウドにパスを出していたんです。でも、その“縛り”がありませんのでのびのびやっていて、当初はそれでうまくいっていました」


鈴木
「自由になったんですね」


西部
「はい。でも、これもある意味バルセロナと同じ話で、ロナウド抜きでバルセロナと当たった時に、点が取れる選手がいるのか?というのがおそらく問われます」


鈴木
「絶対的な選手がいるのがいいのか、それともいない方がいいのか難しいですね。どちらがいいんですか?」


西部
「絶対的な選手がいた方がいいとは思います」


鈴木
「いるに越したことはない?」


西部
「ですね。でも頼り過ぎちゃうと、チームとしてうまくいかない部分も出てきてしまいます。バルセロナは、メッシにうまくプレーさせるためにチームとしていろいろ戦い方を決めていました。一方で、レアル・マドリードは基本的に放置です。ウイングの位置から中に入ったロナウドは、ボールを取られても戻りません。休んでいていいんです。後はほかのみんなでなんとかするんですけど、その“なんとかする”方法があまりしっかりとは決まっていないんですね。なんとなくみんなで頑張れ、という」


鈴木
「それでいいのかなぁ?」


西部
「一人ひとりがうまい選手たちなので、決まっていない方がかえってラクな部分はあるかもしれません。要はシュートを撃たれなければいいんでしょってところがわかっていればいいので」


鈴木
「その方が、気がラクですもんね」


西部
「そうですね。ただし、能力は必要です。今どこが危ないかや、何をしなければいけないかを一人ひとりが理解していないといけません。決まっていない分、大変でもあります。鈴木さんは現役高校生なので学校でたとえると、同じ名門高校だけど校則がしっかりしているのがバルセロナで自由な校風がレアル・マドリードと言えばピンとくるでしょうか」


鈴木
「あ、わかりました!」


西部
「まとめると、両チームとも今シーズンは『このやり方がいいんじゃないか』という新しい方法でスタートしています。そして、ここで試金石の一戦を迎えるわけです。この試合の結果次第で、今のスタイルを続けるのか、それとも変えた方がいいのか、というところが出てくるかもしれません。今回はそういうクラシコになります」


鈴木
「両チームに課題があるんですね。じゃあ、レアルにロナウド的存在になれる選手は誰ですか?」


西部
「ベイルじゃないでしょうか。あと、ベンゼマは特に気持ち良さそうにやっています。逆に、今話を聞いてどちらのチームのスタイルが好きだと思いましたか?」


鈴木
「私は自由な方がいいです! 決まっていると疲れちゃうので(笑)。でも、みんなが自由にやり過ぎてうまくいかなったことはないんですか?」


西部
「全員が前に行っちゃうことはあります。調子に乗り過ぎてしまって(苦笑)」


鈴木
「あら(笑)」


西部
「レアル・マドリードの3トップは、言わば『伊勢海老、フォアグラ、松坂牛』です」


鈴木
「えっ!? 全部美味しいってことですか?」


西部
「全部美味しいんですけど、脈絡がないんです。バルセロナの場合は『大トロ、甘えび、アワビ』と全部寿司でまとまりはあるという感じ。レアル・マドリードの方が豪華だけど、全部食べようとしたらお金がかかります。レアル・マドリードは基本的に、その時どきで一番強力な選手を集めてきて『強いだろ!』というチームです。それがうまく合わないと、うまくいかないこともあります」


鈴木
「最初に『似ている』ってお話で実際に同じようで、考え方は全然違うんですね。わかりやすかったです! あ、でもそれだと、メッシのゴール数は少なくなるかもしれないんですか?」


西部
「今の戦い方を続けていけば、その可能性はありますね」


鈴木
「そうなんですね」


西部
「それから、先ほどなんでラクなのにやめたのか疑問に思われていたバルセロナの2トップに関するお話を一つすると、ファンの受けも良くなかったんです」


鈴木
「えー、なんでですか?」


西部
「「バルセロナは、2トップを使ったことがほとんどないんです」


鈴木
「これまでの歴史からすると、こっちの3トップの方が安定してるって思っているんですね」


西部
「サッカーって3トップでやるもの、これがサッカーだと思っているんです」


鈴木
「そっか、だからそれ以外だと落ち着かなくてソワソワしちゃうんですね。そんな理由もあるんだ、おもしろいです」


西部
「レアル・マドリードは2トップでも3トップでも大した問題ではありません。基本的には勝てばいい。バルセロナは、バルセロナらしいサッカーで勝とうとしています。両者がどんなチームか、それぞれのイメージがつかめましたか?」


鈴木
「つかめました! でも先生、どっちが勝つのかわかりません。どっちが勝つと思いますか?」


西部
「ホームで戦うバルセロナが有利は有利だと思います」


鈴木
「それってやっぱり大事なんですか?」


西部
「アウェイで勝とうと思うなら、相手のかなり上をいっていないといけません。これだけ力が接近していると、ホームとアウェイの違いがけっこう出ると思います。例えば、(バルセロナの本拠)カンプノウで試合をする時にはパスサッカーですから、ピッチに水を撒いてビショビショにするんです」


鈴木
「えぇっ!? ヒドい」


西部
「いやいや、逆にいいんです。ボールが走りやすくなって、パスが回せるようになりますから」


鈴木
「そうなんですね、知りませんでした」


西部
「今日お話したことを踏まえて試合を見る時には、メッシに注目して、彼がどのあたりの位置でプレーしているか、彼にパスが入っているかどうかを気にして見てみるといいんじゃないでしょうか」


鈴木
「メッシが下がっていないか、注目して見たいと思います。先生、今日はありがとうございました!」


2018-19 WOWOWリーガール鈴木美羽の先生、わかりません!

■番組情報

現地より生中継!伝統の一戦クラシコ
バルセロナvsレアル・マドリード

10/28(日)深夜0:00[WOWOWライブ]

<イニエスタ緊急参戦>リーガダイジェスト!クラシコ拡大版

10/22(月)夜8:00 [WOWOWライブ]無料放送

鈴木美羽さんも出演!
生放送!バルサvsレアル直前スペシャル
~今夜決定 ベスト・オブ・クラシコ~

10/26(金)夜7:00[WOWOWライブ] 無料放送

※詳しくはWOWOWリーガ・エスパニョーラ番組オフィシャルサイトでご確認ください。

Photos: Takahiro Fujii

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WOWOWクラシコリーガエスパニョーラ鈴木美羽

Profile

久保 佑一郎

1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。