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サディオ・マネ、ゲーゲンプレスの体現者。セネガルの攻守を司る大黒柱

2018.06.15

「日本の敵」のキーマン:セネガル編

ついに開幕した4年に一度の祭典ワールドカップ。大会前最後のテストマッチとなった12日のパラグアイ戦に勝利、新体制での初白星を手に本大会に臨む日本代表は19日にコロンビア代表、24日にセネガル代表、28日にポーランド代表と対戦する。ここでは、いずれも強力なタレントを擁する難敵たちのキーマンにフォーカスする。

 相手が一瞬でも躊躇(ちゅうちょ)すれば、襲いかかるようなボール奪取を狙う猛獣のようなアタッカーは、ブンデスリーガの戦術革命に寄与したことでも知られるラルフ・ラングニックによって才能を見出された。当時ザルツブルクのスポーツディレクターを任されていた彼がフランスから獲得したセネガル出身の若手アタッカーは、ゲーゲンプレッシングの使い手として知られるロジャー・シュミットによって磨かれていく。

 攻守が絶え間なく入れ替わっていくトランジション・フットボールの中で、FWには「最初のDF」としての守備貢献が求められる。強度と精度を両立させたプレッシングはサディオ・マネが誇る最大の武器で、ゲーゲンプレッシングを仕掛けるチームにとって欠かせない存在として君臨する。

守備的MF並みのボール奪取能力

 ユルゲン・クロップ率いるリバプールではフィルミーノやサラーが献身的に高い位置からパスコースを限定した段階で、マネはポジションを下げながら中盤へのパスを狙う。76%という高いタックル成功率からもわかるように、ボール奪取のスキルは守備的MFに匹敵する。中盤に追い込んで縦パスを呼び込み、そこでボールを奪うように設計されたクロップのゲーゲンプレッシングに「独力でボール奪取できる」マネが加わったことで、リバプールは劇的に進化した。

 さらに特筆すべきは、相手に寄せられながらでもボールを運ぶことができる推進力である。ボディフェイクとスピードの変化によって、スペースへとボールを運ぶドリブルも得意技だ。競り合いの中でもボールコントロールの精度を保つことができる技術とフィジカルを最大限に生かした密集地の打開能力は、同僚のフィルミーノやサラーでも模倣できない。突破を仕掛けた際に相手にボールを奪われても、競り合いながらの密集した状況であればセカンドボールが中途半端な位置にこぼれやすい。そうなれば、当然自らボールを奪い返すことも可能なので二次攻撃に繋げやすく、周囲の選手もボールを即時奪回するための再プレッシングに移行できる。クリーンにボールを奪われにくいので、相手の速攻を防ぎやすいのである。

 推進力を武器にスペースへと飛び込む彼を止めようとすれば、どうしてもファウルが増えてしまう。身長は170cm台ではあるが、身体能力に優れていることからロングボールや縦パスの受け手になることも苦にしない。中央の低い位置でボールを受け、そこからセントラルMFのようにボール運びを担当することも可能な柔軟性によって、他のアタッカーに高い位置で自由な時間を与えている。

 伸び盛りのアタッカーはプレーの幅も広く、存在感を増すサラーへのアシストパスを狙うことも可能。自分の背後に走り込む選手へのヒールキックも、的確なタイミングで使いこなす。ロジャー・シュミット時代のザルツブルクでは[4-2-2-2]の左MFとしての経験もあるように、スピードを落とさずに周りを使うスルーパスも武器だ。好調を維持するサラーの加入により、裏方的な役割も増えてきているが、クロップの激しいフットボールに対応していく中での“勤続疲労”も隠せなかったことを考えれば、むしろプラスに働くかもしれない。負荷の分担が徐々に適正なバランスに近づいてくれば、爆発的なスピードと突進力を武器にする豪快なプレーはさらに輝きを増すに違いない。

日本の天敵

 セネガル代表では、リバプールで慣れ親しんだ左ウイングでの起用だけでなく、右ウイングでの起用も少なくない。[4-2-3-1]ではセカンドトップとして中央を任されることもあるが、セネガルにとっては実験的なフォーメーションに過ぎないため、左右どちらかのウイング起用が濃厚だろう。そうなれば、対面する日本代表のSBには的確な守備対応が求められる。特に速攻の局面で、「受け手」としても「運び手」としても機能する彼を警戒すれば、そちらのサイドからの攻撃はかなり制限されてくる。相手のサイドアタックを制限するカードとしても、マネは非常に優れているのだ。

 様々なポジションからパワーとスピードを兼ね備えたドリブルで相手を切り崩す攻撃の要であり、ボール奪取能力も兼ね備える速攻の申し子は日本の天敵になるかもしれない。

Sadio MANÉ
サディオ・マネ

1992.4.10(26歳)175cm/69kg FW SENEGAL

PLAYING CAREER
2011-12 Metz (FRA)
2012-14 Salzburg (AUT)
2014-16 Southampton (ENG)
2016-  Liverpool (ENG)


Photos: Getty Images

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サディオ・マネセネガル代表

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。