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前半3点リードの秘密はマネにあり!原点回帰のリバプールがシティ猛追を振り切った戦術的攻防に迫る【FAカップ準決勝レビュー】

2022.04.19

リバプールが宿敵マンチェスター・シティを2-3で下し、ファイナルへの切符をつかんだFAカップ準決勝。前半はリバプールが3点を奪い圧倒したものの、後半にはシティが2点を返して猛追するという、終わってみれば見応えのある一戦で繰り広げられた戦術的攻防を、戦術ブロガーのinamo氏に分析してもらった。

 プレミアリーグで熾烈な優勝争いを演じているマンチェスター・シティとリバプール。首位の座をかけて相まみえた第32節は、アンフィールドでの第7節に続き2-2のドローに終わったが、その天王山から1週間も経たないうちに再びライバル同士が激突することとなった。

 舞台はFAカップ準決勝。リーグ戦とは異なり90分間で同点なら延長戦あるいはPK戦に持ち込まれ、勝者だけが決勝の舞台に駒を進められる。今季互角の戦いを見せてきた両チームが因縁の決着をつけるべく、聖地ウェンブリーに乗り込んだ「第3ラウンド」では、ペップ・グアルディオラとユルゲン・クロップの両指揮官による戦術的攻防が繰り広げられた。

 まずは先発メンバーから。ホーム扱いのシティは、前回の直接対決から5選手を変更。バルセロナ監督時代にもコパ・デルレイではビクトル・バルデスをベンチに置き、ジョエル・ピントを積極起用していたグアルディオラ監督は、シティでも国内カップ戦を第2GKに出場機会を与えている場とみなしている。その方針は大一番でも変わらず、正守護神エデルソン・モラエスではなくザック・ステッフェンにゴールマウスを託した。

 さらに3日前に敵地でのCLラウンド8第2レグ、アトレティコ・マドリー戦で右SBのカイル・ウォーカーが負傷交代していたシティは、その穴をジョアン・カンセロが左から回って埋め、代わりにオレクサンドル・ジンチェンコが左SBを務めている。

 また過密日程を踏まえてか、左CBをアイメリク・ラポルテからナタン・アケに入れ替える。ロドリに代わってフェルナンジーニョが起用された中盤は形が変わり、従来の[4-3-3]でインサイドハーフを務めていたベルナルド・シルバが一列下がってフェルナンジーニョとタブルボランチを構成。そしてベンチ入りこそ果たしたものの、ウォーカーと同じくアトレティコ戦でケガを負っていたエース、ケビン・デ・ブルイネの代役としてジャック・グリーリッシュがトップ下を務める[4-2-1-3]で決戦に臨んでいる。

 一方のリバプールは、同じく3日前にCL4強入りを果たしながらもケガ人が出ていない。クロップはお馴染みの[4-3-3]に、シティとの前回対戦と比べ先発の顔ぶれに3人の変化を加えてきた。右CBをジョエル・マティプからイブラヒマ・コナテ、右インサイドハーフをジョーダン・ヘンダーソンからナビ・ケイタにチェンジ。そして、人員だけでなく配置にも手を加えていたのが最前線だ。3トップからディオゴ・ジョタが外れ、ルイス・ディアスが左ウイングに入ったことで、同ポジションを主戦場とするサディオ・マネが、ジョタに代わって真ん中を務めることになった。

「外切りプレス」への原点回帰

 なぜ左サイドを本職とするマネが中央に置かれたのか?その狙いは試合開始直後から存分に見られることになる。リバプールの代名詞である「外切りプレス」を呼び戻しつつ、持ち前のアグレッシブさで相手の弱点を突くための采配だった。……

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