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ひたすら追求した日常の修正、勝つための確率。鬼木達の「強い鹿島」、2025年の変革を振り返る

2025.12.25

8年の足踏みは長かった。だが、その時間は決して無駄ではなかった。川崎フロンターレを4度のJ1優勝に導き、現役時代の古巣に帰ってきた名将の下、2016年以来となる王座奪還を成し遂げた鹿島アントラーズ。その変革の舞台裏を、長年クラブを取材してきた番記者、田中滋氏に伝えてもらった。

 その瞬間、スタジアムに満ちていたのは歓喜だけではなかった。ある種の安堵と、長い旅を終えた者たちだけが知る静寂が、熱狂の底に横たわっていた。

 2025年12月、鹿島アントラーズは9年ぶりにJ1リーグの頂点に立った。ピッチ上で抱き合う植田直通や鈴木優磨、三竿健斗の涙は、彼らが背負ってきた十字架の重さを物語る。一方で、表彰式では軽やかな笑顔を見せた松村優太や荒木遼太郎の存在は、このクラブが手にした新しい未来を鮮やかに象徴していた。8年という歳月は、鹿島というフットボールクラブにとってはあまりに長い空白だった。だが、この優勝劇を振り返った時、その時間は決して無為な停滞ではなかったと思わされる。

 勝ち点76。2位・柏レイソルとの差はわずかに1。この極小の差を生み出したものこそが、今季の鹿島が挑み、そして成し遂げた変革の正体だった。

9年前の優勝を知る3人が鹿島の復権を牽引した

30cmのズレ、コンマ数秒の遅れ…ミスは容赦なく、だが理不尽さはなく

 「1から全部ができるわけじゃない。ちょっとずつ、ちょっとずつ足していければ」

  開幕当初、鈴木優磨が繰り返していたこの言葉の意味を、我々は正しく理解していただろうか。新指揮官・鬼木達が持ち込んだのは、劇薬のような改革ではなく、気の遠くなるような日常の修正だった。

 初日から導入された止める蹴るのトレーニング。鬼木監督は何度も何度も口を酸っぱくして同じことを要求する。

 「ゆっくりなら誰でもできる」「もっと強いパスをつけろ」

……

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田中 滋

サッカーライター。08年よりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』にて鹿島アントラーズを担当。有料WEBマガジン『GELマガ』も主催する。著書に『世界一に迫った日 鹿島アントラーズクラブW杯激闘録』など。

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