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J2最年少得点の16歳、神代慶人は飄々と堂々と。熊本から世界へ、道脇豊を追う高2FWの成長譚

2024.07.15

【特集】ポストユースの壁に挑むルーキーたち #4
神代慶人(ロアッソ熊本)

高卒Jリーガーが試合経験を積む場がない――「ポストユース問題」が深刻化している。J1で出番を得ることは容易ではなく、J2J3にレンタルしても必ずしもうまくいかない。近年、ルーキーイヤーからJ1で活躍しているのは松木玖生(FC東京)や荒木遼太郎(当時鹿島)が目立つくらいだ。有力選手の大学進学や欧州移籍が加速しているのも、この問題と無関係ではない。彼らはプロでどんな壁に直面し、それを乗り越えようとしているのか。ユース年代を卒業したプロ1年目のルーキーたちの挑戦に光を当ててみたい。

第4回は、小学4年生からロアッソ熊本に在籍し、高校1年生の昨年12月にプロ契約、今年3月にJ2最年少得点記録を更新した神代慶人。7月14日の第24節でも今季5ゴール目を挙げた16歳は、中学時代から先を見据え「トップチームで求められていることから逆算して」自分の強みを伸ばしてきた。

 高校2年生なので、正確に言えば「ユース年代を卒業」しているわけではない。だが、ここまで5得点はチームトップの数字。そのうち3つはPKによるもので、ストライカーとしての本領がいかほどのものか、まだ測りかねる部分はある。それでも、チーム最年少でありながら重要な場面でキッカーを任され、それらをしっかり決めていること、そしてピッチに立てば短い時間でも必ず1、2回の決定機を作っていること自体が、彼のポテンシャルの高さを証明していると言っていい。ジュニア時代からロアッソ熊本のアカデミーで育ち、今季、1学年上の道脇豊に続いて飛び級でプロ契約を果たした神代慶人である。

直近の千葉戦(○0-2)では途中出場から3分後の74分に追加点を決め、敵地で貴重な勝ち点3をチームにもたらした

ジュニアジュニアユースから続く「高校生Jリーガー」2人のライバル関係

 「ジュニア時代から点取り屋のイメージでしたが、大舞台ではそこまで活躍したイメージはないんです。ただ、負けん気の強さは顔つきやプレーにも出ていたと思います」。そう話すのは、熊本ユースの岡本賢明監督だ。

 一緒にサッカーをしてきた友だちに誘われてセレクションを受け、神代がロアッソ熊本ジュニアでプレーし始めたのは小学4年生の時。「幼稚園の頃からプロサッカー選手になりたいという思いがあった」神代にとってのスターは、当時のトップチームに在籍していたグスタボと安柄俊。「左右両足で強いシュートが打てるし、アクロバティックなプレーもできる」ところに惹かれた。

 彼らのプレースタイルを見ていた影響もあってか、岡本監督の前述の言葉の通り、2019年の第43回全日本U-12サッカー選手権大会・熊本県大会では7試合で18得点と大爆発。ソレッソ熊本との決勝では、延長戦の末、設立4年目の熊本ジュニアを初の全国大会出場に導くゴール(PK)を挙げている。

 全国大会では「緊張もあって、何もできなかった」と振り返るが、ジュニアユースに進んでからも順調に成長し、中学2年で出場した2021年の高円宮杯JFA第33回全日本U-15サッカー選手権大会や年代別代表への招集などを通して、ゲーム経験を重ねながら自信を深めてきた。

 「ジュニアユース時代も、どこからでもシュートを狙っていた印象ですね。点を取ることに特化して、いろんなパターンに取り組んだことが飛躍につながったんだと思います」と岡本監督は言う。

 加えて、トップでも一緒にプレーすることになる道脇との競争も、間違いなく刺激になっていたはずだ。

 「毎日の練習が終わった時に『今日、何点取った?』って言いながら(道脇)豊とよく話していたり、かなりライバル視していましたね」(岡本監督)

プレシーズンのトレーニングマッチで手前が神代、奥が1学年上で昨年のU-17W杯にも日本代表として出場したFW道脇(Photo: Takashi Iseri)

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Profile

井芹 貴志

1971年、熊本県生まれ。大学卒業後、地元タウン誌の編集に携わったのち、2005年よりフリーとなり、同年発足したロアッソ熊本(当時はロッソ熊本)の取材を開始。以降、継続的にチームを取材し、専門誌・紙およびwebメディアに寄稿。2017年、母校でもある熊本県立大津高校サッカー部の歴史や総監督を務める平岡和徳氏の指導哲学をまとめた『凡事徹底〜九州の小さな町の公立高校からJリーガーが生まれ続ける理由』(内外出版社)を出版。