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新世代監督ザンドロ・バーグナーの原点は「悪ガキ」にあり!ブンデスリーガを魅了するアウグスブルクの「推進型ポゼッション」

2025.09.19

かつてユリアン・ナーゲルスマンが史上最年少の28歳で指揮を託され、現在もビンセント・コンパニ(バイエルン)、オレ・ベルナー(RBライプツィヒ)ら30代の若手が采配合戦を繰り広げるブンデスリーガにまた1人、新世代監督が見参した。今夏からアウグスブルクを率いている元ドイツ代表FWザンドロ・バーグナーのことだ。選手時代とコーチ時代にナーゲルスマンの薫陶も受けた「ラップトップ監督」であり「悪ガキ監督」でもある37歳の原点から戦術までを、木崎伸也氏に紹介してもらった。

 ブンデスリーガに新たな名物監督が現れた。

 アウグスブルクの新監督に就任したザンドロ・バーグナー(37歳)は、強気でユーモアにあふれた発言とスタイリッシュなルックス、そして大胆な戦術によって早くも人気指揮官になっている。

 例えば、2025-26シーズン開幕前に『ビルト』紙のポッドキャストに登場すると、バーグナーは一般的な指導者のイメージからかけ離れた発言をした。

 「ミュンヘンの公営住宅で育ったから、ドイツ人だけでなく、アラブ系、トルコ系、バルカン系の友達がたくさんいた。だから俺は誰とでも仲良くできる。大企業のCEOとも話せるし、ストリートの悪ガキたちともうまくやれる。俺自身がもともと悪ガキだったし、今でも悪ガキだからだ」

 悪ガキ(Assi)。決してハッタリではない。開幕戦のフライブルク戦では判定にエキサイトして相手ベンチに向かって暴言を吐いてイエローカードを受け、第3節のザンクトパウリ戦ではサイドラインを割ったボールをピッチに投げ入れて遅延行為で警告を受けた。

 バーグナーらしいのは、その後の対応まで話題になることである。今季1枚目のイエローについては「やりすぎた」と素直に謝罪し、2枚目については「プレーを早めようとしたのに納得できない。2度とボールに触らない」と反論した。

 話題性だけなら、すでにドイツトップクラスである。これまでアウグスブルクは地味なチームとみなされていたが、バーグナーが新たな顔になり、「クラブ史上最も注目されるシーズン」とまで言われるようになった。あえて日本のプロ野球でたとえるなら、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督誕生時のような感じだ。

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 バーグナーに指導者としての実績はほぼない。

 現役時代にはバイエルン、ブレーメン、ヘルタ・ベルリン、ホッフェンハイムなどでプレーしてドイツ代表にも選ばれたが、監督経験はウンターハーヒンクU-19とウンターハーヒンクのみ。2年目にウンターハーヒンクをドイツ4部から3部へ昇格させたものの、ドイツ4部はセミプロにすぎない。

 その後、U-20ドイツ代表のコーチを経て、ユリアン・ナーゲルスマン監督の下でドイツ代表のアシスタントコーチを務め、2025年5月末には現職への抜擢が発表された。

 それでも現役時代にトーマス・シャーフ、ナーゲルスマン、ユップ・ハインケス、ニコ・コバチ、ヨギ・レーブらの下でプレーし、右腕としてもナーゲルスマンと働いた経歴は伊達ではなかった。

 もともとの豪快さに理論が加わったら鬼に金棒である。

 「悪ガキ監督」の指導スタイルは、「ラップトップ監督」たちのように合理的でモダンだ。

……

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アウグスブルクザンドロ・バーグナーブンデスリーガ2部ユリアン・ナーゲルスマン戦術

Profile

木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。

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