SPECIAL

シルバ引退と久保依存を乗り越える偽9番。オヤルサバルが主役のソシエダ23-24序盤戦を総括する

2023.11.11

ダビド・シルバの電撃引退から始まったソシエダの2023-24シーズン。取りこぼしが目立つリーガでは第12節時点で欧州カップ出場圏外の7位にとどまる一方、10年ぶり出場のCLでは2試合を残しながらグループステージ突破を決めている。この結果に不動のトップ下として卓越したテクニックとインテリジェンスで“ラ・レアル”のポゼッションを安定させていた“エル・マゴ”(スペイン語で魔法使い)と別れた影響はどれほど表れているのか。二足の草鞋を履き続ける今後を占うためにも、序盤戦をスペイン在住の木村浩嗣氏と振り返っていこう。

“ベストメンバーで行くところまで行く”采配の是非

 リーガ第12節を終わって7位というのは単独で見れば物足りない。ただCLでは初戦でインテルと引き分けた後、アウェイで2連勝。グループステージ第4節ではホームにベンフィカを迎え、3-1の勝利。20季ぶりとなる決勝トーナメント進出を決めた。今季の目標は、CL決勝トーナメント進出+欧州カップ出場権の獲得であるから、リーガは「まあまあ順調」、CLは「期待以上」と言っていい。

 リーガの数字を詳しくみると、4位だった昨季に比べて、勝ち点奪取のペース(1試合平均)は1.86ポイントから1.58に下がった。得点ペースは今季が1.66点と昨季の1.34を上回っているが、失点が昨季の0.92から今季1.25とそれ以上に増えている。

 特に終盤の失点が目立っている。先週末のバルセロナ戦では92分に失点し勝ち点1を失った。後半ロスタイムでの失点は、その前のラジョ・バジェカーノ戦に続き2試合連続で、第2節セルタ戦、第4節グラナダ戦、第6節ヘタフェ戦も合わせると今季5度目。70分以降の失点で実にここまで10ポイントを失っている(CLでもインテル戦で終盤に失点し勝ち点2を失った)。引き分けに持ち込めない、勝ち切れないチームになっている。

リーガ第12節バルセロナ戦のハイライト動画

 これは第一に疲労蓄積によるものだろう。

 ソシエダクラスの中堅クラブではレギュラーと比べて控えとの実力差が大きい。二足の草鞋を履く今季、イマノル・アルグアシル監督はリーガでもCLでもほぼ11人を固定して戦っている(カッコ内はリーガとCLの全試合時間に占める出場時間の割合)。GKアレックス・レミロ(リーガ100%:CL100%)、右SBアマリ・トラオレ(85%:90%)、右CBイゴール・スベルディア(92%:100%)、左CBロビン・ル・ノルマン(72%:83%)、左SBアイエン・ムニョス(78%:77%)、セントラルMFマルティン・スビメンディ(90%:100%)、右インサイドMFブライス・メンデス(92%:95%)、左インサイドMFミケル・メリーノ(66%:100%)、右FW久保建英(78%:78%)、CFミケル・オヤルサバル(74%:93%)、左FWアンデル・バレネチェア(65%:75%)だ。

 DFにはアーセナルから加入したキーラン・ティアニー、レアル・マドリーから加入したアルバロ・オドリオソラ、U-21スペイン代表で台頭したジョン・パチェコがいるが、ほとんど声がかからない。そもそも層が薄いMFにも頼りになる控えベニャト・トゥリエンテスとディナモ・モスクワから鳴り物入りで加入したアルセン・ザハリャンがいるが、こちらも出番がない。そして最も層が厚いFWには実績十分のウマル・サディク、フランクフルトから加入したアンドレ・シルバ、カルロス・フェルナンデス、期待の若手モハメド・アリ・チョーがいるのだが、ローテーションされるほどには信頼されていない。チョーはバルセロナ戦で失点の原因となるパスミスを犯した。得意のドリブルも仕掛けず仕舞いで、昨季よりも悪くなっている印象。最もレギュラーに近いのはサディクだが、惜しいシュートはあってもまだノーゴールで、昨季序盤の5試合で3ゴールを挙げた勢いは失われた。

昨夏にクラブ史上最高額の総額2500万ユーロと推定される移籍金でレアル・ソシエダに加わったものの、リーガ第5節ヘタフェ戦での十字靭帯断裂で22-23シーズンを棒に振ったサディク。前所属のアルメリアで年間19ゴール12アシストを記録した実力を今季こそ証明できるか

 もっとも、大ケガを完治させたサディクとカルロス・フェルナンデスについては我慢して使っていけば調子を上げていくはずなのだが、アルグアシル監督にその余裕がない。“ベストメンバーで行くところまで行く”という采配で、ローテーションするとしたらCL決勝トーナメント進出決定後、第3のコンペティションのコパ・デルレイで、ということだろう。

“代えはいない”シルバ引退で失点、ファウル数が増加

 もう1つ、後半に失点が多い理由としては構造的な問題がある。昨季の前半戦は中盤ダイヤモンド型の[4-4-2]、後半戦は[4-3-3]で戦い、今季は[4-3-3]で統一されている。

 この中で最もボールを支配しパスを繋いで逃げ切るサッカーができていたのは、ダビド・シルバがトップ下に入りMFが4人(シルバ、ブライス、メリーノ、スビメンディ)いた[4-4-2]時代だ。オヤルサバルの復帰とブライスの不調で[4-3-3]にしたことでMFが3人(シルバ、メリーノ、スビメンディ)に減りボール支配力は落ちた。……

残り:3,593文字/全文:5,778文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

ダビド・シルバミケル・オヤルサバルリーガエスパニョーラレアル・ソシエダ久保建英

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

関連記事

RANKING

関連記事