SPECIAL

サッカーを煎じ詰めた濃い目の味を満喫していただければ――エスナイデルのレノファ山口監督就任によせて

2023.06.11

SNS上でJリーグファンを大いに沸かせた、レノファ山口のフアン・エスナイデル監督招へい。ジェフ千葉指揮官時代にそのサッカーを“堪能”した西部謙司氏に、度肝を抜かれた「ハイプレス・ハイライン」の味わい方を綴ってもらった。

「いまさらですか?」の空目

 Twitterを開くと、タイムラインのトップに出てきたのは見覚えのある笑顔と「レノファ山口の監督に就任」の文言。「本当に決まったんだ……」と思った。感想はそれだけ。ところが、そのまま他のつぶやきを見ようとして、スクロールする手が思わず止まった。

 <いまさらですか?>

 画面の上にある文字をそう空目したのだ。慌てて見直したら、<いまどうしてる?>と書いてあるだけだった。一瞬、Twitter社が監督就任のつぶやきにツッコミを入れたのかと勘違いして激しく動揺したのだが、そんなわけはない。冷静に受け流していたつもりだったが、実は動揺していたのだろうか。

 フアン・エスナイデルがJリーグのどこかの監督に就任するのではないか? そういう噂はすでに流れていた。なので、それほど驚くようなニュースではなかった。Twitter社がそのニュースに反応するはずもない。なのに、一瞬そう見えたのは何か自分でもわからない感情があったからなのか。むしろそのことに動揺した。動揺した自分に動揺してしまった。

 レノファ山口のファンの方々には、これから激しく動揺する日々が待っていることだろう。「おめでとう!」と言いたいような、「ご愁傷様……」と言いたいような、あるいは半笑いの顔で「せいぜい頑張って」と言ってしまいそうな心境である。

 クセになる監督ではあるかもしれない。別に美味くもないのになぜか定期的に食べたくなるラーメンのような、いや確実にまずいのに無性に食べたくなる類の中毒性を持っていた。

指笛プレスに表れる高い理想と荒い設計

 エスナイデル監督といえば、「ハイプレス・ハイライン」が代名詞だ。

 異常に高いDFラインの設定は攻守をできるだけ敵陣で完結させるため。ハイライン戦術が開始された時からの目的であり、リヌス・ミケルスからアリーゴ・サッキ、ルイ・ファン・ハール、ペップ・グアルディオラに至るまでみなそう思ってやってきた。

 ただ、エスナイデルの場合はかなり極端だ。……

残り:2,275文字/全文:3,345文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

フアン・エスナイデルレノファ山口

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

関連記事

RANKING

関連記事