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“システムありき”から“選手の特長ありき”への作り替え。渡邉晋新監督の下、再起するモンテディオ山形

2023.05.13

J1昇格を目指す今シーズン、連勝スタートを切り期待が大きく膨らんだモンテディオ山形だったが、そこから急失速。開幕から2カ月と経たず監督交代を決断するに至った。あれから1か月、前体制下でチームの歯車が狂ってしまった要因と渡邉晋新監督が進める新たなチーム作りについて、モンテディオを追い続けている佐藤円氏が伝える。

 4月4日、モンテディオ山形はピーター・クラモフスキー監督との契約を解除し、トップチームの渡邉晋コーチを後任の監督に充てる人事を発表した。開幕して7試合を終えたところでの監督交代だった。

 開幕戦でヴァンフォーレ甲府に1-2で勝利すると、翌節のジェフユナイテッド市原・千葉にも1-3の逆転勝利。開幕連勝はJリーグ参入25年目でクラブ初のこと。例年、雪の影響が考慮され、開幕戦を含むシーズン序盤はアウェイ連戦が続く。今シーズンも開幕から4試合をアウェイで戦うことになっていて、第2節の千葉戦まで山形を離れキャンプ地から直接乗り込むのも例年通りだった。そうした事情も、山形が毎シーズン序盤に苦戦していることの要因としてそれなりの説得力をもって語られていた。

 しかし、クラブとしても「J2優勝」を明確な目標に掲げた今シーズンはそれを打破しようと、さまざまな手が打たれてきた。キャンプ中から練習試合のメンバーや、練習試合をしたこと自体を非公開にするなど情報流出を最小限に抑えたほか、外国籍のデラトーレとチアゴ・アウベスも始動日からチームに合流。開幕の約2週間前、2次キャンプと3次キャンプの間には2日間のオフを入れ選手たちがよりリフレッシュできるようにするなど、例年以上の対策を取ってきた。そして、蓋を開けてみれば開幕連勝。「今年の山形は違う」との印象を与えた。リーグトップのクラブに勝ち点を大きく引き離されてからようやくエンジンがかかり出す例年のスロースタートとは違い、序盤から昇格争いに割って入ることも十分に予感させるものだった。

 しかし、そこからチームは連敗のトンネルに突入する。第3節以降、ジュビロ磐田に2-1、ザスパクサツ群馬に1-0、ようやく迎えたホーム開幕戦でもFC町田ゼルビアに0-3で敗れて3連敗。さらにV・ファーレン長崎に3-2、2試合目のホームゲームでも水戸ホーリーホックに0-1で敗れた。監督交代はこの5連敗のタイミングで行われた。

 2年前に石丸清隆監督の成績不振を受けてシーズン途中で就任し、第13節以降、7連勝や12戦負けなしなどクラブの記録を塗り替えた。昨シーズンも終盤にアタッキングフットボールの本領を発揮し、逆転で6位に滑り込み、J1参入プレーオフに進出。昇格まであと一歩に迫ったピーター・クラモフスキー監督だったが、昇格の期待がさらに高まった今シーズンの序盤でチームを離れることになった。山形は渡邉晋監督への交代後も連敗が続き、クラブワーストの8連敗で一時は降格圏の21位まで沈んでいたが、現在は新たなスタイルが徐々に浸透し、ここから巻き返しを図ろうかという段階にある。

大ブレーキの最大の要因

 監督交代に至った要因を一刀両断に説明するのは難しい。おそらくは、多くの要因が複雑に絡み合う中で起きたことなのであろう。4月5日、渡邉晋監督の就任会見で、相田健太郎クラブ社長も「ここに至るまでの経緯は簡単ではない」と明かしている。高山明泰強化部長も同じ席で、「チームはある意味、生き物みたいなところがあって、その中にはチーム状況がどうなっている、今どういう流れでここまで至っている、そういったところを見ていく必要があると考えています。その中でこの7節というタイミングで迎えることになってしまったんですけれども、それが10節、もしくは15節とか、半分の21節とか、そういったタイミングと、今本当にここは変化をさせるべきタイミングだというところが、必ずしも一致するものではないとも思っています」と、タイミングも含めて非常に難しい判断だったことを吐露している。……

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モンテディオ山形

Profile

佐藤 円

1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。

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