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集大成のシーズンのはずが…FC町田ゼルビアが直面した誤算とは

2022.09.28

2021シーズンを5位で終え、J1昇格を大目標に2022シーズンを戦ってきたFC町田ゼルビア。しかし、残り5試合となったところで11位と、J1参入プレーオフ(PO)進出さえも危うい状況に追い込まれている。クラブを追い続けている郡司聡氏の目に、勝負の年である今シーズンの戦いぶり、そして低迷の原因はどう映ったのだろうか。

 ランコ・ポポヴィッチ体制発足とともに2020シーズンに策定した3カ年計画は、2022シーズンの今季、ラストイヤーを迎えていた。「3年以内でJ1を目指せるチーム作り」(唐井直GM)を旗印に掲げた3カ年計画集大成の“大団円”は、クラブ悲願のJ1昇格――。そうなるはずだった。

 ところが、第38節終了時点の順位は11位。J1参入プレーオフ圏である6位ベガルタ仙台との勝ち点差は「8」と、シーズン残り4試合の時点でPO進出はもはや“風前の灯”である。

 1年目こそ19位に沈んだが、2年目の昨季は5位へとジャンプアップ。着実に土台を築きながら、町田は3カ年計画初年度から2年の時間をかけて、大きな飛躍を遂げた。しかし、3年目の今季はシーズンが進むにつれて、チームのバイオリズム低下に歯止めが利かなくなってきている状態だ。そうした3年目のつまずきに至った背景には、多くの誤算が隠されている。

“スタートダッシュ”が長続きしなかった理由

 大枠の原因は、現体制の限界だ。チーム強化を司る唐井GMはトップチームの長として、ポポヴィッチ監督を招へい。平戸太貴ら東京五輪世代にあたる1997年組以下の年代の選手たちをチームの中心に据え、地道にチームビルディングを推し進めながら、3シーズンでトップリーグ昇格という収穫期を迎える算段だった。しかし、現実は周知の通りだ。

 3年目の停滞に至った第1の誤算は、今季のチーム編成を整える中で生じた。今オフ、平戸や佐野海舟、髙江麗央といったポポヴィッチ体制のコアメンバーに流出危機があったため、強化部はまず現有戦力の維持を第一優先として、チーム編成を進めざるを得なかった。その結果、レギュラークラスの離脱は過去2シーズン、横浜FMからの期限付き移籍でプレーしていた吉尾海夏のトリコロール復帰のみにとどまっている。そうしたコアメンバーの残留は、現強化体制の功績の1つだ。

 しかし、その一方で新戦力の補強は遅々として進まず。当初は35人ほどの陣容を整える目論見だったが、実際には特別指定選手である平河悠を含めても、開幕時点で26人の“少数精鋭”の陣容となった(2種登録選手2人は除く)。その中には開幕直前に補強したDF菅沼駿哉、FWヴィニシウス・アラウージョら有力選手も顔をそろえたが、いずれも2度のキャンプにフル帯同できなかったことが指揮官の頭を悩ませた。その結果、2選手は戦力として計算が立つようになるまでにシーズンの半分近い時間を要している。

 ただ主力選手の流出危機を最小限に押さえ、大半のコアメンバーが残留できたチーム編成は、シーズン序盤を戦う上では大きなアドバンテージとなった。戦力が大幅に入れ替わり、一からのチーム作りを強いられた“ライバル”を傍目に、開幕当初の町田は継続路線の強みを存分に発揮。第5節の東京ヴェルディ戦こそ無敗対決に敗れたものの、翌節アウェイでのベガルタ仙台戦では長らくJ1に所属していたチームを終始圧倒するインテンシティの高いゲームを演じ、「完全勝利」(鄭大世)をつかみ取っていた。

第5節仙台戦のハイライト動画

 ところが、“スタートダッシュ”は長続きしなかった。シーズン序盤は言わば、昨季までの“貯金”で相手を制圧できたが、次第に他クラブも新チームの戦術が確立され始めると、町田は8試合未勝利の停滞期に突入する。……

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町田ゼルビア

Profile

郡司 聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。

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