SPECIAL

アーセナル“あるある”を乗り越えて。ユナイテッド撃破でCL出場へ前進

2022.04.25

3連敗でCL出場権が遠のいたかに見えたアーセナルだったが、チェルシーとのロンドンダービーを制して連敗ストップ。4位を争うマンチェスター・ユナイテッドをエミレーツスタジアムに迎えた。前節リバプールに4-0と大敗したユナイテッドは大きな批判にさらされており下馬評ではアーセナル有利だったが、果たして……。

 最悪のチーム状況の中、チェルシーをスタンフォードブリッジで破り、3連敗を止めたアーセナル。「勝てない試合が続く中でチェルシーに勝利して悪い流れを止める」という一連は実は近年のアーセナルの“あるある”である。エミール・スミス・ロウが台頭するきっかけとなった2020年のボクシング・デーの対戦はその代表格と言えるだろう。

 一方で近年のアーセナルにはもう1つ“あるある”がある。それは「イケると思った時のユナイテッド戦ほど躓く」というものである。

 アーセナルファンにとっては忘れられないのが2016年。ダニー・ウェルベックのラストプレーでの決勝点で首位のレスターを仕留めた直後の試合である。勢いに乗るアーセナルとは対照的に、その試合のユナイテッドのスカッドはボロボロ。アーセナルファンの誰もが連勝を疑わなかった。

 だが、その試合がリーグデビュー戦となったマーカス・ラッシュフォードの2ゴールによって、アーセナルは敗戦。勢いをいとも簡単に止められてしまったアーセナルはミラクル・レスターの尻尾をシーズン最後まで掴むことができなかった。

 今季前半のオールドトラッフォードでの対戦もスールシャールが解任されて、キャリックが暫定で指揮を執った試合。体制が入れ替わるただ中のユナイテッドにアーセナルは逆転負けを喫し、キャリックに勝利を置き土産としてクラブを去ることを許してしまった。

 そして、今回もユナイテッドは絶不調。アーセナルはこういう時にこそ落とし穴が待っている。チェルシーに勝利した勢いをCL出場に繋げるためにもこちらの“あるある”は封じないといけないのである。

「対サカ」にみる、攻撃の成否

 アーセナル目線でこの試合のポイントとして挙げたいのは、右サイドのマッチアップの力関係だった。直近のアーセナルの攻撃がうまくいくか否かはブカヨ・サカが相手SBとのマッチアップで優勢に立てるかどうかが大きく関係している。リバプール、クリスタルパレス、ブライトンなどアーセナルが最近敗れた相手にはサカを単独で封じることができる優秀なSBがいた。そうした相手には攻め手がなくなるのが今のアーセナルの難点だ。

 逆にサカがSB相手に繰り返し突破をできるチームに対しては、アーセナルは攻撃の糸口を掴むことができる。そうした対戦相手はサカに2人で対応することが多い。アーセナルは2枚目として出てきた敵の選手が空けたスペースをつければチャンスになる。チェルシー戦ではマルコス・アロンソのカバーに入ったエンゴロ・カンテが空けたスペースでマルティン・ウーデゴールが前を向いたことで2点目を決めることができた。

 この試合におけるユナイテッドもチェルシーと同じく、サカには2枚で対応。同サイドのウイングのジェイドン・サンチョを低い位置まで下げる形を選んだ。ちなみにユナイテッドは逆サイドの大外の選手に対してもスコット・マクトミネイが出ていく形でフォローを行う。

 この場合、時間をもらえるのはサイドの浅い位置にいる選手である。右サイドならばセドリック・ソアレス、左サイドならばグラニト・ジャカ。大外のサカに預けた後、マイナスで待ち構えているセドリックから逆サイドへのクロスを使う。ここ最近のアーセナルではよく見られる形だ。

 アーセナルの先制点は大外で押し下げて、マイナスの選手がクロスを上げるというメカニズムを利用したものだった。左からはジャカ、右からセドリックが大外にピン留めされた選手によって空いたスペースを享受し、繰り返しクロスを上げることができた。

 このクロスを処理しきれなかったユナイテッド。右サイドで再びボールを受けたサカのシュートはデ・ヘアに弾かれたが、最終的にはタバレスが押し込んで先手を奪う。大外→マイナスパスからのクロスというポゼッションチームの王道パターンでユナイテッドを左右に揺さぶったアーセナルが開始3分でリードを得る。

ハイプレスへの脆さ、“脅し”としてのウーデゴール

 いきなり出鼻を挫かれたユナイテッドは高い位置からアーセナルにプレスをかける。ここ最近のアーセナルは後方からのビルドアップでのミスが多い。ユナイテッドはアーセナルのバックラインに圧力をかけることでショートカウンターを狙ったのだろう。

 この圧力にアーセナルはやや屈した感があった。特にアーセナルのCBとセンターハーフにまとめてユナイテッドがプレスをかけることができた場面では、アーセナルは苦しい状況に陥ることになる。

    非保持では安定したカバーでチームを助けることができるモハメド・エルネニーだが、ハイプレスの状況はあまり得意ではない。ボールに寄ってくる動きが多すぎるせいで、マーカーをボールホルダー周辺まで引き連れてしまう癖があり、出し手の選択肢を狭めてしまうことが多い。この試合でもそうした悪癖は見られた。

 それに加えて、右SBのセドリックもややプレッシャーには弱くパスワークが安定しない。ユナイテッドがハイプレスを仕掛けてきた時には苦しめられたアーセナルだった。

 しかし、試合が明らかにユナイテッドペースに傾いたわけではない。ユナイテッドの前線や中盤はこうしたハイプレスを恒常的に行う献身性や機動力を持ち合わせていない。ネマニャ・マティッチはいい選手ではあるが、広い行動範囲を網羅することは不可能。中盤の守備範囲に限界のあるユナイテッドは頻繁にハイプレスに出ることはできない。

……

残り:2,928文字/全文:5,302文字
この記事は会員のみお読みいただけます

会員登録はこちら

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

電子版雑誌が読み放題

会員限定記事が読める

「footballista」最新号

フットボリスタ 2022年9月号 Issue092

11、12月開催のW杯を控えた異例のシーズン。カタールをめぐる戦いの始まり【特集】ワールドカップイヤーの60人の要注意人物 【特集Ⅱ】ワールドカップから学ぶサッカーと社会

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

アーセナルマンチェスター・ユナイテッドレビュー戦術

Profile

せこ

野球部だった高校時代の2008年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。