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そのプレーは50年経った現代でも“モダン”。「未来から来た選手」ヨハン・クライフ

2022.02.09

この記事は『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』の提供でお届けします。

サッカーの歴史を紐解いた時、彼以上の実績を残した選手や監督は少なからず名が挙がる。だが現代へと続く戦術の進化に与えた影響の大きさにおいて、この男の右に出る者はいないだろう。ヨハン・クライフ――現代サッカーの戦術を語るうえで不可欠なポジショナルプレーやゲーゲンプレッシングの要素を内包した「トータルフットボール」は、彼の存在なしには成立し得なかった。戦術史におけるその価値と選手としての凄みを今一度振り返ろう。

かつてのスーパースターは現代でも通用するのか問題

 かつてのスーパースターは現代でも通用するのか。

 何度となく繰り返されてきた疑問だが、この問いにあまり意味があるとは思えない。フィールドの状態、用具の違い、トレーニングの仕方、プレーの強度など、あらゆることが変化しているので単純に比較するのは無理があるからだ。

 ただ、20年単位で見ると通用するのは確実だ。

 遠藤保仁は41歳だが、20年前から第一線でプレーし続けている。その間に取り巻く状況は変化しているが、その影響はほとんどないわけだ。加齢による肉体的な衰えがあっても、20年ぐらいは普通に通用する。スター選手の多くは40歳近くまでプレーしたものだし、現在もそれは同じだ。仮に加齢しないとすれば、30年程度で時代遅れになるとは思えない。

 ヨハン・クライフの全盛期は1970年代だった。ざっと50年が経過している。これぐらい前の選手になるとさすがに人による気はするのだが、クライフに関しては通用するだろう。なぜかというと、よく似た選手が現役でプレーしているからだ。

 ルカ・モドリッチは36歳になるが、依然として世界最高クラスのMFとしてレアル・マドリーでプレーしている。モドリッチはクライフによく似ている。顔も似ているし、体重も同じ。身長はクライフの方が6cm高い。テクニック、インテリジェンスに図抜けていて、右足のアウトサイドを使ったキックが得意。モドリッチの方が運動量はあるが、クライフはより速く、得点力もあった。モドリッチが問題なくプレーできているなら、クライフがダメな理由はおそらくない。

 ディエゴ・マラドーナの技術は今見ても超える選手はいないと思うし、ペレの動きは理解できない摩訶不思議さにあふれている。時代を超越した2人だ。クライフはそういうタイプではない。動画のプレー集など見ると、スピードの急激や変化やボールタッチの巧さなど確かに格別ではあるのだが、本質はそこではないのだ。

 ヨハン・クライフは未来から来た選手だった。

50年のギャップがない

 1974年ワールドカップのオランダ代表は「トータルフットボール」のチームとして有名だ。リヌス・ミケルス監督の下、攻守に画期的なプレーを展開していた。その中心がクライフで、クライフがいてこそのトータルフットボールだった。4年後のアルゼンチン大会はクライフ以外のメンバーがほとんど残っていたにもかかわらず、トータルフットボールは再現されていない。

 守備では「ボール狩り」と名づけられた即時奪回とオフサイドトラップを組み合わせた過激な手法が人々を驚愕させ、後にミランによってゾーナル・プレッシングという形でリメイクされている。攻撃面はクライフ自身が監督となったバルセロナにオランダ(アヤックス)の手法を持ち込み、現在のバルサスタイルに繋がっている。ポジショナルプレーの祖型でもある。

 トータルフットボールからプレッシングとバルサスタイルまでが15年あまりで、そこからジョセップ・グアルディオラ監督が両者を統合発展させるまで約20年。さらに現在までがおよそ15年。つまり、トータルフットボールから50年が経過している。

 クライフは、おそらく50年前に現在を予期していた。グアルディオラ監督は「デッサンはクライフが描いたもの」とバルサスタイルのオリジナルについて語っているので、実現はしていなかったもののクライフ監督の時にすでにアイディアとしては存在していたわけだ。選手時代のクライフが、後に監督として示す構想をすでに持っていたかどうかはわからない。しかし、トータルフットボールが現代フットボールのひな形だったことを想起すれば、アイディアの核はすでにあったと考えるのが自然だろう。

 少なくともフットボールをどうプレーすべきかについて、明確な考えがあったことは当時のクライフのコメントからもわかっている。もしクライフが50年をタイムスリップしてきたとしたら、むしろ現在の方がプレーしやすいのではないだろうか。彼が思い描いていたフットボールが今ようやくあるのだから。

バルセロナ監督時代のクライフ。彼のイマジネーションをピッチ上で表現したチームは、バルセロナ初のCL制覇をはじめ11タイトルを掲げ「ドリームチーム」と称えられた

どこでより、どうプレーするか

 選手としてのクライフは「偽9番」として有名だが、ずっとCFだったわけでもない。

 [4-2-4]システムの時はセカンドトップとして10番のポジションでプレーし、右のインサイドハーフや左ウイングでもプレーしていた。一時的にリベロもやったし、キャリアの後半はFWというよりMFだ。

 ただ、どのポジションにも縛られていない。勝手気ままということではなく、プレーのビジョンがはっきりしているのでどこでプレーするかよりどうプレーするかで際立っていた。

 例えば、現在「ライン間」でパスを受けるプレーの効果について疑う人はいないが、それは「ライン間」という言葉の流布によって多くの人に可視化され認識されたからだ。クライフは「ライン間」でプレーしていた。ただ、50年前は基本的にマンツーマンで守っているのでラインの概念すらないのだ。つまり、どうプレーすべきかの洞察力と解釈について、当時としては宇宙人だった。CFとは、ウイングとは、プレーメイカーとは「こうあるべき」という固定観念からは当たり前に逸脱していた。傍から見れば自由人だが、一般とは違う自分のルールに従ってプレーしている。

 当然、自分だけでなく周囲のこともよく見えていた。「交通整理」と揶揄(やゆ)された、味方に指示を飛ばすポーズはクライフの意匠だ。あんなによく喋り、文句をつけ、味方に指示する選手も珍しい。チームメイトにどうプレーするか教えながらプレーしていた。10代の頃からそうだったらしい。しかしそうでなければ、たぶんトータルフットボールは実現していない。革命を先導したリーダーで、未来からやって来た選手だった。

写真はバルセロナ退団セレモニーでのクライフ。選手としての全盛期は国内リーグを8度、チャンピオンズカップ(現CL)を3度制したアヤックス時代だったが、この移籍がのちの監督就任、そして薫陶を受けたグアルディオラによるポジショナルプレーの発展へと繋がっていくこととなった

50年先をゆく

 技術的にはパーフェクトだ。細身だけれども贅肉のない筋肉質の体型。ドリブルで最初の一歩が格別に速く、方向転換は慣性の法則を無視するかのようなキレがあった。その名が冠されている「クライフターン」や空中高く打ち上げるクロスボールなど、独特の技も開発している。コントロールはピタリと収まり、左右両足で蹴れる。右足のアウトサイドキックはトレードマークだが、左足でもアウトで長いパスを蹴れた。

 ドリブルで右前へ出ていくのが得意で、緩急を入れながら運ぶ。運びながら周囲を見て、決定的なプレーに繋げていく。スタイルとしてはリオネル・メッシに近く、利き足が違うので左右が反対になるが、左側のハーフスペースを起点としてゴールへ迫っていく形があった。

 唯一の弱点はパワー不足。強いボールを蹴れなかった。30~40mのピンポイントのパスは十八番だったが、強烈なミドルシュートはない。ただ、頑健ではないが相手のチャージをブロックする体の使い方は巧いし、そもそも当たられないのでパワー不足は弱点と言うにはあたらないかもしれない。

 50年前の選手とは思えないほどプレーぶりはモダンだ。ところで、昔の選手が現代に通用するかどうかという問いで曖昧なのが、年齢と経験をどういう前提にするのかだ。50年前の27歳のままタイムスリップさせるのか、27歳のままずっとプレーし続ける設定にするのか。もし後者だとすれば、そのままでも通用するクライフはさらに時代とともにアイディアを研ぎ澄まし、今から50年先のプレービジョンを示すのかもしれない。

サッカーという競技を大きく前へ進めたレジェンドは2016年3月24日、68歳の若さでこの世を去った。存命であれば現在のサッカーをどう評価していたのか、あるいは選手として蘇ったならどんなプレーを見せたのか、想像は尽きない

◯ ◯ ◯

選手としては1人だけ別次元のプレービジョンとそれを現実のものとする卓抜したスキルでサッカー戦術史に燦然と刻まれる「トータルフットボール」を体現し、監督としてはバルセロナで現代のポジショナルプレーへと繋がるスタイルを確立し「ドリームチーム」と称された黄金期を築いたヨハン・クライフ。時代を超越する存在だった「フライング・ダッチマン」を筆頭に、オランダ代表で輝きを放ったフィリップ・コクー、クラレンス・セードルフ、ヤープ・スタム、ジョバンニ・ファン・ブロンクホルストの5選手が大人気スポーツ育成シミュレーションゲーム「プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド」(サカつくRTW)に登場!

彼らレジェンドに加え、現役のスーパースターたちが新★5選手として登場する“SAKATSUKU Anniversary LEGENDS SCOUT”が開催中だ。このほかにも、 合計3,000GB(無償)に「★5確定スカウトチケット」などが獲得できる豪華ログインボーナスやパネルミッションなどの“SAKATSUKU Anniversary記念キャンペーン”や、ログインするだけで★4「ヨハン・クライフ」らが手に入るスペシャルログインボーナスなどが合わせて実施されている。

すでにゲームをプレイ中の方はもちろん、「サカつく」未経験の方もこの機会にぜひ、ゲームにトライしてみてほしい。

<商品情報>

商品名 :プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド
ジャンル:スポーツ育成シミュレーションゲーム
配信機種:iOS / Android
価 格 :基本無料(一部アイテム課金あり)
メーカー:セガゲームス

さらに詳しい情報を知りたい方は公式HPへアクセス!
http://sakatsuku-rtw.sega.com/

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Photos: Getty Images

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オランダ代表サカつくRTWポジショナルプレーヨハン・クライフ

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。