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並み居るプレミアの強豪相手に上位を堅持。ウェストハムの「継続性」と「献身性」

2022.01.31

欧州を代表するビッグクラブがひしめくプレミアリーグで上位に食い込み、欧州の舞台でも勝ち残っているウェストハム。2019-20には16位だったチームが、2シーズン続けて健闘を続けているのは並大抵のことではない。そのプレーの特徴に迫る。

 2020-21シーズン、惜しくもCL出場権を逃したものの4位に2ポイント差の6位で見事フィニッシュしたウェストハム。今季はELでグループステージ突破を果たし、リーグ戦では昨季同様CL出場権をうかがうことのできる好順位につけている。

 彼らはどんな特徴を持ったチームなのか。スタッツを見る限り、そのほとんどが平均的な数値である。空中戦勝率、1試合平均タックル数、インターセプト数……。平均ポゼッション率は50%を切り、他の上位チームと一線を画している。さらに、昨季冬の移籍市場でレンタル加入し活躍したジェシー・リンガードがマンチェスター・ユナイテッドに戻った影響もあり、攻撃に昨季ほどの流動性も見られなくなってしまった。

 にもかかわらず上位につけるウェストハムは現在どのようなサッカーを展開し、いかにして勝ち点を積み重ねているのか。その理由を考察する。

守備面の変化

 昨季のウェストハムは[4-2-3-1]の布陣で守備ブロックを形成していた。2列目のラインをパスで突破された場合、DFラインは穴を開けないよう互いの距離感を保ちつつディレイを行い、守備能力が高く球際の強さに定評のあるセントラルハーフ(CH)のデクラン・ライスとトマシュ・ソウチェクがボール奪取を試み、2列目の選手の献身的なプレスバックで囲い込む。

 これに対して今季のチームはサイドハーフ(SH)の位置取りが低くなり、[4-4-1-1]もしくは[4-4-2]の守備ブロックに変化している。これはウェストハムにとって必ずしも良い変化であるとは言えない。

 例えば、[4-4-1-1]の守備ブロックでは前線の2枚の脇のスペースを使われやすくなっている。ここは昨季はSHがケアしていたスペースであるが、位置を下げてしまったためにカバーが利かない。こうなるとCFのマイケル・アントニオと連係を取り、巧みにスペースと敵アンカーのマークを管理しながら守備の行えるパブロ・フォルナルスでないとトップ下は務まらず、彼であってもこのスペースを埋め切ることは難しい。

 SHが下がった位置を取ればその分カウンターに走る距離が長くなり、脅威を示すことが難しくどんどんと押し込まれてしまう。

 反面、利点としてはSBの負荷が減ったことが挙げられる。右SHのボーウェンを筆頭にSHの献身性は損なわれておらず、サイドで数的不利に陥る機会が減った。加えて、CHが持ち場を離れる機会も減るため、相手のクロスボールに対して長身のライスやソウチェクがゴール前で空中戦とマイナスクロスに対応することができ、がっちりとゴールをプロテクトできる。

SHの位置を下げブロックを形成したことで、ボールを保持する相手最終ラインに対してはプレッシャーがかけづらくなっている

攻撃面の変化

 攻撃においては、効果的なポジションチェンジが減っている。これは左SBのアーロン・クレスウェルが負傷で10試合程度戦列を離れていた点、そしてリンガードの抜けた穴も大きいと言える。フォルナルス、マヌエル・ランシーニ、サイード・ベンラーマとトップ下をこなすことのできる選手はみなリンガードに負けない技巧派であるが、ポジションチェンジとパスワークを含めるとリンガードの果たしていた役割にはまだ及んでいない。リンガードはライン間の狭いスペースでプレーするだけでなく、サイドやCHの脇にポジションを移すことで、空いたスペースにほかの選手が移動するためのトリガーになっていたのだ。

 また、昨季大いに得点に絡んだCHソウチェクや右SBブラディミール・ツォウファルといった選手が攻め上がれていない。彼らが前線に顔を出すためには2列目を含む中盤の選手がスペースを作りつつサポートを行う必要があるが、その部分が薄くなってしまっているのである。チーム全体として攻め急ぐシーンも少なくなく、中盤を省略して前へ前へとボールを送り込み無理のある攻撃が生まれる場面も昨季に比べると多くなっている。

「継続性」と「献身性」

 以上のように、昨季と比べ必ずしも良いとは言えない変化も見られるウェストハム。では、それでも彼らが勝ち点を積み重ねられている理由とは何か。……

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ウェストハム戦術

Profile

とんとん

1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。