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岡田武史に聞く、FC今治が「岡田メソッド」を外部配信する理由

2022.01.26

FC今治で用いられている、指導方法論を体系化した「岡田メソッド」。そのエッセンスやトレーニング方法などを紹介するYouTubeチャンネル「岡田メソッドTV」の配信が、2021年12月より開始された。そこでFC今治の代表取締役会長兼オーナーであり、メソッドを構築した岡田武史氏に、その意図と展望について聞いた。

なぜ、“秘伝の技”を外部配信するのか?


――まずは、YouTubeで「岡田メソッドTV」を始められた理由をお聞きできればと思います。

 「岡田メソッドTVは当初ビジネスとして構想していて、そもそも国内での展開はあまり考えていなかったんですよ。例えば、東京のチームがなんでFC今治のメソッドを使わなきゃいけないんだ、と思われるかもしれないから。だから国内というよりは海外、主に中国をターゲットにビジネスとしてやる予定でした。でも結局、中国でそうやってビデオを出したら、海賊版が出たりとかでいくらでも内容が漏れちゃうんですよね。それならもうすべてオープンにして、そこからコンサルティングを受けたいというクラブに対してコーチを派遣したり、向こうもIT化が進んでいるからオンラインで指導をしたり、そういう形でやってマネタイズしていこうと考えていました。

 だけど、岡田メソッドは『日本人が世界で勝つためのサッカースタイルを実現する』というのを掲げているから、まずはやっぱり日本の人に無料で紹介するべきだろうと。それで、具体的なトレーニング方法をみんな知りたがるから、それもメソッドと一緒に公開することにしました。本当は僕らにとっては具体的なトレーニングは原理を知った上で自分で作ればいいことなので、あまり重要じゃないんだけどね。映像は膨大な量があるのでかなり時間はかかってしまうけれど、今、順次オープンにしています。そうやって辞書みたいな形でまとめて置いておいて、みんなが気になったことがある時に見に来て確認できるような存在になればいいかなと思っています。YouTubeチャンネルはそういうコンセプトで公開しました」


――岡田メソッドの書籍もそうですけど、本来自社で構築したメソッドって当然お金も人もかけて作っているわけですから、外部に公開したくないというのが一般的な感覚だと思います。なぜ、書籍やYouTubeチャンネルという形で外部に発信していくことにしたのでしょうか?

 「最初はやっぱり会社のパソコンでしか見られないようにしていましたね。しかし考えてみたら、これって人が身につけるものなわけですよ。うちのコーチが優秀になって外に出て、自分が身につけたメソッドを広めていくかもしれない。それをこうやって隠してね、コーチにもダウンロードさせないように管理したって、どうせ広まっていくんですよ。ダウンロードを許可したらしたで、恩師から見せてほしいって頼まれたら絶対見せざるを得ないじゃないですか(笑)。そもそも日本のサッカーが世界で勝つため、主体的にプレーする選手を作りたいという思いでメソッドを作ったわけだから、それならもうオープンにしよう、ということになりました」


――今、Jクラブでも自分たちのプレーモデルやサッカーのスタイルを作って共有していこうという流れが出てきています。ただ、ほとんどのクラブは非公開や、目次だけといったごく一部の公開にとどめていますよね。そんな中で、FC今治だけが大々的に公開しているのはすごいことだと思います。日本人って、武道とか職人の世界でもやっぱり弟子だけに継承されていく門外不出の秘伝の技みたいな世界観があると感じているので、なおさら勇気があることだなと。

 「ただ、今は時代が変わってきているんですよ。僕らも、課金制にして月額ならこれだけの収入になりますとか、これだけアクセスがあればこのぐらい稼げますとか、言ってくる人もいるんだけどね。もう、そんな時代じゃないような気がしていて。メソッドで稼ぐにしても、1回出したら出しっぱなしじゃなくてどんどんブラッシュアップしていかないといけないし、次から次へと新しいものを出していかなきゃいけない。僕らは単純にメソッドを売ることでお金を稼ごうと思っているわけじゃないんですよね。例えば、Googleも全部無料で使えるけど、アクセス数が増えることによって広告宣伝が入る仕組みになっているじゃないですか。我々は広告宣伝費で稼ごうと思ってはいないけど、たくさんのアクセス数がついてくれたなら、その中からもうちょっと詳しく知りたいという人が出てくるかもしれない。そういう興味を持ってくれた組織に対してコンサルティングなりといった形で、長期的にマネタイズできたらいいんじゃないかという発想です」

「岡田メソッドのAI化」の先にある未来


――誰でもアクセスできて、それを元に発展させることもできて、全体がさらにブラッシュアップされていくというオープンソース的な考え方ですね。実際、岡田メソッドも公開したことで外部からのフィードバックや反響などはありましたか?
……

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FC今治岡田メソッド岡田武史文化経営

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。