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「家族愛」「経験不問」「元控えGK」…ノッティンガム・フォレストのプレミア上位進出を読み解く3つのキーワード

2025.01.29

2024-25シーズンのプレミアリーグで前半戦を2位で折り返し、首位リバプールにも1勝1分と勝ち越して旋風を巻き起こしているノッティンガム・フォレスト。第23節時点でも3位に踏みとどまっている古豪の上位進出を読み解く3つのキーワードを、フォレストにまつわる様々な情報を発信しているNottingham Forest Japan(非公式)氏に教えてもらおう。

キーワード①「家族愛」

 ノッティンガム・フォレストのプレミアリーグ上位進出を語る上で欠かせないのは「ピッチ外」だろう。そのトップに立つのが、2017年5月にチャンピオンシップを彷徨う古豪クラブを買収したギリシャ人富豪のエバンゲロス・マリナキスだ。オリンピアコスとリオ・アベのオーナーとしても知られ、麻薬取引疑惑やギリシャ1部八百長疑惑でサッカー界を騒がしてきたマリナキスは、いまだに「無法者」のイメージを拭えていないかもしれない。

マリナキスオーナー

 昨年4月には3度のPK奪取未遂が生まれたプレミアリーグ第34節エバートン戦(●2-0)後に、クラブ公式Xを通じて「試合前にPGMOL(イングランドプロ審判協会)へVAR担当が(ライバルの)ルートンのファンであることを警告しましたが変更されることはありませんでした」と非難。

 75万ポンドの罰金と警告を科された事件で、元マンチェスター・ユナイテッドで解説者のギャリー・ネビルから「マリナキスはマフィアギャングのようだ」と揶揄されたこともあった(放送した『Sky Sports』はネビルの発言を謝罪)。また、24年ぶりにプレミアリーグへ昇格した2022-23シーズンにフォレストが敢行した30人もの補強は、マリナキスの非戦略的な独断専行だという見方をされている。

 ただ、フォレストサポーターが抱くイメージは違う。オーナー就任当初に『BBC』のインタビューで口にした「ファンに昇格や優勝などの約束はできない。しかし、ハードワークを約束する。ハードワークとしっかりとした組織でクラブに安定を与える。言葉ではなく行動で示す」という宣言を有言実行に移しているからだ。

 その1つがフォレストの負債の返済。ここ8年でマリナキスは多額の債務を資本に交換して、2019-20シーズンには2000万ポンド、2020-21シーズンには1200万ポンド、 2021-22シーズンには4100万ポンド、2022-23シーズンには1100万ポンド、2024-25シーズンには1億5400万ポンド(!)を投じてきた。ノッティンガムの地元メディアでは「クラブへの忠誠心を証明している」と評されているが、全国メディアレベルになると大きく扱われないのが現状だ。

 その影響は財政だけにとどまらない。新トレーニング施設、スタジアム拡張計画、ロス・マーティン、リナ・スルーク、エドゥらを招へいしたディレクター陣強化等への投資は当然ながら、フォレスト女子チームの全プロ化(3部では稀)とホームゲームの(男子と同じ)シティ・グラウンド開催など、マリナキスの功績は多岐にわたる。女性向けバスケットボールとして知られるネットボールのチーム結成のような改革も、男子フットボールの枠を超えてノッティンガムの街を「スポーツタウン」にする試みで、性別を問わず地元の子供たちがスポーツに触れられる機会を創出していく社会貢献も見られている。

 そして、クラブがクリスマスに行う毎年恒例の募金活動では、地元で集まった金額分を1人でさらに募金。集金を2倍にしたことでも知られている。ギリシャの山火事で被災した人々にも手を差し伸べてきた支援活動家としての一面も持つマリナキスの人となりを、オリンピアコスのスポーツディレクターとしてともに仕事をしてきたクリスティアン・カランブーは「メディアは本当の彼を知らない。彼は家族愛にあふれている。寛大でたくさんの人を助けてきた」と紹介している。

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Nottingham Forest Japan(非公式)

2024-25シーズンのプレミアリーグで前半戦を2位で折り返し、首位リバプールにも1勝1分と勝ち越して旋風を巻き起こしているノッティンガム・フォレスト。第23節時点でも3位に踏みとどまっている古豪の上位進出を読み解く3つのキーワードを、フォレストサポーターのNottingham Forest Japan(非公式)氏に教えてもらおう。

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