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元ツエーゲン金沢の学生アナリストが振り返る2021シーズンJ2戦術トレンド

2022.01.06

初優勝を果たしたジュビロ磐田と続く2位の京都サンガがJ1昇格をつかんだ一方、SC相模原、愛媛FC、ギラヴァンツ北九州、松本山雅FCの4チームがJ3降格の涙をのんだ2021シーズンのJ2リーグ。サウス・ウェールズ大学へ通いながら、同季にツエーゲン金沢でインターン生として活動していた異色の学生アナリスト、白水優樹氏にJ2の戦術トレンドを攻撃、守備、セットプレーの3つの観点から一つずつピックアップしてもらった。

攻撃のJ2戦術トレンド:多彩化するサイドバックの役割

 最近のサッカーでは世界的に「選手の配置」があらためて重要視され、攻守において立ち位置を変化させるチームが珍しくない時代に突入しています。例えば同じ攻撃の局面においても、自陣からボールを運ぶ時と相手陣内で得点を奪いにいく時とでは異なる役割を任されるのが一般化しつつあり、J2にもそのトレンドが反映されつつあります。そのような目まぐるしく配置が変わっていく環境の中、最も多彩な動きを見せているのはサイドバック(以下SB)ではないでしょうか。

 理由としては主に2つ挙げられます。まず一つ目は、SBがプレスの標的になりやすいということです。従来のSBは、タッチライン際に立ち続けていたのでプレーの方向がセンターバック(以下CB)や中盤の選手のように360度ではなく、180度に限定されていました。そのため、CBからSBへパスが出た瞬間を合図にプレスを仕掛けるのが、古くから一つのセオリーになっています。またSBのポジションはピッチの端の中央にある相手ゴールから、フィールドプレーヤーの中で最も遠い場所に位置しています。そのままボールを受けてもさほど効果的ではないというもう一つの理由から、相手陣内ではより相手ゴールに迫りやすい位置に移動する傾向が強まっているのでしょう。

 これらの理由でSBがいろいろな場所へ移動していくことが増えていますが、その動きは大きく4つのパターンに分けることができます。

①3バックの一角

 まずはSBがDFラインに残って3バックの一角を担う移動です。これによって4バックから3バックへと変化することができます。東京ヴェルディでは、左SBの福村貴幸選手が高い位置を取る一方、右SBの若狭大志選手はそのままDFラインに残り3バックへと変化する可変システムを採用していました。

 この移動は逆サイドのSBが高い位置に上がったり中盤に入ったりする動きとともに行われていますが、重要なポイントはむしろ同サイドにあります。前にいるウイングあるいはサイドハーフがワイドに張っていることです。彼らが中に入ってきている状況でSBまでもが内に絞ると、そのサイドで幅を取る選手がいなくなりピッチを広く使った攻撃ができなくなってしまうため、チームメイトが大外に立っている状況で3バック化がよく行われています。

②中盤のサポート役

 2つ目は、SBが中盤に入ってボランチあるいはアンカーのサポートを行う移動です。例えば愛媛FCでは4バック採用時、相手陣内にボールを運ぶと右SBの茂木力也選手と左SBの前野貴徳選手を内側に絞り、アンカーを両脇からサポートをしていました。3バックの一角になるサポートと同じく、同サイドのウイングまたはサイドハーフが幅を取っている時にSBが内側に入ってくる可変になりますが、相手のFWの手前で出し手になるのではなく、その背後で受け手になるという違いがあります。基本的には正面からしかプレッシャーが来ないDFラインに留まるのではなく、四方八方から狙われる中盤の選手として振る舞うため、より密集でプレーできる技術が求められます。

③ライン間の受け手

 3つ目は、相手の守備ブロックの中に入る移動です。例えばモンテディオ山形では、右SBの半田陸選手が積極的にライン間へと侵入していました。とりわけ効果的だったのは、機を見てハーフスペースを駆け抜けていくアンダーラップ(インナーラップ)です。チームが右サイドにボールを展開すると、スライドさせたSBとCBの間隙を突いて縦に中盤の一角を引っ張り、大外でパスを受けた右ウイングの中原輝選手が得意のカットインを仕掛けられるスペースを生み出していました。マークがついてこなかったり間に合わなければ、J2第40節のFC町田ゼルビア戦でチーム2点目を演出したように、そのままDFラインの裏で受け手となることも可能で、味方だけでなく自分自身にも新たなオプションを提供できます。

④幅の確保

 4つ目は、SBがそのままサイドで高い位置を取りにいく移動です。攻撃時のSBの動きとしては一番シンプルですが、タイミングはチームによって変わります。例えば、CBとボランチだけでボールが持てるチームであれば、SBが上がるタイミングは早くなります。レノファ山口、ザスパクサツ群馬、ギラヴァンツ北九州、FC琉球など、[4-4-2]のチームが中盤の選手を下ろして両SBを積極的に高く上げ、[3-5-2]のような形に変化する可変が多く見られました。

 これら4つのSBの移動をほぼすべてコンプリートしていたのが、アルベル・プッチ・オルトネダ監督が率いたアルビレックス新潟です。新潟の右SB藤原奏哉選手と左SB堀米悠斗選手はSBのポジションにとらわれず、ピッチ上の様々なところに顔を出して攻撃を活性化させていました。今後は4バックのSBだけではなく、3バックのチームがウイングバックを中に入れていく戦術も見られるようになるかもしれません。

守備のJ2戦術トレンド:挟み込むプレッシング

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白水 優樹