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ドルトムントを4-0で圧倒!アヤックスの「トータルフットボール2.0」

2021.10.22

CLグループC第3節ではアヤックスとドルトムントの上位対決が実現。バイエルン時代にリザーブチーム監督としてペップ・グアルディオラの薫陶を受けたエリック・テン・ハーフと、ラルフ・ラングニック戦術の申し子であるマルコ・ローゼという欧州サッカーの未来を担う監督同士の対決でもある。意外にも試合はアヤックスのワンサイドゲームに終わった。その裏にあった駆け引きを現地取材した中田徹氏がレポートする。

 ノルウェー代表の規格外のストライカー、ハーランドにはオランダ代表も9月のW杯予選(1-1)でゴールを決められ手痛い目にあった。11月に控える予選最終戦のオランダ対ノルウェーは、現地では“オランダ対ハーランド”というテーマで盛り上がるだろう。(筆者注:10月22日の報道によるとハーランドは再び負傷により戦線離脱し、アヤックスとのホームゲームは不出場となる見込み。オランダ戦も間に合うかどうかは不明に)

 ノルウェーとの大決戦を前に、アヤックスはオランダサッカー界を代表してドルトムントのエース、ハーランドを封じなければならない。敵はブンデスリーガ2位という強豪だ。攻撃サッカーをフィロソフィにするアヤックスとはいえ、まずはドルトムントの良さを消す慎重なサッカーを選択する手もあった。

試合前に整列するアヤックスとドルトムントの選手たち

試合前の選択。ベルフハウスか?クラーセンか?

 こうした背景から「ドルトムント戦のアヤックスは、インサイドMFの1枠にベルフハウスとクラーセンのどちらを抜擢するのか?」という議論が、オランダでは起こっていた。

 クラーセンはボックス・トゥー・ボックスの能力に秀で、しかもトップスピードを出していてもボールさばきが安定しているプレーヤーだ。「先制ゴールのクラーセン」という異名を持つほど、ゴールでチームに勢いを与える選手でもある。現地では「オランダ代表のルイ・ファン・ハール監督は真っ先に“デイビー・クラーセン”の名前をメンバー表に記す」と言われている。

 一方、ベルフハウスは『フェイエノールトの王様』として君臨した実績を持つレフティーのファンタジスタであり、オランダリーグ界屈指の得点・アシスト能力を持ったアタッカーだ。プレスをサボることもあるが、それが逆に“前残り”という形となって相手に脅威を与える効果もある。

前節のベシクタシュ戦では1ゴール1アシストを記録していたベルフハウス

 つまり、クラーセンが先発すればドルトムントの良さを消すことから試合に入り、ベルフハウスがスタメンに名を連ねれば自らの良さを存分に引き出す意図を持つことがわかる。アヤックスの指揮官、テン・ハーフがメンバー表に書いたのは“スティーブン・ベルフハウス”の名前だった。

 「2人のうち、どちらを先発に起用するか。それは難しい選択だった。我われがもしボールを保持していれば、相手は得点することができない。ボールを持つことで、相手のストライカーをピッチから消し去ることもできる。ドルトムントの強みはFWとMFだが、DFに欠点がある。我われは攻めることで、そこを突く」(キックオフ前のテン・ハーフ監督)

 指揮官は「攻撃は最高の守備」をクラブの是とするアヤックスらしい戦い方を選んだのだ。それは見事に功を奏して、アヤックスは4-0で勝った。ドルトムントの守備陣は自信を喪失し、4バックのうち3人がベンチに退く結末を迎えた。

ドルトムントの変則システムへのアジャスト

 立ち上がりの8分半はドルトムントのペースだった。ドルトムントは[4-4-2](=中盤ダイヤモンド型)と[4-3-2-1]を併用しながら、[4-3-3]のアヤックスに対して中盤で数的優位を作った。この日、左SBを務めたブリントは、ドルトムント戦の序盤をこう振り返る。……

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アヤックス戦術文化

Profile

中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。