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スペイン戦の後悔。敗者・クロアチア側から見た7つの「タラレバ」

2021.07.01

スペインは強かったけれど……クロアチアを追い続けるジャーナリスト長束恭行氏には、どうしても言っておきたいモヤモヤが残っている。「もし○○だったら勝てたかもしれなかった」。7つの「タラレバ」で振り返るEUROラウンド16屈指の大激闘の舞台裏――。

 世界は「タラレバ」にあふれている。「もしあんなことがあったら」「こうしていれば」とパラレルワールドを仮想しては、結局のところ現実に戻って過去を悔やむことは日常茶飯事だ。データ分析が革新的に発展し、ディテールを詰めるだけ詰めて不確定要素を減らしてきたサッカーの世界でもそんなタラレバは尽きることがない。ある人はそれを「勝負の綾」と呼ぶかもしれないし、単なる言い訳に捉える人もいるだろう。

 EURO2020のラウンド16でスペインを相手に1-3から追いつき、延長の末に力尽きたクロアチア。ロシアW杯の再現とばかり最後まで諦めずに立ち向かった姿勢は称賛に値するが、あらゆる後悔が残る試合だった。先制点をプレゼントした上、内容でも凌駕したスペイン側から見ればすべてが戯言に聞こえるかもしれないが、「もし○○だったら勝てたかもしれなかった」というクロアチア側の意見を列挙してみたい。

仮定①もしイバン・ペリシッチがワクチンを打っていたら

 クロアチアのキャンプ地で激震が走ったのはスペイン戦の2日前だった。体調不良を訴えて練習参加を取りやめたペリシッチのコロナ陽性が発覚。10日間の自主隔離となり、スペイン戦の出場は不可能になった。グループステージではチーム総得点の75%に関与する2ゴール1アシストを記録。チーム2番目のベテランが不調の攻撃陣を牽引していただけにクロアチア陣営のショックは大きかった。

 開幕前にクロアチアサッカー協会が「大部分の選手はワクチン接種を済ませている。接種していない選手はすでにコロナを克服している」と発表。陰謀論者のデイビッド・アイクを支持するデヤン・ロブレンでさえもワクチン接種を済ませており、誰もが抗体を持っているものと信じられていた。それだけにペリシッチのコロナ感染のニュースが報じられた当初は疑問符がつけられたが、父親が「イバンはワクチン接種しなかった」と証言。個人情報保護の観点で個人名は伏せられたものの、サッカー協会は「代表団の55人中6人がワクチン接種をしていない、もしくはコロナ感染履歴がない」という事実を明らかにした。ペリシッチはInstagramで「今日は気分が良くなってはいるが、明日の試合でクロアチアを助けることができないことはとても悲しい」と不出場を嘆いた。

仮定②もしアンテ・レビッチを起用していなかったら

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EURO2020クロアチア代表

Profile

長束 恭行

1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。