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指導者育成と学び合いの場づくり。関西で独自の取り組みを進める若き挑戦者

2021.06.23

2018年5月に創設されたフットボリスタのオンラインサロンフットボリスタ・ラボ」。国外のプロクラブで指導経験を持つコーチに部活動顧問といった指導者から、サッカーを生業にこそしていないものの人一倍の情熱を注いでいる社会人大学生、現役高校生まで、様々なバックグラウンドを持つメンバーたちが日々、サッカーについて学び合い交流を深めている。この連載では、そんなバラエティに富んだラボメンの素顔とラボ内での活動、“革命”の模様を紹介していく。

今回は、金光大阪高等学校サッカー部のコーチを務めながら、Football Expert Project(FEP)の代表として指導者の育成や学び合いの場作りを行っている、大井拓己さん。大学生の時に団体を立ち上げ、精力的に活動している彼に、現在の活動内容や今後の展望について聞いてみた。

※『フットボリスタ第82号』より掲載。

大学生で指導者を志し、団体立ち上げへ


──まずは自己紹介からお願いします。

 「現在26歳で、普段は大阪府の金光大阪高等学校のサッカー部で外部コーチとして活動しています。それと並行して約6年前からFootball Expert Project(以下FEP)という団体を立ち上げて、フットボリスタでお馴染みの林舞輝さん平野将弘さんなどをゲストに迎えて講演会をやってもらったり、グラスルーツレベルのサッカー指導者の人たちがお互いに学び合えるような環境を作る活動もしています」


──6年前ということは20歳からですよね。すごいですね。そもそもサッカーとの出会いはいつだったんですか?

 「小学1年生ですね。家の近くのクラブで始めました。中学時代は大阪市内のクラブチームに通って、関西大会のベスト16まで行きました。そこでいくつか推薦で声をかけていただいて、最終的に金光大阪高校を選びました。高校時代は今川崎フロンターレの守田(英正)がチームメイトだったんですけど、そういういい選手たちに恵まれて、近畿大会は優勝しました」

高校時代は日本代表MF守田とプレーしていたという大井さん


──現役でプレーされていたのは高校までだったんですか?

 「医療系の大学に進学したんですが、一応サッカー部が関西学生サッカーリーグに登録していて、関西3部リーグで大学4年の12月頃までプレーしていました。ただ、大学のチームは基本的に平日3日しかトレーニングをしていなかったので、空いてる日を活用して母校の金光大阪でトレーナーとしての活動を始めました。ただ、大学3年頃から気持ちが変わっていきました。僕は現役時代からケガが多かったこともあって、肉離れや捻挫などのスポーツ障害によってプレーができなくなってしまう選手をできる限り減らして、なおかつパフォーマンスの向上にも関われるようなトレーナーになりたいと思っていたんです。ですが、実際に現場に立ってみると、一人ひとりの選手にアプローチすることはできても、チーム全体のトレーニングの頻度や時間、強度にアプローチしていくのは正直難しいと感じました。それならトレーナーとしてではなく指導者として現場に立った方が自分のやりたいことが実現できる可能性が高いのではないかと考えて、大学3年の時から指導者としての活動を始めました」


──そして同時にFEPを立ち上げたということなんですね。

 「そうですね。トレーナーとしては大学で勉強したり学外でのセミナーに参加したりして知識を持っていたんですが、指導者としては今のままでは厳しいと感じました。なのでいろいろな人から学びを得て、それぞれの現場に還元していけるような環境作りができれば、僕自身はもちろん、そこに関わる人たちにとってもプラスになるんじゃないかと考えて、立ち上げました。当初は僕1人で、そこから勉強会を開催したりして、いろんな人たちが来てくださるようになって。ただ立ち上げから2年ぐらいは正直そんなに大きな活動はできなくて、社会人になってクラブの方でも1つのカテゴリーをメインで担当させてもらえるようになったことで、さらにいろんな人たちと繋がりが生まれて、FEPも大きな規模のセミナーを開催できるようになりました。ピッチ内外がリンクしてきたのがこの2、3年ぐらいですね」


──どういうふうに指導者同士の繋がりが広がっていったのですか?

 「最初は、スペインのバスク地方で10年くらい指導されている岡崎篤さんのセミナーに僕が参加したのがきっかけで、岡崎さんは大阪出身なので、そんな活動を大阪でやるんだったらいろんな人を紹介するよということでご協力いただき、少しずつ講師の方を呼べるようになっていきました」

より大きなサッカーの場作りに向けて


──林舞輝さんの講習会もFEPで開催されていましたが、どういう経緯だったんですか?

 「あれは僕が逆にオファーをいただいたんですよ。もともとTwitterのフォロワーが少ない時からお互いにフォローし合っていたんですけど、彼が帰国するとなった時に、向こうから一緒にセミナーをやりませんかと連絡が来て。正直びっくりしたんですけど、彼も当時急に有名になってセミナーのオファーがいろいろなところから来る中で、お互いに昔からフォローしていて、かつそういう活動をずっとやっている僕にだったら信頼して任せられると思ったということで、FEPが主催させていただくことになりました」


──大阪だけでなく東京でもやられていましたし、結構大規模でしたよね。

 「東京と大阪で合計300人ぐらいですかね。あのセミナーがきっかけでFEP のこともいろんな方に知ってもらえて、この2、3年でさらに規模が大きくなって、今はFootball univ.というサッカー指導者を育成することを目的としたコーチングスクールを運営させていただいています。そちらの方でも今30人くらいの受講生の方に参加していただいています。単発のセミナーは新しい知識を得るにはいいんですけど、きちんと理解してそれぞれの現場に生かしていくとなると難しいなと思っていたので、1年間きちんと長い期間を取って学ぶ機会を作りたいと考えて、2020年の4月からスタートしました。今はオンラインで講義を行っています」


──講義は具体的にはどういう内容なんですか?

 「基本的には4つの分野に分かれています。1つ目がカタルーニャ州の街クラブでジュニア年代の強化部長を務められた経験のある中村貴大さんに講師を務めていただき、スペインのライセンスコースをベースにした指導者養成コースの『Entrenador』。2つ目がJクラブでも活躍された清水智士さんに講師を務めていただいているアナリスト養成講座の『ANALYs』。3つ目がオリンピック選手やJリーガーのメンタルサポートを担当されている筒井香さんに講師を担当していただいているスポーツ心理学コースの『MeNT』。最後が僕と山岡俊也さんというトレーナーの方の2人体制で、ケガのリスクを最小限に抑えつつ、選手とチームのパフォーマンスを最大化させることを目的としたフィジカルコースの『PHYSiCO』。この4つのコースでそれぞれ月1回講義があります」


──今すごく順調に活動を進められていると思うんですが、今後こういうことをやりたいとかはありますか?

 「今後の展望としては、僕の地元である大阪府池田市に新しくサッカークラブを立ち上げたいと考えています。クラブを持つことで、選手の育成はもちろん関わる指導者の方たちも含めて育成して、Jクラブの下部組織やプロクラブにステップアップできるような環境を、Football univ.とうまくリンクさせながら整えていきたいと考えています」


──クラブとしてはどのくらいの年代なんですかね?

 「最初はジュニアユースからスタートさせる予定で、そこから上の年代に伸ばしていきたいと思っています。3、4年前からクラブを作るための活動はスタートしているのですが、グラウンドの確保が難しくて。特に僕の住んでいる池田市は公共のグラウンドが少ないんですね。なので今は行政や教育機関、教育委員会にアプローチして、学校のグラウンドを使わせてもらえないか交渉しています」


──クラブ運営のコンセプトは何でしょう?

 「今思い描いている方向性として、できるだけ家庭や保護者に対する負担を少なくしたいなと。今高校年代に関わる中で、月々の会費はもちろん、夏とか冬の長期休みの遠征費だったりとか、突然やってくる大きい出費が家庭にとってすごく負担になるというのを感じています。なのでせめて会費以外の変動費に関しては、クラブの理念や活動に賛同していただけるスポンサーを獲得し、そこからのお金で賄えるような仕組み作りを目指しています」


──最後にフットボリスタ・ラボについてもお聞かせください。ラボでの活動はいかがですか?

 「毎回西軍での飲み会やフットサルのイベントをやる時には基本的に参加させてもらってますが、リアルでも繋がりができるのはめちゃくちゃいい環境だなと感じています。あと最近はオンラインのセミナーやイベントにも参加させていただいて、関東のメンバーともかなり仲良くさせていただいています。そういう意味では、僕の中では居心地の良い環境だなという印象です」


──ラボはリアルな繋がりが刺激になりますよね。いろんな方がいて、今日も大井さんのお話を聞いて、僕も頑張らないとなと思いましたよ。

 「特に僕の中での記憶に残っているのが、フットサルのノルウェー代表監督を日本に招いて講演会を開催した時に宣伝をフットボリスタさんにご協力いただいて、オンラインとオフラインで合計40人ぐらい参加していただいたことです。あの時、協力がなければ確実に大赤字だったので、すごいありがたかったです。あのイベント、運営もラボメンバーがかなり手伝ってくれて非常に助かりました。あとわっきーさん(粉河高校サッカー部監督・脇真一郎さん)とは、粉河高校と金光大阪で練習試合をさせてもらいました。その模様をラボ内でミニイベント化したり、平岡さんにも1年生カテゴリーの関西リーグで主審をしていただいてるんですよ。自分のサッカーの現場に繋がる人との出会いがあるのがラボに入って良かったと感じているところです」


──ラボメン同士の交流が広がっている話を聞くとうれしいです。ぜひこれからもよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

フットボリスタ・ラボとは?

フットボリスタ主催のコミュニティ。目的は2つ。1つは編集部、プロの書き手、読者が垣根なく議論できる「サロン空間を作ること」、もう1つはそこで生まれた知見で「新しい発想のコンテンツを作ること」。日常的な意見交換はもちろん、ゲストを招いてのラボメン限定リアルイベント開催などを通して海外と日本、ネット空間と現場、サッカー村と他分野の専門家――断絶している2つを繋ぐ架け橋を目指しています。

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Photo: Getty Images, Photo AC

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フットボリスタ・ラボ育成

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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