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W杯南米予選へ、そして東京五輪へ。セレソンが発したメッセージ

2020.03.15

  3月6日、リオデジャネイロにあるブラジルサッカー連盟本部で、2つの招集メンバー発表会見が行われた。ワールドカップ南米予選開幕に向けたフル代表と、東京五輪出場枠を決めた後、初めての招集をかけ、本大会に向けた準備を始めるU-23代表だ。

試合中止もファンの熱量は維持

 新型コロナウイルス流行の影響により、結果的に3月下旬に行われるはずだったU-23代表の親善試合はキャンセルされ、南米予選も延期となった。ただ、ホームとなるレシフェでの南米予選開幕戦の入場券は、発売わずか1日で約4万枚が売れ、期待の高さがうかがえた。

 また、フル代表は昨年7月のコパ・アメリカ優勝以降、親善試合のみだったため、8カ月ぶりの公式戦となるこの招集メンバー発表前は国内でも大いに盛り上がった。テレビではメンバー予想やサッカーコメンテーターが考える理想のセレソンが披露され、インターネット上では国民が自分たちの好きな選手の招集を請うためのムーブメントを起こした。

 称賛しようが、時には批判しようが、国民はやはりセレソンに燃える。会見の際、その盛り上がりについて聞くと、チッチ監督は「セレソンに対するブラジルの熱さ、国民の愛情だよ。特に公式大会ではそのムーブメントも大きくなる。自分が応援するクラブの選手をセレソンで見たがっているのも感じる。普段は海外にいる選手たちのプレーを間近で見たり、インタビューを見たりする機会も増える。そうしたセレソンを取り巻く情熱を、私はとても光栄に思うよ」とポジティブに受け止めていた。

「セレソンを取り巻く情熱を光栄に思う」とチッチ監督

ステップアップしたブルーノ・ギマランイス

 話題の焦点は、従来のメンバーから誰が生き残り、誰が公式戦初招集となるか。また、昨年からの絶好調を維持するフラメンゴから何人が選ばれるか。フル代表と五輪代表の両方で期待される選手たちはどちらに招集されるのか、というあたりだった。

 中でも関心を集めたのは、五輪出場枠獲得の原動力の1人であり、今回初めてフル代表入りしたブルーノ・ギマランイス。この1月にリヨンへ移籍したばかりのMFだ。

 アトレチコ・パラナエンセのメンバーとして、昨年のJリーグYBCルヴァンカップ/CONMEBOLスダメリカーナ王者決定戦のために来日した彼は、セカンド・ボランチをベースとするユーティリティプレーヤーだ。元ブラジル代表で、横浜フリューゲルスでもプレーし、現在はコメンテーターを務めるジーニョが「ブラジルサッカーの大きな発見だ」と以前から絶賛していた。

ブルーノ・ギマランイスはU-23からフル代表にステップアップした

 ブルーノ本人にそれを伝えるとその称賛を大いに喜び、「攻守でプレーできるし、ボールに触れるのが好き。ペナルティエリアに入ってゴールも決められる」と自身のプレーを説明してくれた。「僕は落ち着いた人間だし、ピッチの中でも正確に判断するために冷静でいようとしている」と言う通り、急速に注目を集める存在となっても地に足が着いている。五輪予選ではキャプテンを務め、チームの精神的な支柱にもなった。新天地リヨンでも好スタートを切っている。

 そのリヨンと契約する際、五輪出場を条件に盛り込むほど、代表として戦うことを重視するブルーノが、今回はフル代表に招集された。U-23代表監督のアンドレ・ジャルジーニも「我々はブルーノを失ったのではない。我々の大きな目標は選手のフル代表入りに貢献することなのだから、いわば一つの勝利だ」と、彼の新たな挑戦を応援している。

 そのU-23にも、レアル・マドリーのビニシウス・ジュニオールやレイニエルなど、強力なメンバーが名を連ねた。また、五輪予選で見えた弱点克服に向けて守備陣を大幅に入れ替えるなど、改善に向けた意欲的な招集だった。

「ブラジルは日本へ向かう」

 この会見の際、ジャルジーニ監督が日本へのメッセージを送ってくれた。

「五輪出場は、ブラジルの伝統からしても我われの大きな目標だった。いまや簡単な試合なんて存在しないし、ここ南米では競争が激しい。すべての試合が全身全霊を懸けた戦いとなり、我々も非常に多くを学びながら五輪予選を戦った」

 「そして今、日本の方々へは『ブラジルは日本に向かう』と伝えたい。我われが持つすべての強さ、選手たちのすべてのクオリティとともに。そして、このユニフォームが持つすべての歴史とともに。日本の方々に素晴らしいサッカーを見せたいと思っているよ」

「我われは日本に向かう」と宣言したアンドレ・ジャルジーニU-23代表監督

 開幕が待ち望まれる南米予選に向けて、国民の期待をもう一度背負い直したチッチと、東京五輪に向けて力強い宣言をするジャルジーニ。ブラジルサッカーも新型コロナウイルス流行によって異常事態となっているが、この2人の指揮官が腕を振るう2つの代表の活動を、国民は待ち焦がれている。


Photos: Kiyomi Fujiwara, Getty Images

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。