NEWS

日本戦直前…ブラジルメディアが語るブラジル代表とチッチ監督の今

2022.06.06

 ワールドカップカタール大会を5カ月後に控える今、日本との親善試合に出発する前のリオデジャネイロで、現時点のブラジル代表とチッチ監督の仕事について、ブラジル人ジャーナリストたちに意見を聞いた。

 日頃から代表取材を担当している面々に質問したのだが、結果を出している以上、概ね好意的に捉えている。そして全員に一致している意見が、やはり数字に表れている結果の素晴らしさだ。

ブラジル代表とチッチ監督の仕事ぶりについて、メディア関係者が評価している(Photo: Lucas Figueiredo/CBF)

「得失点差が印象的」

 『TVグローボ』のリポーター、エジソン・ビアナ氏は「数字を見れば、チッチの仕事は議論の余地がない」と言い切る。

 「チッチはポジティブな記録を塗り替え続けているし、2016年からの6年間で見ても、敗戦は非常に少ない。もちろんその敗戦は、W杯ロシア大会でのベルギー戦のように、僕らブラジル人にとって非常に大きな衝撃となったけどね。 ただ、ブラジル代表の仕事は時計の針のように正確に機能している。今回は南米予選の記録も塗り替えた。これまでの記録である2002年南米予選のアルゼンチンの勝ち点43を上回り、45をマークしたんだ。そんなふうに、チッチの仕事はすべての面において非常に良いものでなければ出せない結果を出している」

「チッチはポジティブな記録を塗り替え続けている」と語るエジソン・ビアナ氏(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 スポーツ専門チャンネル『SPORTV』リポーターのブルーノ・コルテス氏の着目点はここだ。

 「得失点差が印象的なんだ。南米予選だけで見ても、17試合やって総得点数は40と非常に多く、総失点数はわずか5と非常に少ない。予選2位のアルゼンチンでも得失点差は19だから、ブラジルの好調ぶりがわかるというものだ。ブラジルは特に南米予選終盤、非常に良い試合をしたよね」

「得失点差が印象的」とブルーノ・コルテス氏(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 『TVバンデイランチス』のリポーター、フラビオ・アメンドーラ氏もこう説明する。

 「ブラジル代表監督の仕事については、サポーターや我われメディアといった外からの要求やプレッシャーが非常に大きい。しかし数字に表れている以上、それがプレッシャーを静めることになり、彼自身の仕事もやりやすくなっている」

フラビオ・アメンドーラ氏は「数字がプレッシャーを沈めている」と分析(Photo: Kiyomi Fujiwara)

「ミッションはこのレベルを維持すること」

 ブラジル代表を取材し続け、身近に接しているからこそ感じることもある。『TVグローボ』プロデューサーのマルシオ・ヤナカ氏はこう見ている。

 「技術委員会を見ると、スタッフが非常に結束しているんだ。僕らは時々CBF(ブラジルサッカー連盟)に行って話をするんだけど、育成年代代表の全カテゴリーのスタッフも含めて密にやりとりをし、真剣に仕事をしている。チッチの仕事がこれほどに素晴らしいんだから、それがW杯6度目の優勝となって報われることを願っているよ」

マルシオ・ヤナカ氏は全スタッフの結束力に着目している(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 『TVグローボ』リポーター、ギリェルメ・ペレイラ氏の印象はこうだ。

 「南米予選最後の2節で特に強く感じたのが、ブラジル代表とサポーターとの繋がりがさらに強くなったという事だ。チリに4-0で大勝した試合の後のマラカナンでの、あのサポーターの愛情だよ。選手たちがそれを感じて幸せに思っていることが伝わってきた。そして、選手も観客もみんなが、あの瞬間に感動していた」

 もちろん課題もある。ギリェルメはこう考える。

 「今後の彼らのミッションは、このレベルを維持することだ。W杯は明日じゃない。まだ5カ月あるから、今がピークというわけにはいかない。だから、チッチと技術委員会の仕事は、このチームのレベルをあらゆる面で維持し……というより、ますます上に向かっていくことだ」

ギリェルメ・ペレイラ氏はチームレベルの維持を課題に挙げた(Photo: Kiyomi Fujiwara)

「彼らも強豪とテストできていない」

 いつも出る話だが、解決しようがない課題として、ヨーロッパの代表チームと長らく対戦できていないことが挙げられる。UEFAネーションズリーグが始まったことで、マッチメイクのタイミングがなくなったのだ。『TVブラジル』のリポーター、フラビオ・ビニッキ氏は語る。

 「このチームの課題は、この強さを、ヨーロッパの代表と対戦した時にも発揮することだ。ブラジル代表の目標は南米トップじゃない、W杯優勝なんだから。チッチはヨーロッパの強豪と対戦するためのチームを組み立てることがまだできていない。ロシア大会にも万全の状態で臨んだが、ベルギーと対戦し、良い試合ができずに、敗退してしまった。あの時、起こったことを改善する機会がなかった以上、今回のW杯でも同じことが起こり得る。南米トップということが、どこまで誇れるものだろうか。南米予選の首位ならヨーロッパのチームを上回ることができるのか。私は、それを疑問に思っている」

 これについては、日本戦のために来日しているチームの中から、FWハフィーニャ(リーズ)がはっきりと自分の意見を言っていた。

 「僕らがヨーロッパの強豪と対戦できないように、彼らも僕らとは戦えていない。僕らが強豪とテストできていないというなら、彼らも強豪とテストできていないんだ。ブラジル代表には、ヨーロッパの高いレベルのリーグでプレーしている選手が多い。それが彼らのプレースタイルを知る助けにもなる。だから、どこと対戦できていなかろうが、僕らは良い準備をしつつあると思う」

 そういうことも含め、前出のエジソン・ビアナ氏はこう締めくくっている。

 「ブラジルはいつでも要求が厳しい。チッチ自身が先日も言っていた通り、彼の仕事を評価するのはすべてが終わった後、つまりW杯が終わった後だ。現時点での彼の勝率は79%。素晴らしいよ。だが、残念ながらブラジルのサポーターは残酷でさえあるから、もしW杯で優勝しなかったら、その価値もなくなる。とは言え、そういうすべての意見があったとしても、私は彼が非常に良い仕事をしていると思っているよ」

 そのW杯優勝の行方はどう予想されているのか。YouTubeサイト『Fui Clear???』のエドゥアルド・センブラーノ氏にまとめてもらった。

 「彼はやるべきことを巧みにオーガナイズできる監督であり、世界のサッカーの“今”を熱心に研究しているだ。僕はチッチのファンだと言ってもいい。ブラジルはW杯に非常に強い状態で行くと思う。ただ、W杯に優勝候補はないんだ。どこかのチームが他よりもずっと良い、というようなことはない。だから何が起こるかわからないし、どこが優勝するかは終わった後にしかわからない」

 「チッチは『W杯で優勝しようがしまいが、大会が終わった後はブラジル代表の指揮はもう執らない』と言っているよね。でも、僕はブラジルが優勝した場合は考え直すかもしれない、いや、考え直して欲しいとまで思っている。彼にとって2度目となるW杯を終えた時には、ブラジルを指揮する上で、さらに十分な準備ができる監督になっているはずだからね」

エドゥアルド・センブラーノ氏は「W杯で優勝したら続投してほしい」とチッチにエール(Photo: Kiyomi Fujiwara)


Photos: Kiyomi Fujiwara, Lucas Figueiredo/CBF

プレミア会員になってもっとfootballistaを楽しもう!

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

電子版雑誌が読み放題

会員限定記事が読める

「footballista」最新号

フットボリスタ 2022年9月号 Issue092

11、12月開催のW杯を控えた異例のシーズン。カタールをめぐる戦いの始まり【特集】ワールドカップイヤーの60人の要注意人物 【特集Ⅱ】ワールドカップから学ぶサッカーと社会

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

チッチハフィーニャブラジル代表日本代表

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。