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150周年、EL制覇目指すレンジャーズ。DFの得点源と“地上最高”の選手が魅せる

2022.05.17

 スコットランドの名門レンジャーズがヨーロッパの頂点を目指している。

 国内リーグでは古橋亨梧、前田大然、旗手怜央、井手口陽介の日本人4名を擁するセルティックにリーグ連覇を阻まれたレンジャーズだが、UEFAヨーロッパリーグでは順調に勝ち上がっており、5月18日にスペインのセビージャでファイナルを戦う。そこで鎌田大地や長谷部誠を擁するフランクフルトに勝つことができれば、“記念イヤー”をビッグタイトルで飾ることができるのだ。

DFながら得点ランク首位のタバーニア

 1872年に設立されたレンジャーズは、今年が創立150周年の記念イヤー。さらに今年は、クラブ史上唯一の欧州タイトルである1971-72シーズンのカップウィナーズカップ優勝から50年の節目の年でもある。そんな特別な年に、ヨーロッパ第二の大会で頂点に立とうとしている。

 そんなチームを牽引するのは、イングランドのクラブで一度は挫折を味わった2人のイングランド人プレーヤーである。1人目は主将を務める右SBジェイムズ・タバーニア(30歳)だ。ニューカッスルでプロキャリアをスタートさせたタバーニアは、同クラブでは定位置を確保できず、イングランド5部へ貸し出されるなど6度のローン移籍を繰り返した末に退団。その後、ウィガンを経て2015年にレンジャーズに加入した。

 すると、レンジャーズではデビュー戦で直接FKを決めるなど得点力を開花させることに。右SBながら7年間で公式戦345試合に出場して83ゴール107アシスト。今季もゴールを量産しており、ここまで公式戦18ゴールの大活躍を見せている。

 とりわけELでは抜群の決定力を誇っており、13試合で7ゴール。5ゴールの鎌田などを抑え、DFながら得点ランク首位に立っているのだ。

 もし、このまま得点王に輝けば、DFとしてはEL史上初の快挙となる。チーロ・インモービレ、オリビエ・ジルー、エディン・ジェコ、ロメル・ルカク、ラダメル・ファルカオなど各国の名ストライカーが名を連ねる歴代得点王に仲間入りするのだ。欧州カップ戦で見ても、「DFの得点王」となれば1993-94シーズンのUEFAチャンピオンズリーグのロナルド・クーマン以来のことになる。

DFながらELで7ゴールを挙げているジェイムズ・タバーニア

後半戦から定着したランドストラム

 タバーニアとともにチームに欠かせない存在となっているのが、中盤でタクトを振るうMFジョン・ランドストラム(28歳)だ。エバートンの下部組織出身の元U-20イングランド代表は、トップチームで一度も出場機会を与えられず、下部リーグへのローン移籍を繰り返した後、4部のオックスフォード・ユナイテッドへ完全移籍した。

 そこで経験を積んでから、シェフィールド・ユナイテッドでようやくプレミアリーグの舞台まで上り詰めた。しかし昨季、降格の憂き目に遭い、イングランドを離れてスコットランドでの挑戦を選んだ。

 タバーニアとは違い、ランドストラムはすぐにレンジャーズで結果を出せたわけではない。今季の前半戦は控えに甘んじることも多く、今年1月には退団の噂が流れたほどだ。

 それがシーズン後半戦に入ると、スティーブン・ジェラード前監督の後任として11月からチームを率いるジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト監督の下でチームの主軸に定着。ドイツの強豪RBライプツィヒと対戦したEL準決勝のセカンドレグではチームを決勝に導くゴールを奪い、今ではサポーターから絶大な支持を得ているのだ。

 今月8日に行われたリーグ戦では、試合後に同選手がファンへ挨拶するシーンがカメラに映し出されると、現地放送局がそこに驚きのテロップを入れた。「4番 ジョン・ランドストラム」と表記した下に「レンジャーズのMF」と肩書きを入れるのではなく「地球上で最高」と記したのだ。

 これは彼のチャントに由来する。ファイナル進出を決めたライプツィヒ戦の試合後、サポーターは殊勲の活躍を見せたランドストラムを称えて彼のチャントを大合唱した。1987年に発表されたベリンダ・カーライルの名曲『Heaven Is A Place On Earth(ヘブン・イズ・ア・プレイス・オン・アース)』に乗せて、こう歌ったのである。

 「ウ~、ベイビー。価値を知っているかい? ランドストラムは地球上で最高さ。熟練のスカウザーこそ、俺たちに必要なもの。彼がヨーロッパリーグで優勝させてくれるぜ♪」

 果たして、レンジャーズはクラブ設立150周年の記念イヤーに欧州のタイトルを獲得できるのか。そしてランドストラムは地球上で最高の選手になれるのだろうか。5月18日のEL決勝に注目したい。


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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