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古橋が躍動するセルティック。“昨年のクリスマス”の失恋を乗り越えるために

2021.11.30

 日本代表のFW古橋亨梧が目覚ましい活躍を見せるスコットランドの名門セルティックが、特別なクリスマスを迎えようとしている。彼らに素敵なクリスマスをプレゼントするのは、古橋であり、今年6月まで横浜F・マリノスを率いていたアンジェ・ポステコグルー監督だ。

ファンの指示を勝ち取った指揮官

 今季からセルティックを率いるオーストラリア人指揮官は、シーズン序盤に苦しい戦いが続き、UEFAチャンピオンズリーグ予備戦2回戦ではデンマークのミッティランに敗れてUEFAヨーロッパリーグに回ることになった。そしてリーグ戦では開幕6試合で3敗を喫し、過去23年間で最悪のスタートを切ることに。とりわけ結果が出なかったアウェイゲームの戦い方に関して、一部で批判を浴びたのだ。

 しかし、第7節以降はリーグ戦で無敗を維持しており、最近7試合で6勝1分けと絶好調。ELではノックアウトステージ進出を逃したが、それでもリーグカップで決勝に進んでおり、ポステコグルーは見事にファンの支持を勝ち取ってみせたのだ。

 11月中旬に開かれた年次総会では、昨季の不甲斐ない結果に不満を抱くサポーターがクラブ幹部に怒りをぶつける中、ポステコグルー監督だけは温かい拍手で迎えられたそうだ。中には「俺たちのチームを取り戻してくれてありがとう!」と声をかけるファンもいたという。確かにポステコグルーは、セルティックをどん底から救ったのである。

セルティックファンからの支持を勝ち取ったポステコグルー監督

和やかなクリスマス動画

 昨季、セルティックはリーグ10連覇を宿敵レンジャーズに阻まれた。それどころか、4季連続で国内3冠を果たしていたチームがまさかの無冠に終わったのだ。思い返すと、昨年のクリスマスは嫌な記憶しかない。レンジャーズに独走を許し、消化試合数が違ったためクラブOBは「レンジャーズのリードはフェイクニュースだ」と強がったものの、シーズンの折り返し地点で16ポイントもの差を付けられていたのだ。

 しかし、今年のクリスマスは違う。首位レンジャーズにリードを許しているとはいえ、4ポイント差の射程圏内。宿敵はスティーブン・ジェラード監督を引き抜かれており、彼らに追いつくのも時間の問題かもしれない。だからこそ、先日クラブTVが制作したクリスマス動画は好評だった。

 指揮官や古橋などの主力選手が出演した和やかな動画は、チームの好ムードを物語っていた。そして、その動画に流れる歌を担当したのは、セルティックファンで知られる女性歌手のエディ・リーダーだ。

 歌った曲は、日本では『蛍の光』の原曲として知られる『オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne)』である。スコットランドの定番の民謡だが、今年は特別な意味を持つ。先日、セルティックの英雄であり、1967年のチャンピオンズカップ制覇に貢献した“リスボン・ライオンズ”の一員であるバーティ・オールド(Bertie Auld)が他界したのだ。

 英雄の名前が入った民謡は、まさに今年のクリスマスに相応しい一曲なのだ。クリスマスの定番ソングはそれだけではない。夏にベンフィカからローン契約で加入したポルトガル人FWジョタは、ここまで公式戦8ゴール6アシストの大活躍で、古橋とともに攻撃を牽引している。ファンは同選手の完全移籍を切望しており、マライア・キャリーの『恋人たちのクリスマス』の歌詞を文字って「クリスマスに欲しいのはジョタだけ!」とラブコールを送っているという。

“ポステコグルー”に捧げる♪

 さらに、この時期のセルティックの試合で聞かれるチャントといえば『ラスト・クリスマス』(ワム!)である。毎年のように聞かれる替え歌のチャントだが、今シーズンは何か特別な意味があるように思う。サポーターは名曲のメロディに乗せて「去年のクリスマス、私はあなたに心を捧げた。でも、あなたは翌日にそれを捨てた。今年は泣かないように“ポステコグルー”に捧げる♪」と歌うのだ。

 オリジナル歌詞の「特別な誰か」の部分を「ポステコグルー」に替えただけだが、昨年のクリスマスの屈辱を考えると、単なる替え歌には聞こえない。その替え歌について、すっかりファンから愛されている指揮官は「ポステコグルーなんて(長い)名前を歌詞に入れるのは最大の困難だったはず!」と冗談を口にして喜んだ。

 どうやらセルティックにとって、今年の冬は特別なクリスマスになりそうだ。

 ちなみに、FWジョタは『ワム!』の元メンバーであるジョージ・マイケルにそっくりだとして話題になっているとか……。

「ジョージ・マイケル似」と評判のジョタ


Photos: Getty Images

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アンジェ・ポステコグルージョタスティーブン・ジェラードセルティックレンジャーズ古橋亨梧

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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