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連敗のウルグアイを襲ったさらなる衝撃…タバレス監督退任騒動の真相

2021.10.24

 10月に開催されたW杯南米予選でアルゼンチンとブラジルに完敗を喫したウルグアイ。その後、同国の代表監督を務めるオスカル・タバレスの退任が大々的に報じられたが、AUF(ウルグアイサッカー協会)のイグナシオ・アロンソ会長が監督と話し合った末に解任を否定。少なくとも予選終了までは任務を続けると告知し、一時は決定したかのように拡散したニュースが撤回される形となった。

後任者の名前まで出たが…

 2006年3月から長期にわたってウルグアイ代表の指揮を担う名将が「戦績不振から解雇された」という一報は、南米のみならず欧州のサッカー界でもビッグニュースとして取り上げられた。

 南米諸国では一般人をはじめメディア関係者までもがタバレス監督のこれまでの功労を称え、感謝の意を表するメッセージをSNSに投稿した他、ウルグアイでは後任者の名前まで報じられるほどの確定情報として流れたが、その一方でウルグアイの著名ジャーナリスト、ロドリゴ・ロマーノはツイッターを通じて「タバレス監督は11月のW杯予選2試合(ホームのアルゼンチン戦とアウェイのボリビア戦)を指揮する」と断言。去就をめぐる情報が錯綜する中、国内ですでに起きていたタバレス監督擁護派とアンチ派の論争がますます激化する結果を招いた。

 解雇が決まったように報じられた発端について、一部ではタバレス解任を望むメディアによるでっち上げではないか、との見方もあったが、エドワルド・ピニョン記者が有力紙『エル・パイス』に寄稿した記事によると、タバレス監督退任の話は「ブラジル戦に同行したAUF役員の口から出たもの」だったという。

 ピニョン記者はその役員の証言として、ブラジル戦で大敗の屈辱を味わった後、ウルグアイ代表チームのロッカールームではいつものように監督からの激励の言葉が聞かれることもなく、指導陣は「打ちのめされた状態」にあったと説明。

 監督と指導スタッフを入れ替える方向で話が進んでいたこと、後任には元U-20ウルグアイ代表監督で現在はブラジルのインテルナシオナルの監督を務めているディエゴ・アギーレが抜擢されたことなどについても、その役員から直々に供述があったと記事内で綴られている。

役員の間で意見の食い違い?

 だが、その後テレビの取材に応じたアロンソ会長によると、タバレス監督との話し合いの場では退任についてまったく言及せず、あくまでもチームの現状と問題点について見直すだけに留まり、W杯予選突破に向けた「監督の確信」を確認したとのこと。

 世間が退任の話題で持ちきりとなる中、ロマーノのように「個人の意見ではなく確かな情報」として冷静に続投を報じる者もいたことから、タバレス監督の去就についてAUF役員の中で意見の食い違いが存在したことは明らかだ。

 ピニョン記者は「内部で話し合いを進める前に一部の役員が個人の見解をメディアに漏らしてしまったことが騒動の原因となった」としているが、AUF関係者がアギーレとコンタクトを取るという早まった行動に出たこと、また一部では、代表OBのディエゴ・ルガーノが監督解任について意見を求められたとの報道もあったことなどについて、元代表選手のディエゴ・フォルランは「タバレス監督ほど我われのサッカー界に貢献した人に対して、非常に無礼なこと」と苦言を呈している。

 アロンソ会長はW杯予選終了までタバレス監督が指揮を続け、予選を突破した場合は本大会でも現状を維持する意思を明らかにしたが、ロマーノは「現時点での解任はないものの、11月の2試合がタバレス監督の今後に大きく影響することは確か」と語っている。


Photo: Getty Images

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Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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