注目クラブのボランチ活用術:バルセロナ
シャビ、シャビ・アロンソといった名手たちが欧州サッカーのトップレベルから去ったここ数年、中盤で華麗にゲームを動かすピッチ上の演出家は明らかに少なくなっている。では実際のところ、各クラブはボランチにどのような選手を起用し、どんな役割を求め、そしてどうチームのプレーモデルに組み込んでいるのか。ケーススタディから最新トレンドを読み解く。
文 工藤 拓
ボールポゼッションとハイプレスを通してライバルを敵陣深くに押し込み続け、攻め手を与えることなくゲームを支配し続ける。攻守が一体となったバルセロナのサッカーをピッチ上で実現する上で、中盤の底に位置するブスケッツが極めて重要な役割を担っている。
バルサのボール支配率がほとんどの試合で60%を超えている理由。それは個々が卓越したテクニックやキープ力を擁しているだけでなく、選手間の距離や位置関係を微調整し続けることで、ボールホルダーが常に複数のパスコースを確保できる緻密なポジションバランスを保っているからだ。その点、ブスケッツは最終ラインと中盤の中継役としてミスなく正確にパスを散らすだけでなく、常にボールホルダーの斜め後方にパスコースを提供するポジショニングを取り続けている。安心してボールを預けられるブスケッツへのパスが保証されているからこそ、バルサはほぼ常にボール周りに数的優位を作り出し、安定したポゼッションを保つことができるのである。
それでも90分間ボールを保持し続けることは不可能なため、ポゼッションが途切れた際には速やかにプレスを仕掛け、できる限り早く、高い位置でボールを奪い返すことが重要になる。その際も鍵となるのがブスケッツのポジショニングだ。攻め上がったインサイドMFやSBが空けたスペースをケアしつつ、前方の選手が追い込んだ先に先回りしてボールを回収する。ボールにアプローチする者がいなければ自ら前に出て縦への素早い展開を阻み、プレスがはまらないと見ればリトリートしてブロック守備に切り替える。彼はそういったあらゆる可能性を念頭に置きつつ、常に2つ、3つ先の展開を予測しながら、ライバルのカウンターに備えたポジショニングを取っているのである。
今季就任したバルベルデは、当初は伝統の[4-3-3]をメインとしていたが、途中からラキティッチやパウリーニョをブスケッツの横に並べるダブルボランチの[4-4-2]へとシフトしてきた。だが、その場合でもブスケッツが担う役割は変わらない。攻守両面で絶妙なポジショニングを取り続ける彼がいるからこそ、バルサは極めて前がかりにプレーしながら攻守のバランスを保つことができているのだ。
■注目クラブのボランチ活用術シリーズ
・ビルドアップからボール奪取まで黙々とこなすリバプールの“6番”
・スパレッティの“レジスタ重視”を体現するインテルの中央ユニット
・基準はプレス強度。相手に応じてアンカーを使い分けるナポリ流
・敵に引かれる…その時、光る判断。守備網を切り裂く“PSGの起点”
・フェルナンジーニョの見逃せない“調整力”こそがシティ進撃の要
・サウールとコケはアトレティコに不可欠な“守備型”司令塔
・カンテ&バカヨコ。チェルシーの破壊者コンビに宿るコンテらしさ
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