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ブスケッツの凄さの言語化。「Disguised pass」とは何か?

2020.10.09

TACTICAL FRONTIER

サッカー戦術の最前線は近年急激なスピードで進化している。インターネットの発達で国境を越えた情報にアクセスできるようになり、指導者のキャリア形成や目指すサッカースタイルに明らかな変化が生まれた。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つのは、どんな未来なのか? すでに世界各国で起こり始めている“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代サッカーの新しい楽しみ方を提案したい。

 アリーゴ・サッキによって発展したゾーンディフェンスが現代フットボールの標準装備となっていく過程で、守備戦術は緊密化の一途をたどっている。シンプルなパスでは、守備ブロックを破ることは難しい。アトレティコ・マドリーのように最適化された[4-4-2]ゾーンは左右に揺さぶっても選手間の距離を保ち、相手の縦パスを妨害していく。イタリア代表を率いたアントニオ・コンテの[3-5-2]ゾーンは、相手の展開を先読みしながら守備のスライドを自動化。ベルギー代表との試合では、彼らのビルドアップを先読みするように逆サイドに展開する前に守備組織をスライドさせることによって「数的不利」な状況を作らせなかった。

 高度化したゾーンディフェンスは、相手のビルドアップに適応するように次に狙ってくるスペースを的確に消していく。そのように相手の出してくるカードを読み合うような戦術的駆け引きが加速している現代フットボールの世界において「Disguised pass」(偽装パス)の重要性は増す一方だ。独力で相手の守備組織を破壊するテクニシャンは、各チームにとって欠かせない攻撃のキーマンになっているのだ。今回は、「Disguised pass」について考えていこう。……

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戦術

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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