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マッチレビューから始まった「書いて、喋る」スタイルの楽しさ

2020.09.19

2018年5月に創設されたフットボリスタのオンラインサロンフットボリスタ・ラボ」。国外のプロクラブで指導経験を持つコーチに部活動顧問といった指導者から、サッカーを生業にこそしていないものの人一倍の情熱を注いでいる社会人大学生、現役高校生まで、様々なバックグラウンドを持つメンバーたちが日々、サッカーについて学び合い交流を深めている。この連載では、そんなバラエティに富んだラボメンの素顔とラボ内での活動、“革命”の模様を紹介していく。

今回は、アーセナル川崎フロンターレをはじめとするマッチレビュー記事をnoteで発表し続けている中瀬古大志(=せこ)さん。仕事の傍らかなりの熱量をサッカーの発信に注ぐ彼に、レビュー記事へのスタンス、ネットで他のサッカーファンと繋がることの魅力について聞いた。

W杯で知った「戦術クラスタ」の可能性


──まずは簡単な自己紹介をお願いします。

 「東京都出身の30 歳で、学生時代はずっと野球をやってました。中高野球部で、大学ではバスケットボールサークルでした。だからサッカーは実は1 回も競技の経験がないです。出会ったのは2006年のドイツW杯でした」


──当時何歳くらいだったんですか?

 「高校1、2年くらいです。当時日本代表は黄金世代ということで盛り上がっていたんですけど、あっさり敗退してしまって……。でも決勝を見ていたら、僕でも知っていたジダンが頭突きで退場したのを見て、これはよくわからないけどなんだかすごいぞ、となって。そこから興味を持って海外サッカーに触れ始めて、『マンデーフットボール』を見ていたら、たまたまアンリがプレーしている姿が目に焼き付いて、それがきっかけでアーセナルを好きになりました」

ラウンド16でスペイン撃破の立役者となったジダンを抱きしめるアンリ


──当時は『スカパー』じゃないと海外サッカーは見られないですよね。

 「そうです。うちは日当たりが悪くてアンテナを置けなくて(笑)、近くに親戚の家があったのでそこへ見に行ったりしていました。その後大学に進むと、バイト先に川崎フロンターレのサポーターが結構いたので、J リーグも見始めました。海外サッカー好きがJリーグを見もしないのに日本サッカーについて批判的に言うのはかっこ悪いなと思うようになって。それが2011、12年くらいですね」


──じゃあ風間時代のフロンターレですね。

 「はい、マンデーフットボールも風間さんなので、何かと縁がありますね(笑)。たくさん点取ってたくさん失点して、タイトルに手が届かないジレンマは何となくアーセナルと似ているところがあったので、そういうところも親近感が湧いたのかもしれないです」

川崎に攻撃的なスタイルを植えつけた風間監督


──そして今では、Twitterや、noteでの試合のレビュー記事、加えてツイキャスでのラジオという感じで、幅広く発信されていますよね。せこさんのnoteで面白いなと思ったのは、『BBC』調にデータやサイドストーリーを載せてJリーグのプレビューをやられるじゃないですか、あれは斬新だなと思いました。

 「2019年の開幕戦からですね。『BBC』のプレビューって、正直試合に関係ないネタもあるじゃないですか。そういうのが日本にはないなと思って、自分でやってみようとしたのがきっかけでした」


──書くこと自体はいつから始めたんですか?

 「2016年にライブドアブログで単発で始めましたね。でもその頃は見る試合がない暇な時期にやる程度で。noteを始めたのは2018年の8 月。そこもやっぱり時間があったので何かやるかと思ったのがきっかけでした。そこからかなり続いていますね」


──結構なペースで更新されてますよね。こういうのは始めるのは簡単ですが、続けるのが大変なんですよね。

 「ここ2年くらいは学生みたいな生活をしてますね。家にいる時間はそれに注ぎ込んでいますし、空いた時間があれば書いている感じです(笑)」


──noteのフォロワー数も7、8千人いってますよね。Twitterも5、6千。これだけ支持される理由は何だと思いますか?

 「ロシアW杯からですね。Twitterの戦術クラスタの人たちがドイツ対メキシコ戦についてリアルタイムで分析している中で、自分も図で整理をしたりして、そこから段々増えていったんですよね。自分なんかの分析でも、意外と見てくれる人がいるのかという発見がありました。それが2018年にnote を始めた時に、今までと違って単発で終わらなかった要因の1つだったりするのかなと」

メキシコが前回王者ドイツ相手に演じた「大番狂わせ」は、Twitter上のサッカーファンの間でも大きな話題となった


──試合分析のやり方もいろいろあると思うんですけど、せこさんはどういうスタンスでやってるんですか?

 「川崎の記事を書く時のスタンスとしては、擬似的なチームのサイクルとして、その週の反省点を見つけて、次の週にそれがどう解決されていたのか予習をするみたいな感じですね。現場と同じことをしているとは思わないですけど、ファンが1週間のルーティンをあれこれ考えるのも楽しいと思うので。試合の分析としては、流れを大切にする傾向が強いかもしれません。いわゆる4局面とかを抽出する人もいるんですけど、試合の中で時間帯ごとにそこでの狙いも変わってくるじゃないですか。選手だって交代するし、ストーリーとして試合を見ないとそういう変化がなぜ行われたのかは読み解きにくいのかなと。ただ、最近はストーリー化を意識し過ぎると都合良くプレーを見ちゃうような気がしていて、そこは気をつけています。あとはわかりやすいと言ってもらうことが多くて、それ自体はうれしいんですけど、実は単純化し過ぎてるんじゃないかなと不安に思うこともあります」

ツイキャスは「サッカー話をする溜まり場」


──ツイキャスで喋る方の活動もやられていますよね?

 「本当は利便性で言うとツイキャスよりも良い方法はあると思うんですよね。それでもツイキャスにこだわってるのは、Twitterの世界から飛んできて、溜まり場みたいな、週に1回サッカーの話をする場として定めたいという意識があるんですよね」


──確かにPodcastだとTwitterと断絶しちゃいますからね。具体的にはどんな感じでラジオをやっているんですか?

 「最初は不定期でアーセナルについて喋るみたいなのをやってたんですけど、その後去年の7月か6月くらいから定期的にやるようになりました。FC 東京サポのがちゃさんという方と2人でやっています」


──書く方も喋る方も継続性がすごいですよね。一定の出力でやり続けられるからこそ、聴いてもらえるというか。

 「それはあると思います。noteとかもブームよりちょっと先に始めているんです。別にここの分野でパイオニアになってやるぜっていう気持ちではないんですが、とりあえず面白いものがあればやってみてから整えていくみたいなスタンスなので」


──好奇心と継続性ですよね。

 「そうですね、その掛け合わせだと思います」


──書いてから喋るというスタイルは、サッカーを楽しむ新しいサイクルのように感じます。

 「基本スタイルは結構固まってきたかなと思いますね。とても楽しいです。でも、今まで会ったことのない人とそういう活動を始められたのは、ラボでそういう自分の中の壁を壊すことができたことがきっかけだと思います。どうしても最初は、自分がサッカーの話をして間違っていたら嫌だなっていうのがあるじゃないですか。でもいろんな人がラボのコミュニティに入ってくる中で、考えてもしょうがねぇなとなって(笑)。そこから友達も増えたし、一歩踏み出せたのはラボに入って一番良かったことです。2年前よりもサッカーを楽しんでいて、好きになっています。だから幸せですね」


──リアルイベントとかで実際に顔を合わせたりとかすると、よりお互いの人となりも見えて、心の距離も近くなりますしね。

 「サッカーが好きな人たちばっかりなので、そこは1 つ共通点があるのは大きいですね。仕事とかで学会の講演とか聞いても、うーんって思いますけど、ラボのイベントは結構毎回僕も質問するので(笑)」


──ボリスタはもともと読まれていたんですか?

 「週刊の時から拝読していました。サッカーのサイクル、プレビューをしてレビューする習慣が身についたのは週刊時代のフットボリスタの影響が大きいです。だから月刊になった時は少し寂しかったですね。あのサイクルが心地良かったので」


──かなりの古参ファンでびっくりしました(笑)。ラボの活動についてはどうですか?

 「イベントの質が高いなと思います。オンラインでの交流は盛り上がっている時とそうでない時の波がありますけど、正直月1のイベントでペイできるなと。印象的だったのは倉敷さんのイベントですね。僕がサッカーを見た時に一番最初に印象に残ったのが倉敷さんの実況だったので」


──こんな企画をしたいというのはありますか?

 「見ることに特化した企画があれば面白いかなと思います。この間、浅野さんが提案していましたけど、ロシアW杯の時みたいなリアルタイム分析もまたできると盛り上がりそうですよね。レビューもいいけど、その場ですぐ解釈を与える作業をもっとやった方が、スポーツのリアルタイム性という側面に追いつけるんじゃないかなと。僕も今後はそこにこだわっていきたい気持ちもあるので」


──ボリスタラボもそういう新しい刺激を入れていきたいですね。最後に、せこさん自身の今後の目標は?

 「レビューをたくさん書こうというところから始まって、今ではフットボリスタさんで記事を書かせていただいたりだとか、思いがけないところで1つの成果を達成できてうれしいです。今後もその辺りは継続して精度を上げていきつつ、時間がある時にはみんなでサッカーを楽しんでいきたいなと思います」


──サッカーを見て、書いて、リアルタイムに喋りながらみんなとやり取りするというのはオンラインならではの新しい楽しみ方ですよね。ボリスタラボにも生かせそうだなと思いました。本日はありがとうございました!

フットボリスタ・ラボとは?

フットボリスタ主催のコミュニティ。目的は2つ。1つは編集部、プロの書き手、読者が垣根なく議論できる「サロン空間を作ること」、もう1つはそこで生まれた知見で「新しい発想のコンテンツを作ること」。日常的な意見交換はもちろん、ゲストを招いてのラボメン限定リアルイベント開催などを通して海外と日本、ネット空間と現場、サッカー村と他分野の専門家――断絶している2つを繋ぐ架け橋を目指しています。

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入会手続きやサービス内容など詳細は下記のページをご覧ください。

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Edition: Mirano Yokobori (footballista Lab), Baku Horimoto (footballista Lab)
Photo: Bongarts/Getty Images, Getty Images

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Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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