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「何かができない」ことがボトルネックに。極めてシンプルなバイエルンのプレー原則が意味する、新時代の到来

2020.08.28

決勝でパリ・サンジェルマンを下しCL制覇を遂げたバイエルン。大会史上初の全勝優勝という成績もさることながら、再開後に披露した驚異的なパフォーマンスに対して称賛の声が集まった。王者と呼ぶにふさわしいチームはいかにして成り立っているのか。東大ア式蹴球部の山口遼監督に、ニコ・コバチ政権からハンジ・フリック政権となって変化した部分も含めたプレー原則の解読、そしてハイレベルな大会が予感させた、トップ・オブ・トップのチームの進化について分析してもらった。

 トーナメントの決勝という凡戦の生まれやすいシチュエーションにおいて、異例と言えるほどの好戦を演じた末にこの“最も長かったシーズン”を欧州王者として締め括ったバイエルン。終わってみればビッグイアー、ブンデスリーガ、DFBポカールを総なめにして3冠を達成した輝かしいシーズンとなったが、その歩みが常に順調だったわけでは決してなかった。シーズンの前半はむしろ、つまずきと混乱から始まった。

 昨シーズンに続いて指揮を執ったニコ・コバチ元監督のチームマネージメントはうまく機能せず、フランクフルトに5-1という屈辱的な結果で敗北したことをきっかけに彼を解任。アシスタントコーチとして籍を置いていた現監督ハンジ・フリックを昇格させる形でチームはリスタートを図った。……

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UEFAチャンピオンズリーグバイエルン戦術

Profile

山口 遼

1995年11月23日、茨城県つくば市出身。東京大学工学部化学システム工学科中退。鹿島アントラーズつくばJY、鹿島アントラーズユースを経て、東京大学ア式蹴球部へ。2020年シーズンから同部監督および東京ユナイテッドFCコーチを兼任。2022年シーズンはY.S.C.C.セカンド監督、2023年シーズンからはエリース東京FC監督を務める。twitter: @ryo14afd

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