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ゲームモデルで地方創生。 福山シティFCの新たな挑戦

2020.06.21

6月上旬、新型コロナウイルスの影響による経営難のためクラウドファンディングを実施すると、わずか3日で目標金額分の支援を集め話題となった福山シティFC。「地域課題解決型総合クラブ」を目指す新興クラブは、ピッチの中と外を戦術的ピリオダイゼーションの一部であるゲームモデルで繋ごうとしている。22歳の若さで監督に就任した小谷野拓夢氏に加え、同チームでゼネラルマネージャーを務める岡本佳大氏、テクニカルアドバイザーに就任した清水智士氏、外部から協力する脇真一郎氏の4人にクラブのビジョンを聞いた。

Keita OKAMOTO
岡本佳大
(左)

1989年、広島県出身。現役時代は広島観音高校でインターハイ優勝し、その後は広島修道大学を経て地域リーグでプレー。引退後はサッカースクール等を経営し、2019シーズンより福山の経営に参画。2020シーズンより福山シティクラブ副理事長と、福山シティFC代表兼GMを務める。

Hiromu KOYANO
小谷野拓夢
(右)

1997年生まれ。鹿島学園高校卒業後は北陸大学でプレーし、大学3年時よりコーチ業に専念。2020シーズンより異例の新卒監督として福山シティFC監督に就任。

Satoshi SHIMIZU
清水智士
(左)

1988年、茨城県生まれ。サガン鳥栖、ベガルタ仙台、蔚山現代FCで分析を担当した他、小学生から高校大学まであらゆる年代の指導を経験。2020シーズンより福山シティFC の外部テクニカルアドバイザーに就任。

Shinichiro WAKI
脇真一郎
(右)

1974年、和歌山県出身。粉河高校のサッカー部で指導し、『プレー経験ゼロでもできる実践的ゲームモデルの作り方』(小社刊)を上梓。外部アドバイザーとして福山シティFCのゲームモデル作成に携わる。

「まちめぐり」から始まったゲームモデル作り

───小谷野さんは22歳、清水さんもまだ32歳と随分と若いメンバーですよね。まずは現体制に至った経緯をうかがってもよろしいですか?

岡本「昨年、広島県1部リーグへの昇格を決めて、『今後我われがどういうサッカーをしていくのか』を検討する中で、クラブの普遍的なアイデンティティを構築してゲームモデルを作り、それを表現できる監督を連れてくるのがベストなのではないかと考えました。そこで(ゲームモデルの)本も書かれている脇さんに相談を持ちかけまして、脇さんの知識だけでなく彼のコミュニティも活用させていただいて、小谷野さんと清水さんにコンタクトを取ったという流れです」

───実際に福山のゲームモデル作成はどのように行われているんですか?

岡本「基本的にはこの対談の参加メンバーを中心に構築されています」

「福山のゲームモデル作りは2段階あって、第1段階がクラブのビジョンやフィロソフィとしての土台作り。だから、岡本代表と福山の街を見て回ったり歴史について話をするところからスタートしました。福山とはどんなところなのか、自分たちがどう変化を与えられるのか、まず議論して共有するためです。そして、その土台をサッカーで表現するとこういうゲームモデルになるよね、というのがもう1段階です」

───そうして視察された福山の地域性に対して具体的なゲームモデルは生まれたのでしょうか?

岡本「福山は人口が47万人で経済も比較的安定していますが、やや閉鎖的で保守的。広島でも岡山でもない独自の文化圏です。そしてプロスポーツチームがない。劣等感を感じている、自信を持って福山と言えない人たちが多いのかなという印象もあります。これから人口減少や経済の縮小など、地方の例に漏れず衰退の方向に進んでいくと予想されますので、我われとしては、スポーツを通じて街を盛り上げる『開拓と挑戦』という理念を掲げています。福山では初めてスポーツに触れる、サッカーを見る人たちが多いので、誰が見ても心を打つ、感動するようなサッカーを表現していこうという想いで『ambitious football』という言葉を設定しました。そのためには攻守において主導権を握るサッカーをやろう、という流れで地域の風習や課題という観点から目指すスタイルを決定しました。そこから脇さんを中心に強化部でゲームモデルを作成していったという流れです」

「福山を散策した時に感じたのが、あまりにも平和だなと。プロサッカークラブができても非日常的なイベントとして受け入れられたら根づかない。あくまでも地域とともに歩む、日常にチームがあるという繋がりを意識して作らないと勝ち負けでしか見てもらえないようになりかねない。継続性や先の話をしても福山市民がそう捉えない可能性もあるなと。なので、あくまでも福山の日常に寄り添いながら、地域と二人三脚で歩くことをコンセプトとして持ちたいよねと」

───そこから先は小谷野さんや清水さんも加わってゲームモデルを練り上げていったと。

清水「僕もこれは行かなきゃいけないと思って、わっきーさんの1カ月後くらいに福山に行きました。僕と前後して小谷野監督も福山を訪れているので、みんなその過程は経ていますね」

小谷野「福山歴史博物館などに行きましたよ(笑)」

「街だけじゃなくて城や古墳なんかも見て回ったな(笑)。ピッチ上のビジョンは小谷野監督、サッカーの原則的な部分は清水さんにお願いして、自分は全体をチェックしていますね」

小谷野「監督としての僕の仕事は、クラブのフィロソフィ、『攻守で主導権を握るサッカー』をより具体的にすることでした。攻撃であれば『ビルドアップ/崩し/ネガティブトランジション』、守備は『ビルドアップの阻止/崩しの阻止/ポジティブトランジション』に局面を分類して、さらに『主原則/準原則/準々原則』とゲームモデルをさらに細分化していきましたね」

清水「僕の方ではまず大枠というか、そもそも競技としてのサッカーはどういうものか、という定義づけをきちんとしていきました。そうしないと、ゲームモデルがふらふらしてしまうので。だから、サッカーは『ゴールルートをめぐる主導権を争うもの』で『シュートを撃てるところにいる相手を崩すものだ』という明確な定義を作って、その上で局面を整備していきました。それから、福山の街が1つになるためにはどういうサッカーを表現していくべきか、という肉づけをしていきました。それをトップチームでは選手の特性に合わせて小谷野監督に表現してもらって、僕の方ではアカデミーや指導者養成の部分を整理している最中です」


───アカデミーのゲームモデルも作成されるんですか?

清水「アカデミーのメソッドはほぼでき上がってます。もちろん基本的なベース部分はトップチームと同じですけど、トップの戦う場所と育成の舞台は若干異なるところもあるので、最終的には異なるものができ上がるのかなと思ってます」

岡本「アカデミーについてはこれからですが、我われとしては、地方からでもこういうことができるというロールモデルになることを掲げています。我われのようなクラブがゲームモデルの重要性を説くことができれば、また1つサッカーが文化として根づく足がかりになるんじゃないかなと思ってます」

「地域課題解決型総合クラブ」とは?

……

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戦術文化福山シティFC

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。