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河内一馬が鎌倉インターナショナルFCの監督兼CBOになる理由

2020.01.15

サッカーを”非”科学的視点から思考するnote『芸術としてのサッカー論』で話題のアルゼンチン在住のサッカー指導者、河内一馬鎌倉インターナショナルFCの監督兼CBO(Chief Branding Officer/ブランディング責任者)に就任することが決定した。そこで、その経緯から前例のない役職の意味、そして今後のプランまでじっくりと語ってもらった。

そもそも監督兼CBOって何?


――今回鎌倉インターナショナルFCの監督兼CBOになると伺いました。あまり前例がない立場だと思うのですが、就任の経緯から聞いてもよろしいでしょうか?


 「鎌倉インターナショナルFCができたのが2018年なんですけど、発足した当時にクラブのオーナーと出会ったのが最初です。クラブの構想を聞きつつ、いつか監督をやってほしいと冗談半分で話をしていたこともあります。僕自身としても鎌倉という街やクラブの構想に魅力を感じたので、将来的に僕が監督として実績を挙げてから、いつかできればいいなと考えたこともありました。ただその後、アルゼンチンの監督養成学校に行きながら現地で暮らす中で、アルゼンチンの中でのサッカーの価値というか、社会に対して与える影響の大きさが日本とは比べ物にならないことをこの目で見て、仮に日本に帰って監督として運よく成功できたとしても、その先に繋がるものがあるのかなと感じてしまって……。日本でもサッカーをもっと社会に影響を与える存在にしたい、そのために自分ができることは何なのかと考え始めました。そのような心境の変化もあり、新しいクラブ、小さいクラブで、なおかつ自分のビジョンともしっかり合うところに行きたいと考えるようになりました。鎌倉というクラブはその条件にぴったり合致したというか、僕にとっては完璧なクラブでした」

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――河内さんにとって、鎌倉インターナショナルFCのコンセプトやビジョンはどういう意味で魅力的だったんですか?


 「鎌倉インターナショナルFCは、インターナショナルという名前がついているくらいなので、国際化をコンセプトとしているクラブです。日本国内にだけ視野を向けているようなクラブは、僕の考え方とは合わないという確信もありました。僕は世界を基準にして物事を考えているので、同じような考えのところで仕事をしたいんです。加えて、鎌倉という街が国際都市、外国人がたくさん観光で来るような街というのも一つのポイントでした」


――鎌倉って、東京からだと1時間くらいで行けますよね?


 「そうですね。電車で1時間くらいですね。ただ、都心からの近さの割にポテンシャルが活かしきれていないというのが、僕が鎌倉という街に持っていた印象でした。なのでサッカークラブが鎌倉にあることで、この街に貢献したという想いは当然あります」


――鎌倉インターナショナルFCは誕生したばかりですよね。今のカテゴリーは……。


 「今、神奈川県2部ですね」


――ということは、ここから神奈川県1部に上がって、その次が関東2部、そして関東1部で、その次がJFL。


 「そうですね。僕のイメージでは10年くらいの単位で仕事をしたいと考えています。当然まったく結果が出なければクビということはあり得るんですけど、それぐらいのスパンで鎌倉で仕事をしたいという現状の思いはあります。10年の中で自分がやりたいことを詰め込むとなると、むしろかなりスピード感を持って仕事をしなければいけないと思っています」


――このクラブでどんな仕事をしたいと考えていますか?


 「個人的に大きな軸としてあるのは、スケールのイノベーションというか、日本サッカーの規模を広げたいです。日本サッカーが見ている視野とか基準とか、考え方も含めてそのスケールを広げるようなことを鎌倉でしたい。加えてビジュアルのイノベーションです。日本サッカーの視覚的な情報を更新すること、今までのものとは一新して新しくモダンなことがしたいと思います」


――河内さんはブランディング責任者を担うわけですが、サッカークラブにそんな役職ってないじゃないですか。具体的には何をするのでしょう?


 「役職の名前も具体的な仕事も正確には定まっていないというのが正直なところなんですけど、まずはクラブの持っているビジョンを形や言葉にした上で、可視化していくというのが仕事になっていくと思います。ビジュアルとしてクラブのブランディングをしていくということですね。他の人たちがクラブをどういう風に見て、聞いて、感じるのかという部分をすべてコントロールする役割を担いたいと考えています」


――それは、例えばクラブのロゴ、アートディレクション、あとはSNSの発信であったりとか、そういうところも含めて?


 「そうですね。タッチポイントのすべて、他のサポーターだったりファンだったり社会の人たちが目にするものすべてですね。加えて、ブランディングってどういう構造をしているのかとか、サッカークラブのブランディングってどういうことかっていうことも僕の中でしっかり体系化して、将来残していけるようにしていきたいです。もちろん一番はっきり見えるのがビジュアルの部分だと思うんですが、それ以外にもビジョンを言葉にしたり、それこそどういうサッカーを志向したいのかも僕の中ではブランディングの一部です。なので、監督としてそこも当然関わっていく。そして、一番最初にサッカーの面でやらなければいけないのは、僕はゲームモデルという言い方はあまりしないんですけど、クラブとしてのモデルを決定するための、ゲームモデルのさらに上位の概念を作ることだと思っています。鎌倉というクラブがこれから10年、20年、30年続く中で、どういうサッカーをしたいのかという部分をまず言葉にする。今クラブに関わっている人の話を聞きながら、この人たちは一体どういうサッカーをしたいのか、という部分を僕が噛み砕いて言語にしたり、図にしたり、そういう作業を一番最初に取り組むことになると思います」


――監督の仕事が変わってきているという話はフットボリスタでもよくしますが、クラブのブランディングを監督が担うというのはちょっと聞いたことがないですね(笑)


 「監督の仕事自体がブランディングの概念に近いと僕は考えています。例えばクラブが持っているブランド力を高めるために監督が使われる、という意味でもブランディングですし、監督のピッチ内の仕事でも、選手にどういうタイミングで話をするのかとかどういう言葉をかけるのか、タイミングを間違えたらまったく響かないし、やってることに一貫性がなければ選手も見てくれない。これって広い意味でのブランディングなんです。そうやって考えていくと、サッカー監督の役割を作るためには、ピッチ内だけでは不十分で、ピッチの外でも自分の意図した構造を作っていかないといけないと気づきました」


――でも、両方やるのは大変じゃないですか?


 「就任してしばらくはピッチの外の経営やブランディングにもがっつり関わってクラブの基盤を作っていって、徐々に監督の仕事に集中していくような形を取れたらと思います」

カッコよく感じる構造は「視覚・機能・哲学」の三角形


――河内さんの『芸術としてのサッカー論』では、サッカーとブランディングに関する斬新な視点の記事が多数ありますが、こういう視点ってなかなかサッカー指導者は持たないじゃないですか。ピッチ外は俺の領域じゃないって。河内さんはアートやファッションに昔から興味があって好きだったんですか?


 「昔から興味があったわけではなくて、考え始めたのは2016年に、ヨーロッパを旅していた時ですね。その時に15カ国くらい周ったんですけど、やはり日本と全然雰囲気が違ったんですよね。単純にサッカーというものがカッコいいんです。そこで視覚的にカッコいいということは、サッカーが強いとか弱いにも何らかの関連性があるんじゃないかという仮説を立てました。ビッグクラブがカッコいいのって、強いからカッコよく見えるのか、それともカッコいいから強くなっていくのか。どっちなんだろうということを考え始めました。

 そこで、おそらく一般的には、強くてお金があるからカッコよくなっていくんだよっていう考え方だと思うんですけど、僕はその逆もあり得るんじゃないかと思っていて。視覚的にまずカッコいいっていう状態を作ってしまえば強くなっていくんじゃないかっていう。その仮説を鎌倉で自ら検証したいという思いがあります」


――海外のサッカークラブがカッコよくて、日本のクラブはそうじゃなく見える。それってなんでなんですかね?


 「人はどういう時にカッコよく感じるのかについて考えたんですけど、視覚・機能・哲学の三要素、この三角形が大きければ大きいほどカッコいいし、かつ一貫性があればあるほどカッコいい。で、日本の場合、スポーツ、サッカーに限らずこの視覚的なところがものすごく軽視されていると僕は感じています。例えばカッコいい哲学を持っているクラブは、日本でもサッカーに限らずたくさんあると思うんです。機能としても、いいサッカーをするとか、そういうカッコ良さを持っているクラブというのもあると思います。でも視覚だけで勝負できるスポーツクラブが日本にあるのかって言われたら、それは僕の中でずっとクエスチョンで。だったらこの視覚を一新できれば、日本のサッカーの価値は大きくなっていくし、スポーツの価値も大きくなっていくんじゃないのかなと」


――なぜ、そもそも日本では視覚の部分が弱いと考えますか?


 「例えば教育的な観点で話をすれば、日本では、スポーツを真剣にやっている子って、見た目によって自分を表現することがそもそもできない構造になっているんですね。子供の時から、髪の毛を染めたり、自分の好きなアクセサリーを付けたり、好きな服装をしたりということが許されていない。なので、自分の見た目に気を遣ったりとか、自分の考えていることをファッションで表現したい子は当然スポーツ界からいなくなってしまう。カッコいい状態を作るのには時間が必要で、マネキンが着ているオシャレな服をそのまま持ってきてもオシャレにはならない。サイズ感や肌の色に合うかとかを小さい時から自分で調整していくことでセンスが磨かれていくんだと思うんですけど、日本ではそもそもそういう環境が与えられていない。でも他の国ではそんなことはなくて、みんな小さい頃から自分が好きな髪型をしたり、洋服に気を配ったり、そういうことが当たり前の上でサッカーをしてる子も当然いるので。要は僕の中でビジュアルのイノベーションをするということは、部活動から脱却できていない日本のプロスポーツに対しての考え方を問うということに等しいんです。日本の部活動としてそういう文化があるのはいいのですが、ただプロスポーツというのはエンターテインメントなので、人が楽しむことにお金を使う世界で衣装に気を遣っていないことなんてあり得ないし、エンターテインメントとして成立していないと思います」


――ブラック校則といった問題はよく話題にのぼるようになってきていますし、日本も徐々に変わってきてはいるとは思うんですけど、多様性を認めることは今後の日本社会の大きな議論のポイントですよね。


 「そういう部分をあらゆる形で訴えていきたいし、例えば僕がそこに対してアクションを起こそうと思った時に、クラブのビジョンがズレているとそれができないですけど、鎌倉ではそれがクラブのビジョンと一致しているので、すごくやりやすい。日本人だから世界の基準じゃなくていいよっていう時代はとうに終わっていて、それをサッカーという舞台を通して社会に対して訴えていきたい。と考えると、僕が監督だけやって結果を出したところで社会に対して何も問うことができません。なので、ブランディングという形でもクラブに関わっていきたいなというのがありますね」

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――お話を伺っていると、一見グローバル、世界基準というコンセプト自体はありがちに思われてしまいそうですが、その内容が伝わると世間の目は変わりそうですね。


 「本当におっしゃる通りだと思います。なので、一言でクラブのビジョンが明確に伝わる言葉を生み出すのも僕の仕事だと思っています」


――ちなみに、そのブランディングの見た目の話をしていただいたわけですが、他の2つ、哲学と機能っていうところに関してもお聞きしてもいいですか?


 「哲学は今言った通り、クラブがどう考えているのか、どういうサッカーの捉え方をしているのかですよね。例えばAppleの製品は、見た目がカッコいいし、機能としても当然素晴らしい。ただそれだけではなくて、そこに哲学が伴っていないとやはり薄っぺらくなってしまう。ビジョンがあって、それが見た目と機能に直結して初めて、こういうブランドだな、と人々が認識します。なので、哲学をクラブの全員が理解するとか、他の人が一瞬でその哲学を理解できるとか、そういうことがすごく大事なポイントだと思っています」


――ということは、機能はサッカーの内容ということでしょうか?


 「そうですね、サッカーの内容ももちろん機能の一部ですが、ピッチ外でアウトプットすることもたくさんあると思うので、そこも考慮しないといけないですね」


――単純にグッズがカッコいいかどうかみたいな。


 「そうです。それも機能の1つとして捉えています。僕にとっては、サッカーのゲームというコンテンツは他のコンテンツと同じ枠組みにあります。サッカーもグッズも、ブランディングの観点から見ると立ち位置は同じなんですね。なので、どういうサッカーをするのかと、どういうグッズを作るのかは直結していないといけない。そのためには、監督がブランディングとクラブの哲学について理解していないといけないし、もしくはそれを理解している監督をクラブは獲ってこないといけない。そう考えると、新しい鎌倉のようなクラブだったらそういう状況を作りやすいですよね」


――今のヨーロッパのビッグクラブで求められている監督像もそこですよね。クロップグアルディオラも、自己ブランディングがうまい。サッリが大変な目に遭ってますけどね。服装もクラブの指示でジャージから変えられて(笑)。


 「やはり海外はそういう考え方があるし、監督というものがクラブのブランディングの1つとして成立しています。強いキャラクターの監督がいないと、ブランディングも成立しなくなってしまう。クラブが何か面白い取り組みをしていても、キャラクターに特徴のない監督を起用したためにブランディングが弱くなってしまうというのも、よくあることだと思います」

ユベントスではお馴染みのジャージ姿が見られなくなったサッリ

CONMEBOL PRO取得で日本のライセンス制度を問う


――2021年から現場に入る予定ということですけど、それまではアルゼンチンで監督学校に行きつつ関わっていくという形なんでしょうか?


 「そうですね。アルゼンチン最後の一年では鎌倉に対して一番時間を使いつつ、監督ライセンスの取得のための勉強と、語学も集中的に行おうと考えています。英語とスペイン語を今よりもレベルの高い状況にすることが僕の今年の目標です。でもそれ以上に、クラブでは僕が2021年に現場に入る時にすでに基盤ができあがっている状態にしておきたいので、クラブの人と話し合ってビジョンなどを固めつつ、自分の中の仮説を体系化することに時間を割きたいです」


――アルゼンチンで取ったライセンスは日本でも使えたりするんですか?


 「前例がないのでわからないです。ただ今年からアルゼンチンのライセンス制度が変更になって、今までは基本的にはアルゼンチンのサッカー協会がアルゼンチンで行う指導者ライセンス制度を管理をしていたんですが、今は南米サッカー連盟が統一している状況なので、僕が来年取ることになるのはCONMEBOL PROというライセンスになります」


――CONMEBOL PROということは、一番上のカテゴリーですよね?


 「そうです。要はUEFA PROみたいな位置づけで、そのライセンスを取ると、南米サッカー連盟に属している国にダイレクトに関わることができると。このライセンスになったのは、おそらく僕にとってプラスです。今の状況だと、アルゼンチン人でこのライセンスを持った人が日本に来るのであれば、おそらく許可されて監督ができると思うんです。でも日本人となった時にそれをどう評価するかは前例がない。でも僕が仮に日本で結果を出すことができれば、議論をせざるを得なくなると思うので。そういう、現状の海外の指導者ライセンスへの評価に対するチャレンジというのは、僕はアルゼンチンに行く前からずっと持っています。うまく結果を出すことができれば、日本サッカーの歴史というか、状況は変わるかもしれないと考えています」


――CONMEBOL PROはUEFAライセンスと互換性はあるんでしょうか?


 「互換性はあるといえばあるし、ないといえばない。僕が聞いている限りだと、状況は以前と変わっていなくて、アルゼンチンの国内で5年間監督を経験をすればヨーロッパに移籍ができるというような制度があるんですね。なので、例えば今だったらアルゼンチンでガジャルドとか十分な実績を積んでいるので、ヨーロッパで監督をすることは当然できると。それって何が評価されているのかというと、結局アルゼンチン人監督が過去に評価されているという蓄積ですよね。そういう意味で、無形の互換性があるんです。ただ、日本の場合、そういう実績がないので向こうも評価できない、というのが本音ではないでしょうか。要するに、いくら日本国内でS級ライセンスを取って、日本で史上最高の結果を出そうとも、現状はその先がないわけです。それってすごくもったいないですよね。他の国って、自国で結果を出した監督がヨーロッパの主要のリーグに行って勝負するじゃないですか。その流れを日本人が作っていくには、日本のS級ライセンスを外国で認めさせるという(効果が読めない)働きかけよりも、外国のライセンスを日本で認めさせる方が早いし、僕みたいに外国でライセンスを取っていて外国語を喋れる人間であれば、Jリーグでまずは結果を出して外国の目に留まった時に海外に行くという流れを作ることもできます。そういう流れが生まれることで、僕の下の世代になるかもしれないですけど、日本人で強烈な監督が出てきて、日本で結果を出して、ヨーロッパに進出して、そこで勝負をするというようなことが可能になるんだと思います」

ガジャルドは現役時代にプレーしたリーベル・プレートを約5年半にわたって指揮。古巣に7つのタイトルをもたらしている


――SNSだったりとかnoteでの発信も、クラブに入ってからも引き続き続けていくんですか?


 「今のところは、去年のような動き方はしないと思います。文章を書くのに充てていた時間を他のことに使いたいので。ただSNSを有効に使いたいという思いはずっとあるので、まったく使わなくなるということはおそらくないと思います」


――今後も何らかの形では続けていく?


 「そうですね。ただアルゼンチンに行った時みたいに、絶対に何かしらの戦略を持ってやります。あとは文章をwebで書くとなると、やはり読み手の離脱を防ぐために気を使ったりする必要があって、それに創造性を奪われているように最近思っているので、今後しっかりとした文を書くのであれば本を書きたいなと思いますね」


――そもそもクラブへの就任発表は、なぜ1年後ではなくてこのタイミングだったんですか?


 「1つは、僕の中でサッカーはエンターテインメントなので、常に何かしらのサプライズを起こしたいという思いがあったということですね(笑)。もう1つは、1年前に発表することでいろいろと動きやすくなる部分もあります。僕の今後の立場が知られている状態の方が動きやすいし、1年間かけて準備できれば、2021年に良いスタートが切れます。クラブとしてもしっかりと考えを持って事前に決めたことだっていうのを示すことにもなります。最近の流れとして、クラブのコンセプトやビジョンを打ち出すというものはあると思うんですが、ただコンセプトだけ話題性があって、すぐに消えてしまうようなものにはしたくないので。仮にコンセプトがつまらないと思われてもいいから、長い時間をかけて作っていく基盤を作りたい。なので、今のまだ固まり切っていない状態で発表するのは、戦略的に、他とは違う道を辿るよという意思表示でもありますね」


――クラブの体制は現状どんな感じなんですか?


 「今はオーナーがシンガポールに在住していますが、国やロケーションに関わらず日々オンラインでコミュニケーションを取っています。そのほかに、日本で動いているGMがいて、現状カテゴリーは下にいますが、事務所があったり、コーチやマネージャー、ボランティアスタッフも含めて、非常に充実した体制になっていると思います」


――これからはオーナーやGMも一体となって、選手やスタッフを探していくイメージでしょうか?


 「そうですね。僕が書いているnoteって選手もかなり読んでくれている人がいて、なので今までにはない選手の集め方ができる可能性もあるのではないかと思っています。監督がこういう人間だというのが文章によって選手に伝わるかもしれないし、それでクラブの名前を知ってもらうこともできるのかなと。選手には常に門戸を開いています。」


――目標として、何年でどのカテゴリーみたいな、数値目標みたいなのはあったりするんですか?


 「何年でどうこうっていうのは、僕自身はまったく持っていません。個人的には何年までに何かをすると目標を決めてしまうと、どこか制限されるような気がしていて。ただ個人的には数字を出すのであれば、サッカークラブのファンの層ですね。Jリーグも含めて、平均年齢を例えば30歳以下にする、将来的にスタジアムができた時に、スタジアムに来る30%を外国人にしたいとかですね。そういう僕の個人的な思いはあります」


――すべての人に好きになってもらうクラブというのは、何も言っていないに等しいですからね。それぐらい尖ったコンセプトのクラブが出てきても面白いなと思います。ただ、40歳の僕は無理ですね(笑)。


 「もちろん40歳以上は受け付けないとか、そういうことでは当然ないです(笑)。ただ僕らは若者に対して、若者がカッコよさを感じるような、人生を変えてしまうようなサッカークラブにしたいです。ファミリーカーを作るよりスポーツカーを作りたいんですね。ここまでずっとカッコいいクラブを作りたいって言っているんですけど、クラブがカッコよくなるっていうことはつまりサポーターがカッコよくなるっていうことです。ブランディングをするということは、サポーターの文化を作るということなので、鎌倉インターナショナルFCをブランディングすることで、日本に新しい文化が生まれると信じています」


――サッカーを通して日本社会を変えるチャレンジですよね。賛否両論が巻き起こると思いますが、試合に勝って結果がついてきた時に周りの見る目がどう変わるのか楽しみです。次回は、現場派の人にももっと伝わるように監督としての戦術面の話をしましょう。さっきプレゼン資料を見させていただきましたが、これは凄いオリジナルだと思うので。

Kazuma KAWAUCHI
河内一馬

1992年生まれ、27歳。サッカー監督。アルゼンチン在住。アルゼンチン指導者協会名誉会長が校長を務める監督養成学校「Escuela Osvaldo Zubeldía」に在籍中。サッカーを非科学的な観点から思考する『芸術としてのサッカー論』筆者。サッカーカルチャーブランド『92 F.C.』ファウンダー。NPO法人 love.fútbol Japan理事。

鎌倉インターナショナルFCの公式サイトはこちら


Edition: Milano Yokobori, Baku Horimoto
Photos: Getty Images

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河内一馬鎌倉インターナショナルFC

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。