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1対1に強い若手が出てこない背景 “守備の国”イタリアのCB事情

2019.12.09

ローマのジャンルカ・マンチーニ(左)とインテルのアレッサンドロ・バストーニ

 9月29日のセリエA、ミラン対フィオレンティーナ(1-3)の開始14分、ドリブルでペナルティエリア内に切り込んで来るフランク・リベリに対し、ミランのCBで24歳のイタリア代表アレッシオ・ロマニョーリはペアを組むマテオ・ムサッキオとともに進路を塞ごうとした。ところがあっさりとかわされシュートまで行かれてしまう。最終的にPKに繋がったこのアクションを皮切りに、彼は翻弄されまくった。

 規格外のテクニシャンであるリベリにやられるのは不名誉なことではない。ただ、伝統的に1対1に強いとされたイタリア人DFが育っていない現実を象徴するエピソードと見られ、インターネット上でも批判と落胆の声が上がった。

 2011年以降、イタリア代表でのDFラインは長いこと“ ブロッコ・ユーベ”に固定されていた。そしてそのユーベでは現在、将来を嘱望されたはずのダニエレ・ルガーニがレオナルド・ボヌッチやジョルジョ・キエッリーニを追い越すことができず、新加入の20歳マタイス・デ・リフトや21歳メリフ・デミラルよりも序列は下になっている。さらにようやく次世代を担う人材が育ってきたイタリア代表でも、A代表で今すぐレギュラーの座を奪える若手CBは出てきていない。

 ファビオ・カンナバーロやマルコ・マテラッツィなど、2006年W杯優勝メンバーのような1対1の強さを備えた屈強な選手がなかなか出てこない。イタリアのサッカー関係者の中では、10年を超えるスパンで心配されてきたことだった。中には「サッキが2010年にイタリアサッカー連盟の技術主任に就任し、堅守からのカウンターという伝統を否定してしまったからだ」と批判する者までいた。

2006年のドイツW杯決勝でフランスのフローラン・マルダを追うマテラッツィとカンナバーロ

イタリアでも変わる理想のCB像

 ただ、現場の指導者は決して単純な斬り方をしていない。かつてアタランタやウディネーゼ、カターニアなどで活躍した元CBのアンドレア・ソッティールは、2013年に提出したUEFAライセンス取得論文の中でこう記している。

 「現代の選手はマークの仕方を知らないのでは?と質問されることがある。若い子たちはすぐにゾーンディフェンスを教え込まれるから、体をぶつけてマークに行くことを覚えないのだと考えるらしい。だがそうではない。マンマークに優れた選手というのは、体を寄せるところと間合いを取って遅らせるところの判断ができるものだし、当然ボールの扱いも関わってくるのだ。育成組織では組織守備の他に、敵の動きに基づいた個人守備についても訓練されるべきだと思う。そしてそれは必ずしも、コンタクトを要するものではない」

 ゾーンディフェンスにビルドアップといった組織的プレーをクリアしながら、ボールと相手選手との両方を把握した個人守備戦術を高めていく。これが現在、イタリアのDFにおける指導の基本理念となっているようだ。その上で考えれば、少数ながらイタリア人CBの将来像を思わせる選手も出てきている。長身でありながら先読みの良さと組み立ての正確さが評価されローマに移ったジャンルカ・マンチーニ(23歳)や、アレッサンドロ・ネスタを思わせるクリーンなマークと正確な左足のフィードが特徴でインテルでも台頭が期待されるアレッサンドロ・バストーニ(20歳)などがそうだ。サッカー界を挙げて提案型サッカーへの舵を切ったイタリアでは、理想とされるCBのあり方も変わってきている。

 しかしまだ、セリエAでは外国人に押され気味。ボローニャに所属していた元U-21代表のアルトゥーロ・カラブレージが、冨安健洋の移籍に伴いレンタルに出されたのもその一例だ。屈強さで鳴らし、フィリッポ・インザーギ前監督に重宝された若手CBも、ミハイロビッチ監督の戦術面、技術面での要求に対応できなかった。全般的にイタリア人が再び台頭するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。


Photos: Getty Images

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戦術

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。