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U-22日本代表の完敗が突きつけた 日本サッカーへの違和感の正体

2019.11.20

10月の親善試合では、王国ブラジルを敵地で撃破。母国開催の五輪に向け意気上がるU-22日本代表チームだったが、11月17日の試合ではホームでコロンビアに0-2で敗れた。スコア以上の完敗と評されたピッチ上で何が起こっていたのか。そして、この試合が浮き彫りにした日本サッカーの根深い問題とは。東大ア式蹴球部の山口遼ヘッドコーチに分析してもらった。

 ツケが回ってきた。そんなふうに思わずにはいられない。

 東京五輪開幕が半年後に迫り、直近の試合ではブラジル代表に逆転勝ち。さらには堂安律や久保建英といったA代表のメンバーも今回合流するということで、にわかに高まっていたはずの期待とボルテージが、今回の試合で一気に「平熱」へと戻ってしまう、そんな内容であった。

 まずは試合で起きていた現象を分析していくが、本当の問題はより深いところにあるような気がしてならない。かねてから抱いていた日本サッカーに対する違和感を最後に少しだけ述べたいと思う。

3バックについて

 U-22日本代表は、A代表とは異なり一貫して[3-4-2-1]をメインのシステムとして使用してきており、今回も久保と堂安をシャドーに配置した[3-4-2-1]を用いて試合に臨んだ。しかしながら、その完成度はとても3バックをずっと用いて戦ってきたチームのものとは思えなかった。

 3バックのシステムでは、3枚でピッチの横幅をすべて管理するのは実質的に不可能なので、守備時にはウイングバック(WB)がDFラインに加わり実質的な5バックを形成することになる。そのため、一般的に4バックとはかなり異なったロジックに基づいてチームを動かすことになる。その特徴を整理しながら試合を振り返ろう。

①WB(場合によっては左右のストッパー)の縦スライド

 まずは守備について考えていく。すでに述べた通り、守備時には実質的に5バックを形成する3バックのシステムでは、DFラインの横スライドは容易に行える一方で、そのまま守備をしていたのでは前線のプレッシングの人数が不足してしまう。これでは前線の選手に負荷が偏り、攻撃時にパワーを使えないという弊害が生まれてしまう。

 そのため、3バックでプレッシングを行う場合にはWBが縦にスライドし、大外のレーンを管理するのが一般的だ。これにより、前線の5枚のユニットは中央を閉めて方向を制限することに集中できる上、消耗も抑えられる。この際、縦にスライドしたWBの裏のスペースは左右のCBがスライドしてSB化することで埋めるのが定石である。5バックから1人縦スライドしたとしても4枚のDFが残っているので、ピッチの横幅は問題なく管理できる。ゆえに大胆な横スライドが可能になるという仕組みだ。

 また、相手がハーフスペースに選手を常駐させるようなチームの場合には、CBが縦スライドすることでその選手を迎撃し、残りの4枚でDFラインを構築することも一般的な手段として用いられる。

 ポイントは、DFラインが4枚になった際にそれぞれが「ラインとして守っている」という認識を共有すること。それがないとカバーリングが機能せず、DFラインはバラつき、組織は崩壊してしまう。

②3枚でのビルドアップと深みを取る選手

 3バックのもう1つの特徴として、ビルドアップに割ける人数の多さが挙げられる。相手がどのようなプレッシングの方法を取っても、極論最前線は1枚から3枚までのどれかに大別できるため、最初から3枚をビルドアップに割いている3バックのチームはビルドアップの際に数的不利に陥ることがない。特に2トップでプレスをかけてくるチームに対しては、数的優位かつ相手からずれた位置を最初から取れるという位置的優位も得られるため、有効なことが多い。

 一方で、3バックのビルドアップにおける難しさは、深みを取りづらく、下に重い陣形になりやすいことだ。

 幅はWBが取るとして、どう深みを取るのかが曖昧になりやすい。最悪なのは、WBが必要以上に下がってボールを受ける状態が定常的になることで、こうなるとシャドーがどのような位置を取ったとしても「最悪の配置」と呼ぶにふさわしい配置が出来上がる。

 また、3バックとボランチに前進する意識が希薄になると、状況はさらに悪化する。2トップの脇を取った左右のCBがボールを運ばずに淡白に左右に出すだけになったり、ボランチがラインの奥を取りに行かず、相手の中盤の前にひたすら常駐してパスを待っていたりすると、相手は方向を限定することもマークにつくことも容易である。新たなパスコースを作ろうとWBとシャドーが下がってきたら最後、相手は前向きに守備をしさえすれば良い。ロングボールを蹴られてもそこに待っているのはせいぜい1人か2人しかいないのだから。

 これについては以下の図を見比べていただくとよくわかるだろう。

 すなわち、3バックのビルドアップは、数的優位を作りやすい一方で、役割がはっきりしやすいがゆえに「WBだから」、「CBだから」、「ボランチだから」という意識に囚われやすく、その意識が組織を硬直化させ、発展性のないビルドアップに終始してしまう危険を孕んでいるということだ。

 これら3バックの特徴を踏まえてコロンビア戦を振り返ってみると、そもそも3バックの運用自体がうまくいっていなかったことがよくわかる。

 プレッシングにおいてはWBの縦のスライド、左右のCBの横へのスライドのタイミングが遅く、高い位置を取る相手のSBにシャドーが対応する場面が散見。これによって中盤のフィルターの目が粗くなり、さらにボランチより前の5人の選手が守備で消耗してしまっていた。さらに、ビルドアップでは最終ラインの数的優位を活かせず、左右のCBはボールを運ばず左右に振り分けることに終始。WBとボランチのポジションは下がり、深みが消えた結果プレスの圧力をもろに引き込んでしまった。深みのない状態でバックパスと横パスを簡単に選んでしまうので、コロンビア代表がプレッシングのタイミングを合わせるのは容易だったはずだ。

 崩しに関しても、久保と堂安以外出し手になり得る選手がいないため、久保と堂安が近い距離で出し手と受け手をこなすしかなかった。結果、ポジションバランスは崩れる一方で、ライン間や裏のスペースでの受け手は不足し、崩しのバリエーションは乏しく、テンポも上がらなかった。

もっと危機感を持たなければ

 ここまでこの試合で起きていた「現象」を分析し、3バックの運用に大きな問題があったことを述べてきたと思うが、一方で「3バックを採用したから」日本が負けてしまったというふうには思っていない。事実、後半の途中から三好康児を投入し、4バックにシステムを変更してからも日本は攻守に有効ではなかった、いやむしろ状況は悪化していたようにも見えた。そもそも、相手のオーソドックスな[4-4-2]に対して[3-4-2-1]を採用してあれだけビルドアップがうまくいかないのだから、システムを4バックにして噛み合わせを良くしてしまっては、ビルドアップがより困難になるのは必然である。

ドリブルを仕掛ける三好

 この試合で顕在化した問題の本質は、もっと深いところにあると感じている。コロンビア代表と比べて明らかに劣っていたのは、選手の頭の中にある「イメージ」の部分だ。序盤、コロンビア代表はビルドアップの際にボランチをDFラインに落として3枚でボール出しを試みたものの、それが日本の3トップに対して噛み合ってしまいうまくいかないことに気付くと、途中からその問題を修正し、2CBでの前進に切り替えた。さらには、守備時における日本のWBと左右のCBとの相互作用が弱いこと、さらに日本のDFラインが下がってしまいがちなところを徐々に認識し、最終的にはそこから得点を生み出した。

 「既製品」として持っている戦術的解決策のバリエーションの差。戦術的進歩のスピードを上げ続ける世界と日本の間で開き続けているのはまさにこの部分であると言え、これはもはや代表のレベルに至ってから何とかなるような問題ではない。日本サッカー全体に根付く文化と育成、そしてそれをより良いものにしていく試行錯誤の質に大きな問題があると言わざるを得ない。育成年代を見ても、リーグ戦中心の日程はいつまで経っても導入されず、実行されているサッカーの質やバリエーション、ピックアップされる指導者の発言の内容、どれを取っても変化のスピードは世界よりも、いや近年ではアジアの周辺諸国と比べても著しく遅い。

 繰り返しになるが、コロンビア代表は強かった。しかし、負けたことではなく、戦術的な対応がほとんどできなかったことは日本側の問題である。そして、その問題は代表監督が誰であるとか、スタメンが誰であるとか、システムが何であるとかという次元の話ではなく、日本サッカー全体が抱える問題の結果であるということを全員が認識しなければ、と思う。変化に伴う痛みを避けるため、変化を拒絶し続けてきた結果がついに表出し始めている。日本の置かれた状況から目を背けずにしっかりと認識し、痛みを受け入れ変わろうとしなければ、待っているのは緩やかな衰退だけだ。


Photos: Getty Images

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戦術

Profile

山口 遼

1995年11月23日、茨城県つくば市出身。東京大学工学部化学システム工学科中退。鹿島アントラーズつくばJY、鹿島アントラーズユースを経て、東京大学ア式蹴球部へ。2020年シーズンから同部監督および東京ユナイテッドFCコーチを兼任。twitter: @ryo14afd