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内田、原口、細貝の元同僚MFがオーストラリアに見つけた居場所

2019.02.14

名優たちの“セカンドライフ”

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。

from AUSTRALIA
Alexander BAUMJOHANN
アレクサンダー・バウムヨハン

 かつてシャルケやバイエルンでプレーした天才MFが、数奇なキャリアを歩んでいる。2017年夏にヘルタ・ベルリンを退団したアレクサンダー・バウムヨハンは、ブラジルのコリチーバに移籍し世間を驚かせた。そして2018年夏、オーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズへ加入。かつてシャルケの下部組織で同部屋だったマヌエル・ノイアー(現バイエルン)も、盟友の冒険に驚いているに違いない。

 彼のキャリアが狂ったのは2016-17シーズンのことだった。ヘルタとの契約を16年3月に1年間延長したばかりだったというのに、パル・ダルダイ監督の構想から突然外れてしまったのである。ベンチ外が続き、冬合宿の参加も許されなかった。

 「戦力外にするなら、なぜ契約を延長したんだ。自分はクラブ内政治の犠牲者だ」

 メディアに訴えたが状況は変わらず、結局1試合もチャンスを与えられずシーズン終了。給料をめぐり裁判沙汰にもなった。

 失意のバウムヨハンは「新しい挑戦が必要」と考え、国外へ出ることを決意。選んだのは、妻タティの母国ブラジルのコリチーバだった。

バウムヨハンが4歳上のタティと出会ったのは、17歳の時だ。ドイツ国内のあるパーティーで知り合い、連絡先を交換。タティはまだ学生でブラジルに住んでいたが、翌夏のオフに当時シャルケの同僚だったリンコウンの故郷をバウムヨハンが訪れた際、再会を果たして交際が始まった。

 「会った瞬間、運命の人だと思った。妻の国にポジティブな印象があり、いつかプレーしたいと思っていた。自分はポルトガル語をしゃべれるし、きっとうまくいくと思った」

バウムヨハンとタティさん

 だが、待っていたのはトラブルの連続だった。ビザの発給遅れに始まり、彼の獲得に動いた監督の解任に右手の骨折……チームに貢献できず、コリチーバは2部へ降格してしまう。その後移籍したビトーリアでも活躍できず、ブラジルでの挑戦はわずか1年で終わった。

 それでも、バウムヨハンは決断を後悔してはいない。

 「思い切って国外に出た決断を誇りに思っている。成功とは言えないが、その苦しい経験が今に生きている」

 ビトーリアを離れた彼の下にはドイツからもオファーが届いた。だが、選んだのは再び国外のクラブだった。

将来は日本への“ステップアップ”も

 かつて1860ミュンヘンで活躍し、現在は複数クラブの「ドイツ担当スカウト」として働いている元オーストラリア代表FWポール・アゴスティーノの紹介でウェスタン・シドニー・ワンダラーズの監督に就任した、マルクス・バッベルからの誘いがあったのだ。

 「バッベルから連絡があり、すぐに移籍を決めた。僕はキャリアを終えるためにここへ来たわけじゃない。Aリーグで結果を出して、より給料が高い中国や日本に引き抜かれた選手はたくさんいる。ウェスタン・シドニーは2012年にできたばかりの若いクラブだけど、2014年にACLで優勝した。来年には新しいスタジアムができる。再びACLでプレーできるように貢献し、自分自身もステップアップしていきたい」

 ブラジル時代と違い、監督がドイツ人なのは大きなアドバンテージになった。[4-2-3-1]のトップ下としてプレーし、昨年11月3日のウェリントン戦で初ゴールをマーク。チームは中位で、個人としても2ゴール1アシスト(第18節時点)と数字は物足りないが、現地メディアからは「チームのベストプレーヤー」と称賛されている。

 本人は、「オーストラリアはフィジカルが強いという先入観を持っていたが、技術レベルも高い。本田圭佑、トイボネン、ニーダーマイアーを補強したメルボルン・ヴィクトリーが優勝候補だと思う」と 実際にプレーした印象を口にしている。

 また、性格面の評価も高い。12月15日のシドニーFCとのダービーではGKが26分に退場となり、ピッチを去らなければならなくなった。ロッカールームで頭からタオルをかぶってうなだれる場面が映され、すぐにネットで「不満爆発か?」と話題になった。だが試合後、バウムヨハンはこう否定した。

 「GKはいつも僕たちを救ってくれている。全然怒ってなんかいない。サッカーはミスのスポーツだ。僕たちはミスの上に生きているんだ」

 エースとして、リーダーとして存在感を示すバウムヨハン。遠いオーストラリアの地で、彼はついに自分の居場所を見つけた。

Alexander Baumjohann
アレクサンダー・バウムヨハン

(ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ)
1987.1.23(31歳) 178 cm / 75kg MF GERMANY

2005-07 Schalke

2007-09 Borussia MG

2009-10 Bayern

2010-12 Schalke

2012-13 Kaiserslautern

2013-17 Hertha Berlin

2017 Coritiba (BRA)
2018 Vitória (BRA)

2018- Western Sydney Wanderers (AUS)

Photos: Getty Images, Bongarts/Getty Images

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Profile

木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。