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怪物カラム・ハドソン・オドイ。“プレシーズンMVP”級の衝撃

2018.08.22

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W杯直後で主力の合流が遅れたこともあり、例年以上に若手の抜擢が目立った18-19のプレシーズン。アピールのチャンスを得た各クラブ期待の若きタレントたちの中でも、“プレシーズンMVP”級の活躍を披露したのがチェルシーの俊英、カラム・ハドソン・オドイだ。2000年生まれ、17歳のドリブラーの目の前に広がる、大いなる可能性に迫ろう。

 育成改革の成果が着実にユース世代の結果へと繋がりつつある「フットボールの母国」イングランド。特に2017年に開催されたU-17W杯を制したメンバーは、所属する各クラブでも近未来の主力として期待されている。得点王に輝いたライアン・ブリュースターはリバプールとプロ契約を結び、「ストックポートのイニエスタ」と称される大会最優秀選手フィル・フォデンはマンチェスター・シティでペップ・グアルディオラの寵愛を受ける。

 そんな中、6歳からチェルシーのユースチームに所属するカラム・ハドソン・オドイがこのプレシーズンで脚光を浴びた。「世界で一番、エデン・アザールに憧れている」と語るドリブラーは、「ユース最高傑作の1人」という評判を引っ提げてトップチームでのレギュラー争いに挑む。

写真は2016年に行われたU-17欧州選手権予選でのもの。イングランド代表にとっても期待の星だ(右はウォルバーハンプトンのモーガン・ギブス・ホワイト)。なお、昨年のU-17W杯ラウンド16日本戦にも出場している

 ハドソン・オドイの特徴としてドリブルに着目する識者は少なくないが、実際のところ彼のドリブルは発展途上。単純なキレ味と俊敏性に限れば、彼以上の若手ドリブラーもいるだろう。ただ、彼が驚異的なのは弱冠17歳で“自らの形”を明確化しているところだ。

 最も得意とするのは、左サイドのライン際で身体を開きながら視野の広い状態でボールを受け、内側へ切れ込んでいく形。相手との駆け引きを好み、ボールが相手から離れるように右足でボールを扱いながら仕掛けるシチュエーションで真価を発揮する。ボールテクニックとドリブルのコースを選択する能力も高く、対面するDFにとっては非常に厄介だ。

 足裏でボールを転がすプレーやシザースを多用するが、そのフェイクはブラジル人的な「遊び心のあるプレー」ではなく「間を作る実利的な技術」として使われている。背筋をピンと張った状態で相手と駆け引きし抜き去る姿は、現役選手で言えば今季レスターからマンチェスター・シティに移籍したリヤド・マフレズを思わせる。加えて長い距離を走るスピードもあり、裏のスペースに走り込む動きも効果的。8月1日のアーセナル戦では俊足SBベジェリンを何度か振り切って裏のスペースでボールを引き出したように、オフ・ザ・ボールの局面でも質の高いプレーを見せる。


新鋭ドリブラー、レギュラー奪取への課題

 カットインを得意とするアタッカーにとって、自らの外側をオーバーラップして囮になってくれるSBとの連係は生命線だ。先に触れたマフレズの場合、背筋の伸びた姿勢を維持することで視野を確保するとともに、キックフェイントを多用し相手DFの意識を囮の選手に向けることで生じた隙を突きドリブル突破したり、あるいはパスで局面を打開したりするプレーも巧みだ。

 その点、ハドソン・オドイのプレーを見ていると、チームに加わったばかりで連係の成熟が十分でないことを差し引いても、まだ仕掛けのタイミングが悪いことが少なくない。また、ドリブラーに散見される悪癖ではあるが、ボールを預けた後の動き直しに乏しいことも気になる。ペドロやウィリアンらライバルとなる選手たちは、基本的なパス&ゴーを決して怠らない。彼らに対抗していくためには、オフ・ザ・ボールの動きの量を増やしていかなければならない。

 もう一つ、改善の余地が多く残されているのがセンタリングの精度だ。コミュニティシールドで対面したマンチェスター・シティのカイル・ウォーカーには「距離を保ちながら内側に切り込むスペースを消す」対応を続けられた。現状では足下のスキルを生かして飛び込んでくる相手を抜くことはできても、切り込むコースを消されてしまうと強みを発揮することが難しい。

 とはいえ、なんと言ってもまだ17歳。チームメイトからは吸収力を絶賛されており、トップレベルで求められるスキルを習得して、新指揮官サッリの切り札になれるだろうか。

カラム・ハドソン・オドイ
Callum HUDSON-ODOI

2000.11.7(17歳) 177cm / 75kg FW ENGLAND

Playing Career
2017-  Chelsea

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Photos: Getty Images

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カラム・ハドソン・オドイチェルシー

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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