“両SBのポジション移動”に“パーマーの解放”。マレスカ・チェルシーの[3-2-5]が持つ普遍性と特異性
エンツォ・マレスカの下、復活への足がかりをつかみ前半戦を終えたチェルシー。彼が攻撃時に採用している[3-2-5]は今や多くの指揮官が実践している形だが、ひと口に[3-2-5]といってもチームによってその機能性には差異がある。チェルシーのスカッドを活かすマレスカ流[3-2-5]の特徴について分析する。
読者の方は覚えているでしょうか。らいかーるとがポジショナルプレーの連載をしていたことを。
「ポジショナルプレーってなんですか?」
この問いをきっかけに、ポジショナルプレー連載は始まりました。ポジショナルプレーをしているであろうチームたちを分析することで、ポジショナルプレーとは何なのかを解き明かす連載の予定でした。しかし、時はAI時代。Grokに聞いてみると、こんな答えが帰ってきます。
「ポジショナルプレー(Positional Play)は、サッカー戦術の一つで、主にバルセロナの元監督ジョゼップ・グアルディオラによって発展され、普及した戦術です。この戦術の基本的な考え方は以下の通りです:
基本概念
・スペースの支配: フィールド上のスペースを効果的に支配し、相手チームが攻撃的なオプションを持つスペースを最小限に抑えることを目指します。
・ポジショニング: 各選手が特定のポジションを取り、それぞれの位置から効率的にパスを繋ぐことでボール保持を強化します。このため、選手は常に一定の位置関係を保つことが求められます。
・ボール回し(Possession): 高いボール保持率を維持することで、相手を疲れさせ、ミスを誘発します。ボールを保持している間、チームは次のアクションを準備し、スペースを見つけ出します。
主要な要素
・フォーメーション: 4-3-3や3-4-3など、選手がピッチ上で形成する形状が重要ですが、その中でも重要なのは選手の動きと位置取りです。
・ゾーン防衛: 各選手が特定のゾーンを担当し、そのエリア内で相手の動きを制限します。
・パスの選択肢: 常に複数のパスオプションを持つことで、相手のプレスを崩し、ボールを安全に保つことができます。
・動的ポジショニング: 静的な位置だけでなく、ボールの動きに応じて選手が流動的に動き、空いたスペースを活用します。
利点
・攻撃の多様性: 相手がどこかをカバーしている間に別のスペースが生まれ、そこから攻撃を仕掛けることが可能。
・守備の安定性: 相手が攻撃のチャンスを探す際に、スペースを与えず、効果的に守備することができます。
欠点
・実行の難しさ: 高い技術と理解が必要で、選手一人ひとりが戦術を深く理解しなければなりません。
・プレスに弱い可能性: 相手が激しいプレスをかけてきた場合、ボールを保持するのが難しくなることがあります。
ポジショナルプレーは、選手間のコミュニケーションと理解が非常に重要であり、チーム全体が同じビジョンを共有することが成功の鍵となります」
もうこれでいいじゃないか!という多くの声が聞こえてくるような気がします。そこで、次のステップに移行します。ぶっちゃけ、近年のサッカー界はどこも似たような仕組みを持つチームばかりになってきていました。猫も杓子も[3-2-5]と言い始めて何年でしょうか。最近になって[4-2-3-1]ベースのチームが復活してきていますが、それでも[3-2-5]は猛威を振るっています。ただし、登場したばかりの頃の[3-2-5]からは姿を変えていて、おそらく最初の立ち位置から変化のない[3-2-5]は見かけることが珍しいのではないでしょうか。
特定のチームを分析する際、ボール保持、ボール非保持、トランジションの局面それぞれを整理していくのが一般的になっているかと思います。ただ、今回はそれとは異なり、[3-2-5]の仕組みの違いに着目して分析していくことで、チーム間の差異を見つけていきたいと思っています。
チェルシーはペップ・グアルディオラの直弟子であるエンツォ・マレスカに率いられて昨シーズンの不振から脱却し、プレミアリーグでCL出場圏内につけています。シーズン当初は大き過ぎるスカッドを不安視する声もありましたが、ターンオーバーを活用してカンファレンスリーグとの過密日程を乗り切り、ケガ人を抑えられていることも大きいでしょう。[3-2-5]の始祖であるグアルディオラに学んだマレスカは、[3-2-5]にいったいどんな機能性を持たせているのでしょうか。
基本配置と移動を任されている両SB
[3-2-5]を採用するうえで大切な要素の1つとなるのが、大外レーンに配置する選手の特性です。特に、ウイング気質の強い選手を起用したい場合には、併せてポジションを移動する役割をこなせる選手を準備する必要があります。配置を移動できる選手を準備せずにウイング気質の強い選手をそのままウイングバックに配備してしまうと位置取りが硬直してしまい、最終ラインで守備に奮闘することになりかねないからです。ボール非保持時に3バックではなく4バック、特に[4-4]の配置を意識するチームにとっては、この移動をする選手が生命線になってきます。……
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Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。