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「後の先」を取るストライカー、名古屋の超大物FWジョーの本質

2018.02.26

footballista Pick Up Player


Jリーグデビュー戦でさっそく初ゴールを挙げた名古屋グランパスの新外国人FWジョーは、昨シーズンのブラジル1部リーグで得点王とMVPをダブル受賞した超大物だ。ワールドカップメンバー入りを現実に見据えるブラジル人ストライカーのプレースタイルに迫る。

 欧州サッカー好きにとって、名古屋グランパスの新外国人のイメージはマンチェスター・シティでの記憶によって形成されているかもしれない。

 身長は高いが、細身でテクニカルなプレーを好むブラジル人ストライカーは、CSKAモスクワ時代に77試合44ゴールという圧倒的な実績を残し、当時のクラブ史上最高額となる1800万ポンド(約27億円)の移籍金でマンチェスター・シティに加入した。しかし、激しいぶつかり合いと速い展開で知られるイングランドサッカーへの適応に苦しみ、レンタルでエバートンやガラタサライを転々とする。結局、才能の片鱗を見せながらも悪癖である素行の悪さによって評価を落とし、母国ブラジルへと戻ることになった。

 本人が語るように1つの転機になったのは、プロテスタント系の教会に通い始めたことだろう。夜遊び癖で知られていた奔放な自由人はアルコール摂取をやめ、若手の見本となる練習熱心なリーダーへと変貌した。同じパワータイプの怪物FWアドリアーノが自分をコントロールできずに消えていった一方、ジョーは終わりかけていたキャリアを自らの手で取り戻した。

待って、待って、GKを先に動かす

 その精神的な成長は、おそらく現在のプレーにおける最大の武器に繋がっている。大型ストライカーとしては規格外に柔らかなボールタッチを駆使して、ジョーは味方のパスを正確にコントロールしながら次のプレーへと繋げる。そこから彼は「待つ」ことができるのだ。

 両足での正確なシュートを備える生粋のストライカーは、焦ってシュートを撃つのではなく冷静に相手GKが動くのを待つ。そして、相手の反応できないコースへとボールを流し込むのだ。飛び出したGKの股を抜くシュートや浮かせるシュートは得意技で、長い足が少し遅れて出てくるようなシュートフォームによってGKの隙を作り出す。

 また、相手がそのパターンを警戒すれば横へのドリブルでGKを外しながらシュートコースを作り出すことも可能だ。パワー型ではあるが、力任せなミドルシュートを撃ち込む場面は少なく、密集地でも正確なシュートによって狭い隙間を通す。

 ペナルティエリア内では先にポジションを占有しながら相手に競り勝つような形を得意としており、難しい体の向きや角度でもボレーシュートを狙う。足下が柔らかい大型ストライカーは多く存在するが、そのテクニックを「相手GKとの駆け引き」→「正確なシュート」へと昇華できるストライカーは希少だ。派手なテクニックではなく、一瞬のチャンスを逃さない緻密な技術を武器に試合を決める。特に反応速度で勝負する積極的なGKは、ジョーの「罠を仕掛ける」ような老獪な駆け引きに手を焼くはずだ。

ファーサイドの「頭」も脅威

 イングランド時代はフィジカルの競り合いに苦しんでいたジェイ・ボスロイド(現コンサドーレ札幌)がJリーグの舞台で空中戦を武器に結果を残したように、ジョーの堂々たる体躯からのヘディングは強力な武器となるだろう。クロスに対する動き出しの質は平凡で、パターン自体は決して豊富ではないが、ブラジル時代もファーサイドで相手より高い打点から押し込むようなゴールを何度か決めているように、高い弾道のクロスをファーサイドで待つ場面では競り勝てる。クロスボールの質とニアサイドで守備を引き付けられる選手の動きが重要になってくるが、192cmの長身でターゲットマンとしても脅威となるのは間違いない。

 ブラジル代表でも、ガブリエウ・ジェズスやロベルト・フィルミーノのように器用に動き回りながら中盤をサポートするCFは豊富な一方、高さを武器にする選手は多くない。「ジェズスの控えには異なるタイプを」という視点ではビルドアップに関与できる利他性とフィジカルを兼ね備えたジョーはブラジル代表候補に残り続けるはずだ。実際、現在もブラジル代表は高さというオプションを重要視しており、サンパウロ所属のジエゴ・ソウザが出番を得ている。彼も186cmという高さを評価されているとはいえ、本職は攻撃的な中盤だ。前線でのプレーでは、ジョーに分がある。

 カセミロとフェルナンジーニョを中盤センターに並べることもあるチッチ監督の現実的なアプローチを考慮すれば、長身で経験豊富なジョーの代表入りは十分あり得る。キャリアの集大成になるかもしれないワールドカップシーズンに、ヨーロッパからのオファーも噂される中、Jリーグの名古屋グランパスを選んだ。半年後に迫った夏の祭典も視野に入れながら、覚悟を持って日本という舞台を選んだブラジルリーグMVPのプレーにぜひ注目してほしい。

ジョアン・アウベス・デ・アシス・シウバ “ジョー”
João Alves de Assis Silva “Jô”

1987.3.20(30歳) 192/97 FW BRAZIL

Playing Career
2003-05 Corinthians
2005-08 CSKA Moskva (RUS)
2008-11 Manchester City (ENG)
2009   Everton (ENG)
2009-10 Everton (ENG)
2010   Galatasaray (TUR)
2011-12 Internacional
2012-15 Atlético Mineiro
2015-16 Al Shabab (UAE)
2016   Jiangsu Suning (CHN)
2017   Corinthians
2018-  Nagoya Grampus (JPN)


Photos: Getty Images

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。