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欧州サッカーの勢力図を変える中央アジア勢2つの“史上初”

2018.02.20

フットボール・ヤルマルカ

 今シーズンの欧州カップ戦ではアゼルバイジャンのカラバフがCL本戦に出場し、カザフスタンのアスタナがEL決勝ラウンドに進出。それぞれの国にとって史上初の快挙を成し遂げた。旧ソ連の両国には豊富な資源やイスラム色の強い文化、強権の大統領といった共通点があり、UEFA加盟国の中でも異色の存在。これまで越えられずにいた欧州の高い壁を、中央アジア勢が継続的な強化によって打ち破り始めている。

 カラバフは新興国にありがちな、自国の資源マネーに支えられた金満クラブではない。本拠地アグダムは隣国アルメニアとの領土紛争により壊滅状態にあり、チームは1993年から首都バクーで避難生活を続けている。今回の彼らの躍進は現在も同国が抱える戦争の爪痕に、再び国際的な注目が寄せられる契機となった。

 2001年に食品会社「アゼルサン」を経営するトルコ人実業家ガゼル兄弟がクラブを買収。欧州に通用する外国人選手の補強が可能になり、2008年から指揮を執るグルバノフ監督がバルセロナを参考にショートパス重視の戦術を練り上げながら欧州の舞台を虎視眈々と狙っていた。今季のCL初挑戦はGS敗退に終わったものの、強豪アトレティコ・マドリーから勝ち点2を獲得し、国内では「歴史的な結果」と拍手喝采。移籍手続きのトラブルにより半年間プロバスケ選手としてプレーした異色の経歴を持つ主将のサディホフは「勝ち点が目標ではなかった」と自分たちの偉業に驚いていたが、指揮官は「楽しむことができた。こういう経験を積めばもっとやれる」とある程度の手ごたえをつかんだようだ。

大統領ご満悦

 一方、3季連続欧州カップ戦出場のアスタナは国営のエネルギー企業が母体となり2009年に誕生。むやみに大物選手を獲得するのではなく、自国選手の育成を重視しながらわずか5年で国内リーグ初制覇を達成し、現在4連覇中の絶対王者となっている。カザフスタンではナザルバエフ大統領が「スポーツは国の発展の象徴」と宣言し、2030年のW杯開催を計画中。そのためには是が非でも自国の代表とクラブの欧州における存在感を高めておきたいのである。

カザフスタンのナザルバエフ大統領

 クラブのハミトジャノフ会長はELでのGS突破を受けて「サッカーに限らず、我が国のスポーツ史に残る出来事。決勝ラウンド進出は我われにとってミッションではなく夢だった」と感無量。大統領も「アスタナの建都20周年に花を添える成果」とご満悦の様子でメッセージを寄せた。さらに会長は「これはセンセーションではない。我われが手ごわい相手だということはすでに欧州中に知れ渡っている」とさらなるステップへの期待と自信を強調した。

 両クラブの躍進は世界のトップレベルからすれば小さな一歩かもしれない。しかし、国を挙げて進化を続ける中央アジア勢の台頭は長距離移動や時差といったピッチ外の苦難をもたらし、今後さらに対戦相手を悩ますだろう。欧州サッカーの風景は確実に変わりつつある。


Photos: Getty Images

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Profile

篠崎 直也

1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。