
ラウンド16進出を懸けた決勝トーナメント・プレーオフで、ASモナコのチャンピオンズリーグが終了した。3日前のリーグ戦に続く圧巻のゴールゲットも、チームはベンフィカの前に敗北。ポルトガル・リスボンでの第2レグ後、南野拓実が悔しさを滲ませながら今シーズンのCL挑戦を振り返った。
「ああいうチャンスがあったら振り抜こうと決めていた」
「あともう少し」、というところまで迫りながら勝利を逃すというのは、「完敗でした」よりも悔しいのではないか、そんなふうな後味を残した試合だった。
2月18日にリスボンで行われたCLプレーオフ第2レグのベンフィカ対モナコ。3-3という撃ち合いのエキサイティングな90分となったが、ホームでの第1レグを0-1で落としていたモナコは2戦合計4-3で敗退。決勝トーナメント進出の道はここで断たれてしまった。
「難しいですね。ポジティブには捉えられないかな……。というのも、結果がすべての試合だったので、僕らにとってはどんなに戦い方が良くなくても勝ちたい試合だったし、そのチャンスが、本当にそれができるって試合中に何度も思える時間帯があった中で、こういう形で負けてしまうのはすごく悔しいです……」
試合後、モナコの選手たちがうつむきがちに移動のバスへと向かう中、取材エリアで報道陣の質問に応じてくれた南野拓実からは、見るからに悔しい思いが滲み出ていた。
彼の言葉通り、何度も「勝利」を期待できる場面があった。
前半22分にリードを奪われたが、そこから約10分後、南野がニアサイドから右足を振り抜く豪速球で貴重な同点弾をマークした。相手の先制点を帳消しにしただけでなく、ここからの試合を戦う上でモナコの選手たちの気持ちに大きなプラスをもたらし、ベンフィカにはプレッシャーを与え、戦い方を変えさせるという価値あるゴールだった。
「ああいうチャンスがあったら振り抜こうというのは決めていたので、ナチュラルに体が動きましたし、チームとしても、先制された後で前半のうちに1点を取れたので、良い時間帯に決められて良かったです」と自身のゴールを振り返った南野。
さらに後半51分、エリス・ベン・セギルが盟友マグネス・アクリウシュのパスから勝ち越し点。これでモナコは、第1レグと合わせて2-2の同点に持ち込むことに成功した。
ところが76分、自陣ゴール前で相手のクロスをインターセプトに行ったCBティロ・ケーラーがPKを献上。主砲バンゲリス・パブリディスに決められて2-2、合計では再び3-2のビハインドに。
しかしこの日のモナコにはまだ流れがあった。80分に投入されたFWジョージ・イレニヘナがほぼファーストタッチで、相手GKの脇腹の下を抜く左足シュートを決めたのだ。
モナコ陣営はまるで試合を制したかのような喜びようだったが、南野は「まだ試合は終わっていない」と言わんばかりに黙々とボールを拾いに走った。
「まだもう1点いるやろ!?」
……



Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。