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サウールとコケはアトレティコに不可欠な“守備型”司令塔

2017.12.08

注目クラブのボランチ活用術:アトレティコ・マドリー

シャビ、シャビ・アロンソといった名手たちが欧州サッカーのトップレベルから去ったここ数年、中盤で華麗にゲームを動かすピッチ上の演出家は明らかに少なくなっている。では実際のところ、各クラブはボランチにどのような選手を起用し、どんな役割を求め、そしてどうチームのプレーモデルに組み込んでいるのか。ケーススタディから最新トレンドを読み解く。

 [4-4-2]の中盤の底にダブルアンカーのガビ、ティアゴ(昨シーズン限りで引退)を置くのがシメオネ監督のバージョン1.0だとすると、やや攻撃的にシフトしたアンカー1枚(ガビ)+ゲームメイカー2枚(サウール、コケ)がバージョン2.0である。

 引かれると弱いカウンターサッカーの限界を打破するため、万能MFサウールの台頭を機にシメオネはポゼッションを志向したり[4-2-3-1]を試すなどしたが、結局は[4-4-2]のカウンターサッカーという大元は変えないまま、選手のクオリティを上げるマイナーチェンジに留まった。

 よって、シメオネが中盤中央の選手に要求するものはまずは守備、次に攻撃である。他チームなら王様的なトップ下を張れるコケやサウールも、ここでは徹底的に守備戦術を叩き込まれた忠実な兵隊に過ぎない。ボールホルダーにプレスをかけプレーを遅らせ、その間に後退してスペースを埋めて4人+4人のブロックを作る、という作業を何度でも繰り返す。

 実はこの守り方だからこそ、ゲームメイカーはサウールとコケでなくてはならない。ボールを奪い返した瞬間、狭いスペースに相手も味方も密集した状態で相手のファーストプレスをかわせる技術の持ち主でなければ、押し込まれっぱなしになるだけだからだ。素早くワンタッチでパスを交換して前を向く余裕を作ってから、前線へ中距離以上のパスを送るという速攻のシナリオは2人抜きでは描けない。

 もう一つ特徴的なのは、ゲームメイカーに通常要求されるサイドチェンジによるボールの散らしが彼らに要求されていないこと。その理由は、2人とも選手が密集したゾーンで常に肉弾戦を挑んでいるような状態にいて、グラウンドを見渡す余裕がないことに尽きる。ワンツーやスルーなどのコンビネーションプレー、あるいは自らのドリブルで打開を図り、行き詰まったら後方に控えているガビにバックパス。彼がサイドとリズムを変えて作り直す、という役割分担になっている。

 守備に忙殺され、せわしく攻撃する姿はゲームメイカーの従来のイメージとは異なる。だが、得点には必ず2人の決定的な「小技」が挟まっている。フィジカル&プレスのモダンなサッカーの、脇役だが不可欠なボランチの姿がそこにある。


Atletico formation
17-18 チームスタイル:カウンター
右コケ、中央サウールとゲームメイカー2人だから攻撃的に見えるが、プレー時間の60%を占める守備のタスクを重視しての人選である。下部組織出身者ならではの忠実さでプレス+マーク+リトリートを繰り返す。

Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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