“リアルすぎる”FM26のデータで読み解く「進化するSBのスキルセット」
この記事は『Football Manager 26』の提供でお届けします。
PlayStation®5、Xbox Series X|S、PC(Steam/Epic Games Store/Windows)、Mac、Nintendo Switch、Netflix、Apple Arcadeにて好評発売中のサッカークラブ経営シミュレーション『Football Manager 26』(以下 FM26)は詳細なデータで知られており、実際のサッカー界でもスカウティング資料として参照されることがあるほど。
最新作『FM26』のデータベースには、男子・女子を合わせて50万人以上の選手が登録されているという。その膨大かつ精緻な選手データを手がかりに、西部謙司氏が現代サッカーで大きく変貌を遂げたポジション「サイドバック(SB)」の進化を考察する。
もはや「サイド」にも「バック」にもいない
SBは最も変化したポジションだ。求められる技術の変化という意味ではフィールドプレーヤー化したGKの方が大きいが、SBはプレーエリアが変化している。現代のSBはもはや「サイド」にもいないし、「バック」でもなくなっているのだ。
ニコ・オライリー(マンチェスター・シティ)、ドミニク・ソボスライ(リバプール)、フェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード)はある意味で現代サッカーを象徴する“SB”だが、いずれももともとはMFの選手であり、現在でもMFとして起用されることも多い。
彼らは総じてテクニックの評価が高い。ソボスライはテクニック、パス、ファーストタッチの項目が極めて高い「16」という数値をデータが示している。ハンガリー代表では不可欠なプレーメイカーなのだからこれも当然で、FKという武器も持っている。

バルベルデはチームワーク、意志の強さで「18」という最高に近い評価。運動量とスタミナも「18」で、チームのために献身的にプレーするスタイルが浮き彫りにされている。

一方、典型的な左SBであるマルク・ククレジャの場合、意志の強さと運動量、積極性というメンタル面での数値が「18」と非常に高く、加速力も「16」でフィジカル面も数値が高いが、テクニカル面ではソボスライ、バルベルデに及ばない。ただ、従来のSBに求められる資質としては十分で、世界最高クラスといっても過言ではないだろう。

ソボスライやバルベルデのようなMFタイプをSBとして起用するか、ククレジャのような従来型なのかは、チームのプレースタイルによって変わってくる。
ボール保持力が高く、多くの時間攻撃しているプレースタイルのチームならば、MF的なSBが適しているが、そこまで保持力が高くなくて守備機会もそれなりに多いなら従来型のSBがフィットする。ただ、5大リーグのビッグクラブは総じて保持力が高く押し込む展開のゲームをしているので、シティ、リバプール、レアル・マドリードなどはSBにMFタイプを起用しているわけだ。
SBは「対ウイング守備」から始まった
近代サッカーの始まりでDFは1人だった。やがてオフサイドのルール改定とともにDFは2人、さらに3人に増えていった。現在の2人オフサイド制ルールになってからは3バックのWMシステムが普及し、およそ30年間も主要システムとして使われていた。
WMの3バックにSBはいない。相手のウイングをマークするのは3バックの左右のDFの主要任務ではあったが、サイドハーフと分担していた。明確にウイング専用のDFになるのは4バックの導入からである。ここでSBという呼称が定着する。それまでは左右のDFはFB(フルバック)と呼ばれていた。
俊敏でドリブルのテクニックに優れたウイングをマークするSBには走力とスタミナが求められ、特にスピードは不可欠な能力だ。これは現在でも変わらない。ソボスライのデータを見るとスピードが「16」と高い数値になっている。バルベルデは「17」、加速力も「17」でサイドでの対人能力に欠かせない速さが抜群。従来型SBのククレジャのスピードが「14」なのは意外だったが、加速力は「16」。本職がMFでもDFでも速さという要素は外せないわけだ。
ファッケッティから始まった“攻撃するSB”
当初、SBの任務は対面のウイングを抑えることだった。しかし進化はすぐに始まっている。1960年代にはインテルとイタリア代表の左SBジャチント・ファッケッティが「攻撃するSB」として名を馳せた。わざわざ「攻撃する」と言われたのは、当時のSBは攻撃しなかったからだが、ファッケッティの成功でSBに攻撃という新たな役割が加わる。ウイングを置き去りにして前進することで数的優位を作れることに着目し、SBはやがていっせいに攻撃し始めるようになった。70年代、西ドイツ代表の左SBパウル・ブライトナーは元MFで、タッチライン際だけでなく中央まで進出。現在のSBの先駆けである。
80年代にはさらに大きな変化が起こった。対面のウイングが消滅したのだ。
2トップが全盛となり、SBはマークすべき相手がいなくなった。2トップを2人のDFがマークしてリベロがカバーする、2ストッパー+リベロの3バックという対策が打たれ、SBはウイングバックという形に変化した。
ウイングバックは、ほぼウイングの攻撃型からSBに近い守備型まで、役割に応じて起用される選手もさまざま。ただ、前後に味方が配置されていないために稼働範囲が一気に広がってスタミナは不可欠になっていった。ちなみに、データの運動量項目はソボスライが「16」、バルベルデ「18」、ククレジャ「18」といずれも高い。彼らはいずれもウイングバックにも適応できる能力があるわけだ。
4バックの場合でも、ウイングがいなくなったためにSBはクロスボールの供給を引き受けることになり、この時点で攻撃しないSBなどあり得ない状況になっている。
ポジショナルプレーが生んだ「偽SB」
守備専用から始まって、攻撃でウイングやサイドMFの役割も加わったが、SBの主戦場はあくまでタッチライン際だった。しかし、2010年あたりからまたしても変化が訪れる。
ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いたバイエルンの左SBダビド・アラバは「偽SB」と呼ばれるようになった。「偽9番」は1940年代からあったが、SBが「偽」になったのはこの時からだ。
当時のアラバはオーストリア代表のMFだったが、すでにバイエルンではSBとして起用されていた。ただ、「偽」ではなく左利きの特性を活かしてサイドを上下するSBだった。「偽」になったのはグアルディオラ監督の方針による。バイエルンはアリエン・ロッベン、フランク・リベリーという強力なウイングを擁していた。SBのアラバは左の大外ではなく1つ内側のハーフスペースへ進出してウイングをサポート、さらにそのまま前線に出る動きを見せる。この内側でプレーするSBは従来にはあまりなかったことから「偽」と呼ばれたわけだが、実質的にMFのアラバを攻撃ではMFとしてプレーさせていた。
偽SBはポジショナルプレーの一環として機能していて、やがて右SBも「偽」化。ポジショナルプレーが普及した現在、SBのMF化も一般化している。
ポジションを超越した「万能型」へ
一方、強力なウイングの復活によって対人守備も問われるようになった。そのためSBのMF化ではなく、守備能力重視でCBをSBとしてウイングに当てる起用も行われている。
ただ、リーグトップクラスのチームは保持力が高く、敵陣に押し込んでのプレーが長い。SBを後方に残す意味がなく、SBを中盤に上げて厚みを作り、より保持力を高めることが重視されている。そのため従来のウイング兼任のSBではなく、中央でテクニックと創造性を発揮できるMFタイプを起用するようになっている。
ただし、守備では自陣でSBとして振る舞い、カウンターアタックを食らった時の戻りの速さも欠かせない。シティの左SBとして起用されているオライリーはMFそのものなのだが、データの加速力「16」が表しているように被カウンター時の戻りの速さを買われている。

MFとしてのテクニック、運動量、戦術眼に加えて、従来のSBに求められてきたスピードと対人守備能力にも秀でている選手はほぼ万能と言える。これに得点力が加われば、もはや1人で試合を決められる存在だ。
CLのラウンド16、レアル・マドリードのバルベルデはシティを相手にハットトリックを決めて第1レグ3-0勝利の立役者となった。この試合のバルベルデはSBではなく右サイドのMFだったが、守備ではシティの切り札である左ウイング、ジェレミー・ドクをマークしていた。唯一、ドクを1対1で止められる選手だったからだ。守備では最大の脅威を抑え、攻撃では長距離を駆け抜けて3得点。バルベルデはメンタル面でのデータ数値が軒並み高い。チームワーク「18」、意志の強さ「18」、さらに度胸が「17」。チームを背負って立つ気概と資質を持つリーダーなのだ。
さまざまな要素が重なり、SBはもはや単なるポジションではなくなった。バルベルデの躍動は、その進化を象徴するものと言えるだろう。
こうした現代SBの役割変化は、FM26の戦術設定でも再現可能だ。選手の能力値とロール設定を組み合わせることで、自分だけの戦術として“進化するSB”を実際にチームで機能させることができる。

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© Sports Interactive Limited 2026. Published by SEGA.
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
