高卒ルーキーが逞しく掴んだレギュラーの立ち位置。「いわきFCがJ1に昇格することは、自分がここに来て最初に掲げた目標」いわきFC・中野陽斗インタビュー
【特集】百年構想リーグで台頭したU-21の新星#2
昇降格というプレッシャーから解放された百年構想リーグでは、勝敗だけでなく「成長」にも大きな価値が置かれる。若手にとって“試される場”であると同時に、“伸びるための舞台”でもある。本特集では、その環境の中で自らの才能をピッチ上で証明し始めたU-21の新星たちに光を当てる。
第2回はいわきFCの中野陽斗インタビュー。神村学園高校ではインターハイと高校選手権の二冠達成にキャプテンとして貢献し、鳴り物入りでJリーグの舞台に飛び込んだ18歳は、開幕スタメンを堂々と勝ち獲ると、以降もレギュラーとして躍動。既にチームに欠かせない戦力として、サポーターからも大きな信頼を寄せられている。そんな高卒ルーキーに今の率直な心境を伺った。
期待の高卒ルーキー、いきなりレギュラーを掴む
――ここまでのJ2・J3百年構想リーグ(第11節終了時)では、高校の卒業式と年代別代表の活動期間を除いてはすべての試合に当たる9試合に出場されていますが、率直に今のご自身の状況はどう感じていますか?
「これだけ試合に出ているので、責任感は感じています。ただ、まだまだ自分には足りない部分があるので、監督やスタッフの方々が使ってくださっていると感じていますし、もっともっと守れる選手に、頼れる選手にならないとなと思っています」
――正直、こんなに早く、こんなに多くの試合に出られると思っていましたか?
「自分としても、『まさかこんなに試合に使っていただけるとは』という想いが強いですね」
――プレシーズンの手応えはいかがでしたか?
「高校選手権の後でもあったので、コンディション調整のためになかなか全体練習に入ることも多くなくて、手応えとしてはそこまでなかったですけど、途中出場で使っていただいた練習試合では自分らしさが出せたのかなと思います」
――選手権のあとも、それこそ地元の鹿児島は祝福ムードでしたよね。
「そうですね。卒業式の前の日に、地元であったパレードに自分と(荒木)仁翔は帰らせてもらって参加したので、そこはありがたかったです」
――ああ、選手権が終わってからは、すぐにいわきの練習に合流したんですね。
「選手権が終わってから、いくつかメディア対応もあったので、1週間ぐらいは学校の方で活動させてもらって、そこからいわきの練習に合流しました。もともと選手権が終わったらキャンプに入ることはわかっていたので、改めてプロの世界でやれる楽しみもありましたし、選手権や高校生活から気持ちもすぐにうまく切り替えることができました」
――キャンプに合流してから、周囲のレベルはどのように感じましたか?
「藤枝(MYFC)との練習試合があって、その時に自分は外から見ていたんですけど、プレースピードの速さだったり、当たりの強さはそこで初めて間近で見たので、『こういう強度でやれるのか』と楽しみになりましたし、練習の中でも1つ1つのパススピードや判断のスピードは、今までとまったく違うなと感じていました。その中でも少しは手応えも感じていたんですけど、『もっとやらないと追い付けない』と思ったので、成長意欲はかなり湧き出てきましたね」
逞しく勝ち獲った開幕スタメン。上々のいわきデビュー
――結果的に開幕スタメンを勝ち獲ったわけですが、これはどのぐらいのタイミングでわかったんですか?
「開幕前に1、2週間ぐらいチームを固める時期があって、そこで開幕戦に向けての紅白戦もあったんですけど、自分も試合に出そうな組の方でプレーしていたので、『これはあるかもな』と感じていました。自分としてはまだまだうまくいかないこともあったので、少し驚きは大きかったですけど、せっかくやるからには楽しんでやろうと思っていました」
――実際に開幕戦(北海道コンサドーレ札幌戦)でピッチに入場していく時には、どういった感情が出てきましたか?
「相手の雰囲気を見た時に、コンサドーレさんは昔から知っているような有名なチームだったので、ちょっと怖さも感じていたんですけど、周りには熱狂的ないわきのサポーターの方々がたくさんいましたし、試合が楽しみな気持ちと、『こういうピッチで頑張りたいな。活躍したいな』という気持ちが出てきましたね。選手権とはまた違った空気を感じていましたし、もうプレーに入ってからは集中して、楽しみながらできたと思います」
――開始6分の守備対応で、木吹(翔太)選手が右サイドで抜かれた後、すぐに中野選手がカバーリングをして、ボールをタッチラインに蹴り出したプレーがありました。あれで少し試合に乗れた部分もありましたか?
「守備の部分ではまず堅実にやろうと思っていた中で、あの選手がドリブラーだということも聞いていましたし、木吹くんが抜かれた後の対応も意識しながら、あそこで奪い切れたら一番良かったですけど、最初のプレーだったので、ああいう形になってしまいました」
――「なってしまった」という感じだったんですね。良い対応だったように見えました。
「カバーリングのタイミングは完璧だったので、それゆえにちゃんとパスを味方に繋ぎたかったというか、ボールを奪い切りたかったなと思いました」
――あとは開始10分にミドルシュートを放っていましたね。あのワンプレーに得点への強い意欲を感じました(笑)。
「最初は『思い切りやりたいな』というか、『試合の流れに乗りたいな』という気持ちもあったので、変なパスミスをするよりは、もう自分から仕掛けて、打てたらシュートを打とうとは考えていました。入っていたら最高でしたけど、まだまだ力が足りないです(笑)」
――試合は1-0で勝利しましたが、プロレベルの90分が終わった時の疲労感はいかがでしたか?
「まずは1-0というスコアだったので、緊張感のある試合が開幕戦から経験できたのは大きかったですし、改めて勝つことの嬉しさは、高校年代のリーグ戦以上に感じましたね。90分終えてみて、キツかったというよりは、『もう終わったんだ。もっともっとやりたいな』という感じでした」
――肉体的な疲労感はもちろんですが、思考の部分での疲労感は高校の時以上にありますか?
「相手にもクロスの時の入り方の速さだったり、考えて駆け引きするところで、高校年代の選手よりも凄いフォワードがたくさんいるので、相手がどういう選手で、どういう考え方で、どうやってくるのかということに対応する頭の疲労感は毎試合感じていますけど、それを感じられていることが自分の経験値に繋がりますし、成長のきっかけになるのかなと思います」
松本山雅戦で味わった「悔しい思い出」と「良い思い出」
――ここまでのリーグ戦の試合で、印象に残っている試合はありますか?
「松本山雅戦(第9節)が悔しい思い出でもあり、良い思い出になった試合でした」
――後半のアディショナルタイムにいろいろなものが凝縮された試合でしたね。
「そうですね。あの1つの対応で、際どい判定はあったにせよ、自分があそこで抜かれていなければなかった失点で、ああいう時間帯にしっかり集中できていなかった結果が、相手のゴールに繋がったと思っているので、そこは悔しい思い出ですけど、より成長するための良いきっかけになりました」
――その後は「今野先輩、ありがとうございます!」というような、劇的な同点弾が生まれました(笑)。
「あの時は本当に感謝しました(笑)。失点は自分の一瞬のスキを突かれましたし、一番集中しないといけないところでやられたので、ああいったワンチャンスをモノにできる選手が、プロの世界にはたくさんいることもわかりましたし、自分に足りない部分を改めて痛感しました」
――ちなみにあの試合のPK戦は何人目のキッカーだったんですか?
……
Profile
土屋 雅史
1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!
