「カウントダウン」はサッカーを面白くするのか?細分化する競技規則に「主観」が残る意味
[特集]現代サッカーは本当につまらなくなったのか――インテンシティと最適化が奪った“余白”の正体#7
「最近のサッカーはつまらない」
そんな声を耳にすることが増えた。だが、それは本当にサッカーの問題なのだろうか。それとも、我々の見方が変わっていないだけなのだろうか。かつてより速く、強く、正確になった現代サッカー。その一方で、「どこか似ている」「息つく間がない」「何かが足りない」と感じる瞬間はないだろうか。インテンシティの向上、戦術の最適化、リスク管理の徹底。勝利を追求した結果として洗練されていくゲームは、同時に“余白”を削ぎ落としてきたのかもしれない。では、その“余白”とは何だったのか。それは本当に失われたのか、それとも形を変えただけなのか。現代サッカーは本当につまらなくなったのか。本特集では、その感覚の正体を多角的に解き明かしていく。
第7回では「8秒ルール」に続き、北中米W杯でも導入されるスローインとゴールキックでのカウントダウンは、サッカーを面白くするのか?細分化する競技規則で「主観」の余地が残る意味とあわせて考える。
「カウントダウン」拡大の裏にあるトレンド
ボール1つあれば世界中のどこでも誰でもできる――この性質がフットボールを世界的なスポーツへと押し上げたのは間違いない。一方、近年のサッカーを見ていてこのようなことを感じたことはないだろうか。
「意外とルールが細かくないか」
スローインやゴールキック、コーナーキック等の再開方法、ファウルや、イエローカード、レッドカード等懲戒にかかるものは広く浸透しているが、フットボールに興味のない人は、オフサイドの概念を理解するにあたりまず壁にぶつかる。上記に挙げた中でも、ハンドの反則に関わる基準や決定的な得点機械の阻止(DOGSO)等、細かく理解を試みようとするとなかなかにハードルの高い基準が示されている。加えて、近年はフットボールをより魅力的で公平なものとする試みの下で細分化が進み、DOGSO1つ取り上げても最終的な懲戒がレッドカードにもイエローカードにもなり得るように、完全な理解を試みようとするとエンターテイメントを楽しむための準備としてはもはや苦行ともいえる領域に達しつつある。
この近年のトレンドに沿って、競技規則(2025-26)にて運用開始されたのが「8秒ルール」のカウントダウンである。GKによる手を用いたボール保持を8秒に制限し、残り5秒から主審がハンドシグナルにより明示的にカウントダウンすることでプレーの再開を促す運用だ。8秒そのものは厳密に計測されるものではなく、起点は主審の判断に依存する。カウントダウンの開始は主審がプレーのフットボールの競技経験者であれば、かつて存在した「6秒ルール」の事実上の形骸化を踏まえ、明示的かつ一定の調整の余地を残すこの運用に一定の納得感を覚えた方も多いであろう。「5秒ルール」として制限時間は異なるが、2026年2月に開催された国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会にて、同年6月に開催される北中米W杯を含めて適用される競技規則改正の中で、このカウントダウンの適用対象はスローインとゴールキックに拡大されることが決定されている。
この決定を受けて、フットボールにもバスケットボールと同じようにプレーイングタイム制が導入される可能性を考えた人もいるのではないか。果たして、フットボールをより魅力的で公平なものとするための根幹を担う競技規則は、厳密な定義や管理の下でその目的を達成することができるのか。少し前の競技規則の改正経緯を交えながら、フットボールはどこに向かおうとしているのか考察したい。
なぜ、ファウルと最終決定者は不変なのか?
いわゆる「大改正」と呼ばれる競技規則(2016-17)の以降、競技規則は少しずつ修正を積み重ねており、その粒度が細かくなりつつある。大きくは、以下の通り分類される。
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Profile
SUSSU
1988年生まれ。横浜出身。ICTコンサルタントとして働く傍らサッカーを中心にスポーツに関わる活動を展開(アマチュアチームのスタッフ・指導者、スポーツにおけるテクノロジー活用をテーマにした授業講師等)。現在は兼業として教育系一般社団法人の監事も務める。JFAサッカー審判資格保有(3級)。
