“軸足リード”を両側で使える稀有さ。ジェフ千葉の17歳・姫野誠のドリブル設計
【特集】百年構想リーグで台頭したU-21の新星#4
昇降格というプレッシャーから解放された百年構想リーグでは、勝敗だけでなく「成長」にも大きな価値が置かれる。若手にとって“試される場”であると同時に、“伸びるための舞台”でもある。本特集では、その環境の中で自らの才能をピッチ上で証明し始めたU-21の新星たちに光を当てる。
第4回は、“軸足リード”を両側で使える両利きのドリブラー――ジェフ千葉生え抜きの17歳・姫野誠。その稀有なスキルを掘り下げる。
“半歩前にいる”ドリブルの正体
2025シーズンのJ1昇格プレーオフ準決勝、姫野誠の投入は60分。その時点でのスコアは0-3。
あと30分間で少なくとも3ゴールが必要だったので、何か思い切った手を打つはずだと思っていたが、杉山直宏に代えて姫野は予想していたより地味な、静かな一手だった。
メンバー表に見慣れない名前があった。
「U-17W杯に行っていた子か」というところまでは思い出したが、どんな選手なのか皆目わからない。ただ、この大一番にメンバーに入れているのだから何かあるのだろうとは思った。
初めて見たのは私だけでなく、大宮の選手もスタジアムを埋めた観衆も、ほとんどの人にとってそうだったに違いない。17歳、デビュー戦。だが、最初のプレーを見た瞬間に「あ、大丈夫だ」という気がした。フットボーラーだと思ったからだ。
気負いは全く感じられない。特に考えなくても正解が出せるタイプのよう。ファーストタッチが安定していて慌てていない。0-3で出てきたわりには淡々としていたが、かえって安心感があった。
83分、3-3とするゴールを決める。
DFと競走しながら左足を伸ばしてのループシュート。本人が「狙ってはいない」と言っていた通りなのだが、とっさに左足を出している。「ああ、そういうことか」と。両足利きなのだ。
サイドプレーヤーのドリブルの仕掛け方として、いわゆる「軸足リード」がある。右利きの左サイドなら、ボールを扱う右足より左足を前方に置く形だ。DFは相手とゴールを結んだ線上に立つという原則があるが、軸足リードの相手に対して、しばしばボールとゴールを結ぶ線上に立ってしまう。そうすると、ドリブラーはすでに左足が半歩分前に出ているので縦へ加速するとその分、有利になる。ヨーイドンに見えて、半歩フライングしているからだ。逆にDFが体の方へ合わせたら、カットインが有利になる。
……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
