米国に遠征した9月シリーズを1分1敗で終えた日本代表。2-0で完敗を喫したアメリカ戦で突きつけられた北中米W杯への課題と現実を、『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者、らいかーると氏と探ってみよう。
オークランドでのメキシコとの激闘を終えて、同じ米国内でも3時間の時差を伴うコロンバスへ4~5時間のフライトで飛んだ日本。その先に待つ相手は、やはり北中米W杯開催国のアメリカだ。昨年9月にマウリシオ・ポチェッティーノが監督に就任したものの、現在は2連敗中で不穏な空気にあるらしい。韓国戦の敗戦を受けて3バックに修正してきた彼らにとっては、親善試合だが「絶対に負けられない戦い」という位置づけになるのだろう。一方の日本は長距離移動もあってか、メキシコ戦から先発全員を入れ替えるターンオーバーを敢行。実験的な一戦となった。
荒木がプリシッチの対応に追われた理由
キックオフから繋ぐ意識を鮮明に示すアメリカの振る舞いは、メキシコと共通するものだった。結果を求められながらも、自分たちがどれだけできるかを試すことは忘れていない。荒木隼人が左に長友佑都、右に関根大輝を両脇に抱える3バックのスクランブル感はいったん置いておくとして、日本は変わらぬハイプレスを実行する。[3-2-5]でボールを保持するアメリカに対して、CF小川航基はGKマット・フリースまで追いかけ回していき、メキシコ戦と似た立ち上がりとなっていった。
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配置が噛み合う中で、最初のポイントは2シャドーのアレックス・センデハスとクリスチャン・プリシッチの立ち位置だった。ボールがアメリカの陣地にある状況では、日本は関根と長友が彼らをマンマークで深追いしていく決まりごととなっている。ただし若干の混乱が見られたのは自陣に撤退した後。センデハスたちにボランチの背後をうろちょろされると、担当するのは長友らCBか、前田大然、望月ヘンリー海輝のウイングバックかが不明瞭だった。序盤にアメリカの左サイドでフリーマンが目立った背景はこんなところにある。
日本のゴールキックはGK大迫敬介の横に左ボランチの藤田譲瑠チマを置く形がデザインされていた。相手の配置とのズレを生むための変化なのだろう。メキシコ戦の後半に遠藤航がDFラインでプレーしていたように4バック化する中で、関根、長友を本来のSBの位置へ押し出せることは、選手の個性とチームの設計が矛盾していない仕掛けとなっている。ちなみに今日の空中戦の的は、小川と望月だった。
そのボール保持では左シャドーの鈴木唯人が時間とともに目立ち始める。前に出ていく後方の佐野海舟と入れ替わるように下がってはボールを受けると、左右にボールを振り分けながら藤田が下がったポジションを補完するような立ち位置で、日本のゲームメイクを牽引。8分にはフリーにした長友が送り込んだ対角のロングボールを望月が残すという町田ゼルビアを彷彿とさせる攻撃で、右シャドーの伊東純也の左足によるインスイングクロスがアメリカのゴールを襲っている。
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DFラインに加わる藤田に対してマンマークで対応してきたアメリカは、左ボランチのクリスティアン・ロルダンを前へ出す。そこで日本は地上戦よりも空中戦を選択すると、望月が空中戦で無類の強さを発揮。町田らしいシーンがさらに続いていった。14分には大迫経由でビルドアップから前進を成功させたものの、アメリカもプレッシングで対抗。見応えのある序盤戦が繰り広げられた。
15分が過ぎると、お互いの思惑がぶつかり合うような展開となる。日本のマンマークのプレッシングを前にときどきは蹴っ飛ばしながらも、プリシッチたちをフリーにできるよう個人でもチームでも働きかけるアメリカ。特にCFフォラリン・バログンは中央に居座るだけでなく、関根が守る左サイドに流れてマークの受け渡しを複雑化する。中央の荒木がプリシッチの対応に追われた理由はそこにあった。
約束事と現実が乖離していた前半の残り10分
ボール保持で日本は鈴木の移動以外ではアメリカの整理された状態を崩せそうもない雰囲気となったが、ボールの奪い合いやトランジションからの攻撃では相手より分があるのも事実。さらに前線でボールを受けたチームメイトへのサポート、ボールホルダーへ寄る動きや追い越す動きが意識づけられており、特に佐野海舟の攻撃参加は可能性を感じさせた。
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Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』 (小学館)。
