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宮代の知性、垣田の犠牲、稲垣の存在感あっての6-1大勝も…日本が期待すべきは望月?後半は要反省の香港戦を読む

2025.07.10

オール国内組で臨んでいる東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会の初戦で、香港に6-1の大勝を収めた日本代表。後半は要反省の一戦を『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者、らいかーると氏が分析する。

左サイド強襲の糸口となった宮代

 E-1サッカー選手権でメンバーこそ国内組オンリーに変化したものの、北中米W杯を見据えてシステムは[3-2-5]を継続している日本。恒例の左サイドへロングボールを送るキックオフは、もはや代表戦レビューで枕詞になりつつあるデザインだ。開始早々から香港は[3-4-3]で撤退守備の雰囲気が強かったが、さっそく最終ラインに吸収されていく右ウイングバックのユエ・ツェナムが本来立つべきエリアでボールを引き出す、左シャドーの宮代大聖の賢さと巧みさがさっそく表れることに。代わりに右ウイングが下がってブロックを組む定石に反して、そのジュニーニョは熱心ではないことを序盤から見抜いていた。

 この習性をあっさりと理解した様子の日本は、2分に右ボランチの稲垣祥が宮代と同じエリアでボールを引き出し、スルーパスで左ウイングバックの相馬勇紀の個性を解き放つ。そしてJ1でも圧巻のパフォーマンスを続けている相馬がクロスを連発できる左サイドから、早くも先制点が生まれた。左CBの古賀太陽が降りてきた宮代を尻目にボールを運んでパスを出すと、縦突破が続いていた相馬はポケットへのランニングで受け手からサポート役に切り替える宮代を囮にカットインを成功させる。そこから繰り出された浮き球を、ペナルティスポット付近に入ってきた右シャドーのジャーメイン良が胸トラップしてボレーを叩き込んだ。

 その後も相馬からセンタリングが送り続けられるが、誰がどこで合わせるかが曖昧で、もったいない場面が続いていく。さらに言えば、なぜか稲垣まで飛び込んでくるので、誰をどこに残すのかという問題も出てきていた。ただし、個々が結果を残すことに意義のある一戦なので、少しバランスを無視した攻撃も悪くはない判断だったと言える。

ジャーメイン爆発を支えた垣田の犠牲

 8分頃から香港はより[5-2-3]のような形で構え始める。3バックで守ろうとせず、さっさと5バックにしてしまう作戦だが、今度は前線3枚が戻らなくなる悪循環に陥ってしまい、またも日本は古賀→相馬→ジャーメインの流れで追加点を挙げる。ちなみにFWがニアに走り込んでファーサイドとマイナスに活路を作るデザインは森保監督の十八番で、それをCF垣田裕暉は愚直にこなし続けていた。

 古賀が目立つ展開の中、逆サイドのCB安藤智哉も負けじと香港の1列目の脇からボールを運んだり、ライン間にボールを入れたりと攻撃の起点となっていく。惜しむらくは右ウイングバックの久保藤次郎が質的優位を相手に押しつけられなかったことだろうか。とはいえ宮代の支援を受ける相馬と孤立気味の久保では前提条件が異なるため、単純に比較することは酷かもしれない。

 延々と攻撃を仕掛けていく日本。ボールを失っても稲垣が存在感を増してファウルをもためらわない寄せで相手をたじたじにさせていた。そのノーファウルを主張する仕草も癖になるのでぜひ見てほしいところだ。垣田とジャーメインを中心とするハイプレッシングに連動を続ける左ボランチの川辺駿と稲垣のハードワークは、間違いなく香港を苦しめていた。

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E-1サッカー選手権戦術日本代表香港代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』 (小学館)。

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