ユリエン・ティンバーがアーセナルにぴったりな理由。恩師ライツィハーが語る万能DFの軌跡
移籍金4000万ユーロもバーゲン価格か！？ マンチェスター・シティを下した8月6日のコミュニティシールド（1-1／PK戦4-1）では左SBとして先発し、アーセナルファン投票によるプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出。7月14日にアヤックスから加入して即、アルテタ監督のチームで実力を発揮している期待の新戦力が、オランダ代表の22歳ティンバーだ。このCBと左右SBを難なくこなすモダンなDFの魅力と成長の軌跡について、ロンドン在住のオランダ人ジャーナリスト、アルトゥル・レナール氏が、アヤックス時代に長年ティンバーを指導した元オランダ代表DF（72試合1得点）で現U-21オランダ代表監督のミハエル・ライツィハーに話を聞いた。
「ユリエンの足下は、ボールと一体化していると表現してもいいほどだ」
今夏にユリエン・ティンバーを獲得したアーセナルは、最終ラインのポジションを問わない「利便性」を超えるマルチDFを手に入れた。オランダのアヤックスでプロとしての第一歩を踏み出した22歳は、敵の侵入を防ぐ際にも、相手コートに攻め入る際にも力になる。攻守双方の局面において、チームのために最適と思われる判断を下す能力をも持ち合わせている。「集団」を重んじ、スカッドの「総合力」で勝負するアーセナルの指揮官、ミケル・アルテタが引き抜きを切望した事実がうなずける新戦力だ。
古巣では主にCBとして起用されていた。2軍（ヨング・アヤックス）時代からの恩師に当たるミハエル・ライツィハーに話を聞いてみると、「一番のポジションはCB」だとし、移籍先でも「最終的には、そこでの定位置獲得に力を入れると見ている」と言っていた。
もっとも、自らは右SBとしてアヤックス、ミラン、そしてバルセロナといった強豪でプレーした過去を持つ元オランダ代表は、ティンバーの適応能力の高さを認めてもいる。
「メインはCBで、スベン・ボトマン（現ニューカッスル）とコンビを組ませていたが、右SBで起用したこともある。駒不足で左SBを任せたこともあったな。当時から、どのポジションも難なくこなしていたよ」
アーセナルでは、遠征先のアメリカで訪れたマンチェスター・ユナイテッド戦（●0-2／7月22日）での移籍後初先発を右SBとして経験すると、続くバルセロナ戦（○5-3／7月26日）からは逆サイドでの先発が続くプレシーズンを過ごしている。いずれのポジションでも、出来は上々。だが、ライツィハーに言わせれば、ティンバーは複数ポジションをそつなくこなすだけではなく、モダンなDFに求められるすべてを兼ね備えた見どころ満載の注目株ということになる。
「守備面では、強く、速く、読みも鋭い。対人の守備は得意中の得意だと言える。だが、それだけではない。ユリエンの足下は、ボールと一体化していると表現してもいいほどだ。ファーストタッチが抜群なので、プレッシャーを受けても動じない。というか、相手はプレッシャーをかけづらい。その上、ドリブルで持って上がる度胸もある。彼の魅力は、敵からボールを奪い取って攻め上がった結果としての得点やアシストが物語る」
第1の任務である守備に関しては、アヤックスでDFの手本に恵まれた。ライツィハーの補佐役を務めていたウィンストン・ボハルデや、U-19チームのコーチだったヨン・ハイティンハという元CB両名からも、指導の一環としてノウハウを授かることができた。「DFに育てられたようなものさ（笑）。こういう状況ではこうすればいいとか、こうやって対処することもできるとか、彼とは細かいレベルでよく話をしていたな」と、ライツィハーも言っている。
「トップチームの環境で、水を得た魚のように才能をフルに発揮するようになった」
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Profile
アルトゥル レナール
欧州を股にかけ、サッカー界の人間ドラマを描く新進のオランダ人フリーライター。きっかけは18歳での渡英。2015年に改めて拠点をロンドンに移し、祖国の『フットバル・インターナショナル』誌や、『ガーディアン』紙、『フォーフォートゥー』誌といった英国メディアの他、『フランス・フットボール』誌などにも寄稿。
