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「勝つイコール守れること」を体現し堂々とJ2首位。見えてきた“黒田ゼルビア”の輪郭

2023.03.30

大目標のJ1昇格へ向け、FC町田ゼルビアが好発進を切った。6戦5勝1分無敗で首位を快走。どのようにチームを導くのかが注目され、少しずつその実体が見えてきた黒田剛監督のサッカーがどういったものなのか、ゼルビアを追い続ける郡司聡氏が明らかにする。

 時計の針は87分を指していた。

 CBの池田樹雷人がロングフィードを前線に供給し、その軌道の先にいた沼田駿也が相手DFを背負いながらもサポートに来た荒木駿太へボールを繋ぐと、荒木がダイレクトでゴール前に飛び込む黒川淳史へクロスを入れた。「一直線に走ればボールが来ると信じて走った」黒川のヘディングシュートは一度相手GKに阻まれたものの、そのこぼれ球を黒川が右足でプッシュ。殊勲の決勝点を奪った黒川は、お祭り騒ぎの町田ベンチ前へと飛び込んだ。

 苦しみながらもJ3からの昇格チームを土壇場で退けた直近のいわきFC戦。0-1で接戦を制したこの試合に“黒田ゼルビアの輪郭”が凝縮されていた。

「勝利の方程式」を象徴したいわき戦

 今季から町田を率いる黒田剛監督が標榜する根幹のチームコンセプトは「勝つイコール守れること」。“無失点で試合を進めながら、少ないチャンスをものにする”。そうした勝ちパターンを黒田監督は「勝利の方程式」と称しているが、まさに前述のいわき戦は、その象徴的な一戦だった。

 いわき戦の町田は試合のポイントだったセカンドボール争いで前半から後手に回り、大苦戦。最前線のターゲットマンであるミッチェル・デュークが豪州代表の活動に参戦し、欠場を余儀なくされため、町田は前線でなかなか起点を作れず。いわきのコンパクトな陣形をベースとした強度の高い圧力をモロに受ける格好になっていた。「いわきさんが非常にコンパクトだった分、僕ら2人に対して、相手は4人がいるような状況を作られていた」とは稲葉修土の弁である。

 劣勢な展開に陥った町田を救ったのが、池田樹雷人とカルロス・グティエレスで形成する両CBと守護神のポープ・ウィリアム。特にグティエレスはいわきのアタックを水際で食い止める大車輪の活躍を披露した。

 また、シンプルに背後を狙ってくるいわきに対して、最終ラインの背後を突かれた場面では、今季からポープが積極的にトライしているスペースケアのトレーニングが奏功。果敢な飛び出しで相手の行く手を阻んだ。……

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町田ゼルビア黒田剛

Profile

郡司 聡

編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。

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