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三笘の今後を左右するのはエストゥピニャン。ドリブラーと好相性なブライトンの戦術的構造

2023.02.22

FAカップ4回戦リバプール戦の技あり決勝弾に、プレミアリーグ第21節レスター戦での芸術的ミドルーーW杯中断明けから公式戦9試合5ゴール1アシストと、イングランドで鮮烈な印象と結果を残し始めている三笘薫。その活躍を支えているブライトンの戦術的構造を、東大ア式蹴球部の岡本康太郎テクニカルスタッフが分析する。

 中断明けのプレミアリーグ8試合で4勝2分2敗と好調を維持するブライトン。第24節時点で2試合未消化ながら欧州カップ出場圏内の7位という躍進の中心にいるのが、三笘薫である。卓越した加速とドリブルスキルを武器にカタールW杯でも日本代表の戦術兵器として機能したウインガーは、いよいよクラブでもその本領を発揮しつつある。智将ロベルト・デ・ゼルビに第22節ボーンマス戦後のインタビューで「三笘の母に感謝しなければ」とまで言わしめたその才能と実力が、イングランドで旋風を巻き起こすブライトンの綿密なチーム戦術の中で、どのように最大化され生かされているのか考察していく。

三笘を出口とするビルドアップのメカニズム

 三笘が真価を発揮している理由には、もちろんブライトンの[3-4-2-1]から[4-2-3-1]への基本布陣変更によって左サイドハーフというより適したポジションが生まれた点も挙げられるが、それ以上に特筆すべきはチームにおけるメインコンセプト自体の洗練である。前回の記事でも述べた通り、ブライトンのボール保持の狙いは「相手を引きつけてスペースを残した状態でゴールへと向かうこと」にあるが、このコンセプト自体が三笘のような加速で相手を抜き去るタイプのドリブラーとは非常に相性が良い。スペースがあり前向きで仕掛けられる状態そのものが最も大事な突破のリソースになるからだ。

 それが非常によく現れていたシーンが、直近の第24節フルアム戦の1分である。右CBのアダム・ウェブスターが相手の1トップを引きつけて左CBのルイス・ダンクに横パス。そこからボランチのパスカル・グロス(三人目)を経由してボールは逆のウェブスターへ。

 そして今度は相手のインサイドハーフがグロスを切りながらウェブスターへプレスをかけに飛び出したの見ると、浮いたもう一人のボランチ、モイセス・カイセド(三人目)を使って背中のグロスへ1タッチでフリックする。グロスが相手中盤ラインの奥で構えるトップ下のアレクシス・マカリスターに縦パスを刺すと一気に加速し、シンプルに左の大外へ展開。ボールの先で待つ三笘は相手SBと1対1で仕掛けられた。

 まさに相手の背中にポジションを取るフリーの選手を効果的に使いながら敵を引きつけてその奥を取りに行くチーム全体の前進メカニズムが、三笘にスペースと時間を与えた非常にわかりやすい例である。特に三笘のような選手は間延びした展開に滅法強く、縦に速くスピードアップする攻撃やカウンターアタックの中でもっともその真価を発揮することがここからもわかるだろう。

 プレスをかけている相手選手の背中に位置取る選手に対して脇や片方のボランチ、降りてくるトップ下(三人目)を経由してボールを届けることで、相手のプレッシャーを回避しつつ前向きの選手を形成し前進する構造。これが今のブライトンでは非常に高いレベルで自動化されており、W杯中断期間後はその浸透度が如実に現れている。それに伴い三笘自身のタスクも非常にわかりやすく整理され、ビルドアップ部隊が作り出したスペースを使って決定的なゴールチャンスを生み出すアタッカーとしての役割が読み取れる。

 また、第19節エバートン戦のスーパーゴールに繋がったカイセドのロングボールに代表されるように、アイソレーションした三笘へサイドチェンジのパスで一気に展開する意識もチーム全体としてかなり強い。逆サイドのウイングを務めるソリー・マーチも左足での対角へのロングキックを得意としており、相手のSBから浮いて適切なタイミングでパスを受けて内側に持ち込み三笘へと展開、そこから1対1を仕掛けさせるシーンも非常に多い。

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岡本 康太郎

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